一日一冊読んでいるという”本読み”のアルパカ内田さんが、幻冬舎の刊行作品の中から「今売りたい本」を選び、そして“POP職人”としての腕を振るって、手描きPOPも作ります。
そして、アルパカ内田さんへの「オススメ返し」として、幻冬舎営業部の人気者・コグマ部長からも、一冊ご紹介。
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元カリスマ書店員でPOP職人のブックジャーナリストが売りたい本
第9回 越谷オサム『たんぽぽ球場の決戦』
こんにちは。薄給より白球が好きなアルパカ内田です。
『陽だまりの彼女』で日本中を剛球ならぬ号泣させた越谷オサムの最新刊はど真ん中ストレート勝負の渾身作だ。タイトルを並べればすぐにリーグ戦が可能なくらいこの世に野球小説は数多あれど、この清々しいまでの痛快さは優勝争いに加われること間違いなし。「野球は人生そのものだ」と言ったのは長嶋茂雄だが、これを読めば「野球文学は人生それ以上である」ことを思い知るはずだ。
夢破れた元高校球児がひょんなきっかけで始めた草野球チーム。ぎこちなく集まる仲間たち。練習方針の基本は「怒鳴らないこと」。気持ちよくプレーをすることだ。思いやりの精神から互いに弱点を補い合う空気が自然と芽生えていく。単なる野球小説というより陰影のある人間ドラマであり、いつしか自分もチームの一員のような気持ちとなっていることに気づかされるだろう。
ナイン全員が挫折を味わっていることが最大の共感ポイント。ままならぬ運命、一筋縄ではいかない毎日。誰もが曲がりくねった道を辿って生きている。老若男女の個性的なメンバーたちが背負っているのは背番号だけじゃない。それぞれの生き様を刻みつけた重たくも誇らしき十字架なのだ。
終盤の試合の高揚感は著者の代表作『階段途中のビッグ・ノイズ』に勝るとも劣らない素晴らしさ。むき出しの感情の発露に全身が心地よく揺らめいた。この感動がたんぽぽの綿毛のように広く拡散することを願ってやまない。

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アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
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