木村拓哉の刑事ドラマに認知症を抱える家族が出てきて、つい粗探しをしてしまった。｜時をかける老女｜中川右介

6月1日木曜日

＜介護946日＞

事件なく、デイサービスへ。

早稲田大学の講座。版元と議員会館へ。

帰ると、すぐに母が戻る。夕食。「すごく疲れたから、まだ明るいけど寝ます」と、18時就寝。

6月2日金曜日ぐうたら感謝の日

＜介護947日＞

事件なく、デイサービスへ。夕方は雨のためか、帰りが遅れる。

クルマの中で雨ガッパを着せて、2人で支え、傘をさしながら連れてきてくれるので、時間がかかる。

近くの川の水位が氾濫発生した危険レベルに達したらしくサイレンが鳴るが、母には聞こえない。大雨の認識がない。高齢者が災害時に危険な所にいたままで被害に遭うのは動けない以前に、危険を察知できないからだと、よく分かる。

夕食。入浴はデイサービスでしたので、なし。18時就寝。

23時現在、一度も起きてこない。

6月3日土曜日

＜介護948日＞

夜中、かなり増水し、警報のサイレン。無事だった。

デイサービスのない日。事件なく、終わる。

ドラえもん見ながら夕食。18時に「寝る」と言ったが、20時くらいまで、何度も起きてくる。

6月4日日曜日

＜介護949日＞

日曜日。事件なし。

夕食後、入浴させる。

6月5日月曜日

＜介護950日＞

昼食後、特養へ。ショートステイ。

歌舞伎座へ。夜の部を見て、東京駅へ。21時36分発で、仙台へ。

阪神の甲子園の試合が延長になり、終わらない。23時前に仙台に着いて、12回引き分け。

6月6日火曜日

＜介護951日＞

母はショートステイ。

仙台。昼間は市内の書店など。夕方から、楽天の球場へ。楽天対阪神の交流戦。負ける。

6月7日水曜日

＜介護952日＞

8時57分仙台発の新幹線で帰京。11時50分に帰宅。すぐに特養へ向かいに行く。

2泊3日の介護休暇、あっという間に終わる。

洗濯し、昼食。母の年金の通知が届く。物価高なのに前年より減る。どう考えてもおかしい。

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※連載は終了しましたが、著者への感想、コメントはしばらくの期間、こちらのフォームで受け付けています（非公開）。これまでも様々なご感想をお寄せいただき、誠にありがとうございました。

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時をかける老女

91歳の母親と、33年ぶりに一つ屋根の下で暮らすことになった。この日記は、介護殺人予防のために書き始めたものである。

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中川右介

一九六〇年東京都生まれ。編集者・作家。早稲田大学第二文学部卒業。出版社勤務の後、アルファベータを設立し、音楽家や文学者の評伝や写真集を編集・出版（二〇一四年まで）。クラシック音楽、歌舞伎、映画、歌謡曲、マンガ、政治、経済の分野で、主に人物の評伝を執筆。膨大な資料から埋もれていた史実を掘り起こし、データと物語を融合させるスタイルで人気を博している。『プロ野球「経営」全史』（日本実業出版社）、『歌舞伎家と血と藝』（講談社現代新書）、『国家と音楽家』（集英社文庫）、『悪の出世学』（幻冬舎新書）など著書多数。