SNSを中心に、巷で大考察ブームを巻き起こしたドラマ『良いこと悪いこと』(日テレ) 最終回の放送が終わった。

この物語は過去にいじめをしていた加害者の子供達が20年後、その報いで次々と殺害されていく……。という導入だ。
私たちは3人組で活動している所謂“ドラマ考察YouTuber”なので、この連続殺人の真犯人の正体を突き止めることに躍起になっていた。
この連載記事の読者であれば、私の考察の結果が散々なものであることは言わずもがなであろう。
私はグループの意思に反して、主人公:キング(間宮祥太朗)の仲間であったターボー(森本慎太郎)真犯人説を推していたからだ。
ターボーが真犯人だった場合、犯行が無理な箇所は多々あるがそこには共犯者がいて、視聴者が考え付かぬような“あっと驚く方法”で犯行を行っているのではないか……という半ば諦めにも似た、考察というよりも「主人公に一番身近な人物が犯人だったら面白い!」という願望に近いものであった。
白状しよう。私は確実に考察疲れをしていた。
考えても考えても全てのピースが埋まらない考察に疲弊し、あとは結果を待つのみ……。というマインドに途中からなってしまった。
裏を返せばそれほど真剣に向き合っていた……。ということにしておいて欲しい。
そして最終回で明かされた全ての謎。
実に見事な伏線回収と、世間を動かし得る強いメッセージに圧倒された。
考察ドラマとしてのクオリティを維持しつつ視聴者を引きつけ、最終回では事件の細かい種明かしはほどほどに(説明が必要な箇所はしっかりと描写があった)、いじめに対する警鐘を鳴らすことに全振りをしていた。
あの真犯人達から発せられた言葉に、テレビの前では誰もが息を呑んだであろう。
考察ドラマの枠を保った社会派ドラマ
小学5年生の頃、瀬戸紫苑という同じクラスの女の子をいじめていたキング(間宮祥太朗)ら6人組。
それから20年あまりが経ったある日、キングとの邂逅によりそのトラウマが蘇った瀬戸紫苑はピアノが弾けなくなってしまい自ら命を絶った。
その瀬戸紫苑の婚約者である刑事:宇都見が一連の連続殺人の実行犯であることが第9話で明かされた。
すべてが終わったかのように思えたが、最終回予告では「真犯人だ~れだ?」の文言。
最後まで考察を途切れさせることのない見事な作りだ。
そして迎えた最終回。
宇都見の共犯者……劇中では“仲間”と表現していたが、その仲間はレトロスナック『イマクニ』の店主:今國(戸塚純貴)と週刊アポロの記者:東雲(深川麻衣)だったのだ。

いわば真犯人は宇都見、今國、東雲の3人だったと言える。
いじめ等で不登校になった子供達が通う「タクト学園」で瀬戸紫苑と出会った今國と東雲。彼らの友人である瀬戸紫苑の命がキングらに奪われたことの復讐で、一連の連続殺人を計画したという。
しかし6人の殺害が最終目的ではなく、東雲から園子(新木優子)に告げられた目的は、“いじめそのものを殺す”ということ。
瀬戸紫苑へいじめをしていた6人のうち、キングを除く5人を殺害した後に、キングがその復讐で今國を殺害することで、人々の記憶に残る事件が完成する。
キングの夢、“ヒーローになること”をも準えている完璧なシナリオだ。
その後、いじめが法律で犯罪として裁かれるようになるまで記事を書き続けるという東雲。まさに“いじめそのものを殺す”の体現そのものである。
その志は賞賛に値する。いじめがなくなって困る人などこの世には一人もいないからだ。
だからと言ってそのプロセスで人殺しをしていい理由にはならないし、全く罪のないキングの娘:花音(宮崎莉里沙)は東雲の記事が原因でいじめを受けてしまっている。
「私の良いことは別の誰かにとっての悪いこと」という園子の発言の通り、東雲らは良いことと思ってやっていたが、その裏にある悪いことへの配慮が一切ない。
自身の良いことと思う正義を持つことは誰にも咎められないが、その正義を振りかざしてしまうとそこには途端に負の側面……悪いことが顔を出す。
しかし、劇中の言葉の受け売りではあるが結局はその選択が良いことなのか悪いことなのかの判断は自分次第であるということ。
その自身の選択に対して責任を取らなくてはいけないのだ。
誰のことも否定はしていないし、人間誰しも完璧ではないからこその非常に前向きなメッセージを受け取った。
そして実際に東雲と今國は、その責任を果たすべく警察へ自首しに行ったのだろう。
一つの例としていじめという問題提起があり、その問題も大いに考えさせられたが、このドラマが伝えたかったことは決して「いじめはダメ!」ということだけではない。
沢山の選択に伴い、意図せずに流してしまった人の血と涙に対する責任と向き合っていくことの必要性こそ、真のメッセージではないだろうか。
「いじめはダメ!」ということを前面に伝えたかったわけではない……。と言ったが、もちろんその側面も強く含んでいた。
学校の中で“今”起こっているいじめを問題提起するドラマは今まで数多くあれど、過去に起きたいじめにここまで向き合うドラマは珍しかった。
このドラマを観た大人が過去の自分と改めて向き合い、何か思い当たることがある人も少なくなかったのではないだろうか。
そんな大人達が当時の十字架を再び背負いながら生きていくきっかけとなることを願う。
それは決してマイナスな意味ではなく、その責任と向き合うということ。
そしてその背中を見た次の世代が、同じ過ちを犯さないように、十字架を背負わずに生きていけますように……。
目の前に絶望する日々の中にも、必ず光はある。今はなくても、変わろうとし続ければその光は顔を出してくれる。
このドラマは、考察に頭を悩ませる日々と共にそんな希望を私にくれた。
••┈┈┈┈•• ドラマ情報 ••┈┈┈┈••
日本テレビ『良いこと悪いこと』( 毎週土曜夜9時~)
出演:間宮祥太朗、新木優子、森本慎太郎(SixTONES)、深川麻衣、戸塚純貴、剛力彩芽、木村昴、藤間爽子、工藤阿須加、松井玲奈、稲葉友、森優作、水川かたまり(空気階段)、徳永えり、木津つばさ、玉田志織、秋谷郁甫、田中美久、宮崎莉里沙、赤間麻里子
チーフプロデューサー: 道坂忠久
プロデューサー:鈴木将大、妙円園洋輝
脚本:ガクカワサキ
演出:狩山俊輔、滝本憲吾、長野晋也
音楽: Jun Futamata
制作協力:ダブ
制作著作:日本テレビ
主題歌:ポルノグラフィティ『アゲハ蝶』(Sony Music Labels)
著者:ケメ・ロジェ
イメージイラスト:サク
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