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時をかける情緒 まぁいいさ

2026.02.06 公開 ポスト

珍事な夜

阿川佐和子さんの結婚祝いの夜、大竹しのぶさんが驚いたわけは?清水ミチコ

清水ミチコさんの「朝日新聞」連載エッセイ「まぁいいさ」(金曜日夕刊・月1回)をまとめた文庫本『時をかける情緒 まぁいいさ』が発売になりました。平成から令和へ、自由自在にかけめぐる清水さんの情緒の味わいを、少しだけお裾分けします。

* * *

平野レミさん、南伸坊さん、阿川佐和子さん、大竹しのぶさん、三谷幸喜さんとごはんを食べました。年に数回集まるこのメンバーは、気心も知れててとても楽。今回は阿川佐和子さんの結婚祝いも兼ねてました。

いつも優しい阿川さんは皆のアイドル。この日もプレゼントを受け取る側のはずなのに、さりげなく自著を皆にプレゼント。それもサラッと軽~く手渡します。

ところが、大竹しのぶさんが本をじっと見て、驚いた顔で「え、本気?」と、阿川さんに言いました。「本気だよ? なんで~?」と、阿川さん。「え~っ! ひどおおい。私、この本いらないよ」「え? なんで? なんで?」と慌てる阿川さん。「なんで、って! 阿川さん、わかんないのお?」という会話に、(どうしちゃったんだ)と、全員シーン。そしてついにしのぶさんは一人で笑いながらこう続けました。「だって、この本の帯書いたの、私なんだけど!」

爆笑。帯を依頼した御本人に、うっかり渡しちゃったという。そりゃいらんわな、でした。すぐさま平身低頭で謝罪する阿川さん。初めて見た、土下座する新婦の図。

しかし、その時です。貸切だったその店に、いきなり男性が入ってきて、「大竹しのぶさんは!」と叫びました。「え、何」と、ぽかんと立ち上がるしのぶさん。(すわ、ストーカーか!?)でした。「あの、 これ!」としのぶさんに鍵のような物を渡すその男性。ドラマのプロポーズみたいな構図ですが、しのぶさんはそれをじっと見て、「キャーッ!」と絶叫。

聞けばその男性はハイヤーの運転手さんで、この店で降りたしのぶさんの忘れ物を

わざわざ届けてくれたのでした。今度はしのぶさんが平身低頭、謝罪の土下座。なんと珍事な夜でしょう。

さっと去っていくクールな運転手さんに、私は(お礼を! なんでもいいから!)とあせり、(なんでもいいお礼の品)をバッとつかみ、外まで追いかけて手渡しました。それは私から全員に渡すつもりで持ってきた「清水ミチコタオル」。

ハイヤーを見送ったしのぶさんとともに、2人で再び店にもどると、三谷さんが叫びました。「あれは僕がもらったタオル!」。今度は私が土下座を……。

 

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時をかける情緒 まぁいいさ

カンジ悪さが褒められた「ドクターX」出演、黒柳徹子さんにおフルの洋服をプレゼント、詐欺かと疑った伊丹十三賞受賞の電話、武道館ライブで達成感が得られない謎、卒業証書チラ見せ伊藤市長からの学び、60代で初婚の親友の結婚式、人生の残り時間を計算して思うこと……。平成から令和へ、自由自在に軽やかにかけめぐる情緒の味わい。

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清水ミチコ

岐阜県高山市出身。1986年渋谷ジァンジァンにて初ライブ。1987年『笑っていいとも!』レギュラーとして全国区デビュー、同年12月発売『幸せの骨頂』でCDデビュー。以後、独特のモノマネと上質な音楽パロディで注目され、テレビ、ラジオ、映画、エッセイ、CD制作等、幅広い分野で活躍中。著書に『主婦と演芸』『「芸」と「能」』(共に幻冬舎)、『顔マネ辞典』(宝島社)、CDに『趣味の演芸』(ソニーミュージック)、DVDに『私という他人』(ソニーミュージック)などがある。

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