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先生、俺またバグってます。

2026.01.07 公開 ポスト

年末年始と双極性障害GASHIMA (WHITE JAM)

ラッパー・GASHIMAさんによる人気連載『先生、俺またバグってます。』。
今回は、毎年12月、クリスマスと共にやってくる「鬱」のお話について語っていただきました。
16歳の頃から繰り返される「気分の波」を、GASHIMAさんはどう乗り越えてきたのか。ぜひご一読ください。

*   *   *

明けましておめでとうございます。
2026年、1発目のコラムということなので、
新年らしく、明るいことを書きたい。

 

しかし、幻冬舎さんの
年末年始の営業日の関係もあり、
「1月の原稿は年末までに
提出してください」
と言われてしまった。

なので、2025年の
めちゃくちゃ年の瀬に
新年1発目みたいな気持ちで
コラムと書くという
無理やりなギアの入れ方をして
この原稿を書いている。

とりあえず、
これを書いている
12月末の時点で、
今年もギリギリ
年末を乗り切ったことに
胸を撫で下ろしている。

思えば中学生の頃から、
12月には良い思い出がない。
初めて出来た彼女にフラれたのも
クリスマス直前だったし、
それ以降の恋愛も
ほとんどが12月に破局を迎えている。

クリスマスや新年を
一緒に迎えてしまうと
別れづらくなってしまう。
だから、12月に破局するというのは
もしかしたら世の中的にも
あるあるなのかも知れない。

そんな恋愛事情を置いといても
俺にとって12月はいつもキツイ季節だ。

今、振り返れば16歳ぐらいの時には
双極症のうつを発症していた。
毎日、どれだけ寝ても眠たいし、
気分が落ち込む。
いつも体調が悪くて、
年末提出の課題が間に合わず、
年明けに提出していた記憶がある。

奇しくも、その時期が失恋と
重なっているから

「失恋したぐらいで
どんだけ喰らってんだよ。」

と、当の本人の俺ですら
自分をただのメンヘラ扱いしていた。

毎年、夏になると異様に元気になって
冬が来ると無口になり塞ぎ込む。

そんな俺を見ていて、
俺自身も家族も
「思春期特有の不安定さ」だとしか
思っていなかったように思う。
ましてや、精神科にかかるほどのことだとは
1ミリも思わずに日々を過ごしていた。

また季節に合わせて、
気分が変動するのも
俺の双極症の
ややこしかったところで

「冬に落ち込むなんて
みんな、そうなんじゃね?」

という一言で片付いてしまっていた。

俺自身、異様な眠気と
落ち込みを抱えながらも

「きっと、みんな同じ。
それでも頑張っているに違いない。」

と、この病状を特別なことだと
思ってはいなかった。
でも、実際には生活に支障が
出ていたし、気の持ちようでは
どうにもならない症状を抱えていた。

10代の頃からそんな調子だったので
自分の中でクリスマスとうつ状態は
完全に結びついてしまっている。

クリスマスソングを聴くと
軽くバッドに入ってしまうぐらいには
クリスマスが苦手だ。

今回の12月も例外ではなく、
過眠を発症しているし、
決まっている最低限の仕事を
こなすことしか出来なかった。

でも、12月は俺にとっては
こういうものなのだ。

1月に入ったからって
急に体調がよくなるわけではない。
でも、子供の頃から毎年12月が
鬼門な俺にとっては
無事に1月を迎えられそうなことは
この上ない安心だ。

双極性障害と診断される前。
毎年、クリスマスと共にやってくる
うつは得体の知れない
恐怖でしかなかった。

今でも12月はしんどいし、
先のことなんて考えられないほど
絶望的な気分になる。

だけど、そのうつには終わりがあること。
治療法のある病気だということを
知れたことが何よりの救いだ。

「精神科なんて行ったら、
みんな何かしらの病名をつけられる。」

「薬漬けになって、
余計悪くなるだけだよ。」

未だにそんな言葉をよく耳にする。

現に診断される前の
俺も同じことを
思っていたから、
彼らの考えも否定しない。

ただ、同じ双極症に
悩まされる人生でも
取り扱い説明書が
あるのとないのとでは全く違う。

「双極性障害ですね。」
と診断されてから
初めて迎えたうつ期。

俺はベッドの中で
「人生、詰んだな。」
と思っていた。

だけど、詰んでからの人生の方が
少しだけ生きやすいし、
楽しいかも知れない。

相変わらず12月は
憂鬱な季節であることには
変わりない。
だけど、診断を経て、
俺はこの季節の過ごし方を
少しだけ身につけることが出来た。

そして、今年の冬に
学んだことはもうひとつ。

年末に無理やり書く
新年の記事はどうやっても
新年っぽくはならない。

年明け早々、メンヘラ全開の
記事となってしまいましたが、
みなさま、今年も1年、
「俺バグ」を宜しくお願いします。

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先生、俺またバグってます。

3人組シンガーソングライター・グループ WHITE JAMのラッパーとして活躍するGASHIMA。

そんな彼はある日、「双極性障害」であると診断される。

思い返してみれば、昔から自分はちょっとバグってた。

日本とアメリカで経験した過去、生い立ちと音楽、メンタルヘルスの狭間で感じた「生きづらさ」をパーソナルかつリアルに綴るセルフドキュメンタリー連載。

目まぐるしく変わる環境に対するやり場のない怒り。

振り返ってみれば「若気の至り」だと思っていた破壊的衝動。

あれも、これも、もしかしたら躁状態だったのかも?

 

“ただの勢い”の裏にはちゃんと病理があった。

そう思えると、あの時の俺も少しだけ愛せるようになった。

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GASHIMA (WHITE JAM)

兵庫県生まれ。一橋大学卒。

中学時代をロサンゼルス、高校時代をニューヨークで過ごしたバイリンガル・ラッパー。

2014年、3人組シンガーソングライター・グループ、WHITE JAM のメンバーとしてメジャーデビュー。

日本語と英語を巧みに使いこなすリリックに定評のある作詞家として、

グループだけでなく他アーティストへの作詞提供も多数。

 

海外での孤立体験、日本の音楽業界での挫折、双極性障害の診断など、

複雑なバックグラウンドを持ち、近年はそうした内面を率直に発信。

精神疾患に対する偏見や「生きづらさ」への理解を広げる活動にも力を入れている。

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