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  4. 円高と円安、どちらがいいか

あまりにざっくりした問いの立て方をすると、現状把握や未来予測を見誤ってしまうことは様々な場面でありそうですが、たとえば「円高がいいのか、円安がいいのか」という議論もその一つ。考えるときは編み目をもっと細かくする必要があるようです。『Xデイ到来 資産はこう守れ』(藤巻健史著/幻冬舎)から一部を抜粋してお届けします。

*   *   *

今、マスコミはしきりに「円高はエエンだか? 悪いんだか?」と議論しています。黒田日銀総裁は「円安は日本経済にとってよい」と主張し、世論は「円安が進行すれば大変になるから、円安は悪い」と対立しています。

しかし、為替は経済の自動安定装置であり、本来変動すべきものなのです。したがって、自国通貨安がいいか悪いかは、そのときのその国の経済状況によって異なります。

景気が悪いと通貨が弱くなり、国際競争力を高めます。その結果、景気がよくなり通貨高に戻っていく。一方、景気が強すぎる(=インフレになる)と、通貨高になりますが、それが国際競争力を弱め、景気を冷やしインフレを抑制させるのです。

(写真:iStock.com/takasuu)

よく日本の政治家は「為替は安定したほうがいい」と言いますが、違います。為替は国力に応じて変動すべきなのです。個別企業は先物、オプション等を使ってリスクヘッジし、衝撃を減らせばいいのです。日本は近年、国力が弱っていたのに通貨が強いままだったので国際競争力を回復できず、GDPが伸びずに国力を落としてしまったと思っています。

小学生にたとえれば、学力が1程度なのに通信簿に5(最上位)の評価をもらっていたようなもので、学力向上の努力が払われなかったのです。

世界を見ても、国力に比べて通貨が強すぎる南欧、日本の経済は低迷し、逆に国力に比べ通貨の弱かったドイツや中国が大きく発展しました。

したがって、この30年間、日本経済再生の処方箋として、私は「穏やかな円安」を主張していたのです。「実力と同じレベルのときに円安を誘導するのは不可能ですが、実力以上に強すぎる円を国力程度に戻すのには手段がある」と主張していました。

方法は、(1)ドル預金の為替差益の非課税化等の税制改革(日本人は非課税大好きなので)、(2)日本国債のドル建て発行(少し難しいので昔の拙著を参照してください)、(3)マイナス金利政策等です。

私の提唱するマイナス金利政策は、黒田日銀のマイナス金利政策とは百八十度異なります。詳しくは終章で述べています。

 

今の日本で円安が進むのは危険

ただし、今まで述べてきたことは、平時の話です。私は『一ドル二〇〇円で日本経済の夜は明ける』(講談社)という本を2002年1月に出しました。「1ドル=200円になれば、日本経済は復活するぞ」という内容です。そのときは財政状況がギリギリ、まだ平時と言える状態だったので、そう書きました。「(財政が悪化しているので)薄氷の上を歩くような細い道ではあるが」と断っています。

しかし日本は、その後もお金のばらまきを継続し、財政状態を極端に悪化させてしまいました。その危機先送りのために財政ファイナンスを始めてしまったので、今では日銀が危機的な状態に陥っています。

この状態で円安が起きると物価が上昇しますが、日銀にそれを抑える手段はなく、インフレが止まることなく加速していきます。また、日銀が利上げすれば、日銀の債務超過で、即ハイパーインフレです。政策的な大チョンボをやってしまった後なので、強力な経済の安定装置である為替が働かなくなってしまったのです。だからこそ今、日本で円安が進むと危険だと私は言っているのです。

円安が日本経済を復活させる唯一の処方箋だった時代を、日本は無為に過ごしてしまったと思っています。それもこれも、ばらまき、放漫財政が元凶だと思います。

世界はこれから通貨高戦争

前述したように、景気をよくしたいときは自国通貨“安”が望ましいのです。ですから、(自国通貨安を志向する)通貨“安”戦争が起きました。日本が円安を志向すると「近隣窮乏化政策だ」と近隣から非難されたのです。円安になるとアジア各国の通貨が上昇し、アジア経済が停滞してしまうとのクレームでした。

しかし世界中でインフレ懸念が出てくると、今ではどの国も通貨高を志向します。まさに通貨“高”戦争が起きるわけです。自国通貨高はインフレを抑える最強の武器だからです。その中で唯一、黒田日銀総裁だけが「自国通貨安がいい」と言っているのですから、他国と利害が一致します。通貨戦争どころか、国際協調もいいところです。その結果、ものすごい円安が予想されるのです。

関連書籍

藤巻健史『Xデイ到来 資産はこう守れ!』

インフレになっても、金利を上げられない日銀。 円安、物価上昇はこれからが本番。 ※Xデイ=日本経済が大混乱に陥る日 今、世界では長く続いていたデフレの時代が終わり、インフレ懸念が生じている。インフレが進むと国民の生活が苦しくなるため、各国の中郷銀行は金利を引き上げて、インフレを抑えようとしている。 ところが、世界一の借金大国である日本は、金利を上げると、保有国債の金利も上がって評価損が出てしまうため、金利を上げることができない。そのため日銀の黒田総裁は、3月下旬から10年国債の0.25%での「指し値オペ」を始める始末。 アメリカは徐々に金利を上げていくから、日米の金利差は開く一方で、ドル高円安も止まらなくなる可能性も。 著者は、以前から警告してきたXデイ(日本経済が大混乱の陥る日)が近いと予測。 この先、日本経済はどのように崩壊しているのか? 個人はXデイから自分の財産をどのように守ればいいのか? 今こそ知っておくべき知識・情報が詰まった、日本国民必読の書。

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Xデイ到来 資産はこう守れ!

インフレになっても、金利を上げられない日銀。
円安、物価上昇はこれからが本番。

※Xデイ=日本経済が大混乱に陥る日

金利をあげてインフレを抑えようとしている他国に比べ、日本は、保有国債の金利も上がって評価損が出てしまうため、金利を上げることができない。日米の金利差は開く一方。ドル高円安も止まらなくなる可能性も。個人はXデイから自分の財産をどのように守ればいいのか? 日本国民必読の書。

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藤巻健史

1950年東京都生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。1980年、社費留学で米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。帰国後、三井信託銀行ロンドン支店勤務を経て、1985年に米銀のモルガン銀行に転職。同行で資金為替部長、東京支店長兼在日代表などを歴任し、東京市場屈指のディーラーとして世界に名を轟かせ、JPモルガンの会長から「伝説のディーラー」と称された。2000年にモルガン銀行を退職後、世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務めたほか、一橋大学経済学部で13年間、早稲田大学大学院商学研究科で6年間、半年の講座を受け持つ。2013年から2019年までは参議院議員を務めた。2020年に旭日中綬章を受章。日本金融学会所属。現在(株)フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。

 

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