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Xデイ到来 資産はこう守れ!

2022.12.19 公開 ツイート

今の米国はバブルの日本にそっくり 伝説のトレーダーが鳴らす警鐘 藤巻健史

収まる気配を見せない、円安と物価上昇。「伝説のトレーダー」の異名を持つ経済評論家で、参議院議員もつとめていた藤巻健史さんは「これからが本番」と警鐘を鳴らします。やがて来るかもしれない「日本経済が大混乱に陥る日」に、私たちはどう備えればよいのか? 近刊『Xデイ到来 資産はこう守れ!』より、一部を抜粋します。

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米国市場は「クレージー」な状態

現在の米国は、バブル経済時の日本ととても似ています。実際、そのような状態であることを的確に表す記事が2022年3月24日の日経新聞に出ていました。

(写真:iStock.com/Ca-ssis)

「FRBのウォラー理事は24日、住宅市場について講演し、『ここワシントンで家を買おうとしているのでわかるが、市場はクレージーだ』と語った」そうなのです。私がここ米国でアパートの賃料値上げ率に、まいったのと同じです。ウォラー理事がご自身で家を買おうとしているからこそ、強く理解できるのだと思います。

ウォラー理事が感じたように、米国の資産価格はバブルと言わないまでも、かなり高騰しています。日本のバブル経済時と同じです。不動産の値上がりが激しく、株価は史上最高値圏です。日経平均も1989年12月の3万8915円が史上最高値だったことは、すでに述べた通りです。

史上最高値とは、一般論で言えば、株で皆が儲かっているということです。もちろん例外はあるでしょうが。

米国は日本よりも株に投資することが社会に浸透していて、多くの米国民が株を保有しています。ですから「資産効果」は、当時の日本以上に国民に影響します。資産効果とは、株や土地を持っている人が自分が金持ちになったつもりになり、消費を増やすことです。

 

当時の日本では「シーマ現象」という言葉がはやっていました。当時の日産自動車の最高級車シーマがバカ売れしたのです。

そのバカ売れを投資家が見て、日産の株をさらに買い増す。車がバカ売れするので日産の社員の給料・ボーナスは上がるし、日産の株を持っていた投資家は儲かった気分になり、さらに消費を増やす、という好循環です。これが日本のバブル経済だったわけですが、その現象が、まさに今米国で起きていると思うのです。

この資産効果の威力のすごさに、FRBは目を向けていないように思います。

 

ただバブル経済時の日本と、今の米国とでは大きく違っている点があります。

それは為替です。当時、日本では強烈な円高が進んでいて資産インフレというインフレ要因を、円高というデフレ要因が相殺していたと前述しました。

しかし、現在の米国で、ドルは急騰しておらず、安定しているのです。要はデフレ要因を相殺するものが存在しないのです。ドル高というデフレ要因がない以上、資産インフレが消費者物価指数の急騰を強烈に促すことになるのではないかと私は思っています。

FRBは何を間違えたのか?

現時点で、FRBは間違いだったと認めたのですが、最初のうちは「インフレは一時的だ」と主張していました。インフレの主因を供給制約のせいだと分析していたからです。「いろいろなところで、供給に目詰まりが起きている。その供給の目詰まりが取り除かれれば、インフレは終わる」と考えていたのです。

(写真:iStock.com/Bet_Noire)

また人によっては、今ロシアがウクライナに侵攻しているからインフレになったと思い込んでいるようです。ロシアがウクライナに侵攻し、それによって原油価格が上がり、穀物の値段が上がり、穀物を餌にする家畜の肉の値段が上がったという理屈です。

また元米財務長官にして元ハーバード大学学長のローレンス・サマーズ氏はアレックス・ドマシュ氏(ハーバード大学)との共著論文の中で、「我々の研究では、もし今後、労働需要が大きく減じることがなければ、かなりの人手不足状態が続くという結論になる。このことは今後、労働市場からのインフレ圧力を無視してはならないことを意味する」(筆者訳)と述べています。

アトランタ連邦準備銀行が算出した賃金上昇率は、2022年2月には6.5%と1997年以降で最高になったそうです。その一方、消費者物価指数の上昇率は7.9%と40年ぶりの高水準となり、賃上げがインフレに追いついていないようです。

 

確かにこれらの要因の一つひとつが今のインフレの構成要因ではありますが、それ以上に、すでに述べた「通貨刷りすぎインフレ」が、今のインフレの最大の理由だという認識が重要だと思います。

日経新聞(2022年3月17日)の夕刊でも「商品価格の高騰がインフレを招いているわけではなく、状況をより悪くしているだけにすぎない」とSGHのマクロ・アドバイザーズ・チーフエコノミストのティム・デュイ氏が言っていますが、まさにその通りなのです。

 

この理解は重要です。この理解がないと、ロシアがウクライナから撤退したらインフレは収束するとか、コロナ禍が収束すればインフレは収束するなどと誤解してしまうからです。

当時の日本のバブルも、今の米国の不動産と株の価格の上昇も、「通貨の刷りすぎ」でお金がジャブジャブになったがゆえに起きているのです。過剰にばらまいたお金を回収しないことには、このインフレは収まらないでしょう。

その意味では、今回のインフレ退治はかなり大変なことになるだろうと思っています。

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続きは書籍『Xデイ到来 資産はこう守れ!』をご覧ください。

関連書籍

藤巻健史『Xデイ到来 資産はこう守れ!』

インフレになっても、金利を上げられない日銀。 円安、物価上昇はこれからが本番。 ※Xデイ=日本経済が大混乱に陥る日 今、世界では長く続いていたデフレの時代が終わり、インフレ懸念が生じている。インフレが進むと国民の生活が苦しくなるため、各国の中郷銀行は金利を引き上げて、インフレを抑えようとしている。 ところが、世界一の借金大国である日本は、金利を上げると、保有国債の金利も上がって評価損が出てしまうため、金利を上げることができない。そのため日銀の黒田総裁は、3月下旬から10年国債の0.25%での「指し値オペ」を始める始末。 アメリカは徐々に金利を上げていくから、日米の金利差は開く一方で、ドル高円安も止まらなくなる可能性も。 著者は、以前から警告してきたXデイ(日本経済が大混乱の陥る日)が近いと予測。 この先、日本経済はどのように崩壊しているのか? 個人はXデイから自分の財産をどのように守ればいいのか? 今こそ知っておくべき知識・情報が詰まった、日本国民必読の書。

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Xデイ到来 資産はこう守れ!

収まる気配を見せない、円安と物価上昇。「伝説のトレーダー」の異名を持つ経済評論家で、参議院議員もつとめていた藤巻健史さんは「これからが本番」と警鐘を鳴らします。やがて来るかもしれない「日本経済が大混乱に陥る日」に、私たちはどう備えればよいのか? 近刊『Xデイ到来 資産はこう守れ!』より、一部を抜粋します。

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藤巻健史

1950年東京都生まれ。一橋大学商学部を卒業後、三井信託銀行に入行。1980年、社費留学で米国ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBAを取得。帰国後、三井信託銀行ロンドン支店勤務を経て、1985年に米銀のモルガン銀行に転職。同行で資金為替部長、東京支店長兼在日代表などを歴任し、東京市場屈指のディーラーとして世界に名を轟かせ、JPモルガンの会長から「伝説のディーラー」と称された。
2000年にモルガン銀行を退職後、世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーを務めたほか、一橋大学経済学部で13年間、早稲田大学大学院商学研究科で6年間、半年の講座を受け持つ。2013年から2019年までは参議院議員を務めた。2020年に旭日中綬章を受章。日本金融学会所属。現在、株式会社フジマキ・ジャパン代表取締役。東洋学園大学理事。

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