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時をかける老女

2022.07.28 更新 ツイート

#33

介護疲れかアウシュヴィッツ映画の影響か、ダウンした 中川右介

ここのところ仕事が忙しい。母が自分でつけていた日記を見つけだし、「覚えてない、おかしくなった」と騒ぎ出したが、体もだるく、相手にできない。仕事疲れか、介護疲れか、試写で観たアウシュヴィッツの映画の影響か、熱も出た。

(写真:iStock.com/Jorm Sangsorn)

 

2021年6月12日 土曜日

<介護225日>

デイサービスから帰り、夕食まで30分ほど、自分の部屋にいたが、嬉しそうにやって来る。

「知ってる? 今年のノーベル賞を、Nちゃんがもらうのよ」

Nは兄(私の伯父)で、一高から東大へ行った秀才。若い頃は将来ノーベル賞をもらうのではと期待されていたらしい。それを母は信じている。しかし伯父は何を間違ったか日本共産党に入り、家族とは絶縁した。D大学の教授となり、日共系科学者団体のトップにはなったが、ノーベル賞は取れない。

なんで突然、そんなことを言いだしたのか。思い出と妄想が混在。謎である。

入浴して、19時就寝。

 

6月13日 日曜日

<介護226日>

日曜日。デイサービスは休み。母はほぼ自分の部屋にいた。

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時をかける老女

91歳の母親と、33年ぶりに一つ屋根の下で暮らすことになった。この日記は、介護殺人予防のために書き始めたものである。

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中川右介

一九六〇年東京都生まれ。編集者・作家。早稲田大学第二文学部卒業。出版社勤務の後、アルファベータを設立し、音楽家や文学者の評伝や写真集を編集・出版(二〇一四年まで)。クラシック音楽、歌舞伎、映画、歌謡曲、マンガ、政治、経済の分野で、主に人物の評伝を執筆。膨大な資料から埋もれていた史実を掘り起こし、データと物語を融合させるスタイルで人気を博している。『プロ野球「経営」全史』(日本実業出版社)、『歌舞伎 家と血と藝』(講談社現代新書)、『国家と音楽家』(集英社文庫)、『悪の出世学』(幻冬舎新書)など著書多数。

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