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僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)

2022.05.06 公開 ツイート

『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』刊行記念対談

マジで不幸を呼ぶ岡本さん。加藤千恵さんとの念願のオンライン短歌対談で、一度も自分の顔が映らないという不幸 岡本雄矢

自らの不幸を短歌にする「歌人芸人」の岡本雄矢さんが、短歌とエッセイを綴った初の著書全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割を上梓した。

それを記念して、あこがれていた歌人で小説家の加藤千恵さんとのリモート対談が実現……。

――だったはずが、パソコンの不調で音も映像も届かないという”不幸”にいきなり見舞われた! 

同じ北海道出身で同世代という二人のお話は果たしてどうなるのか。

対談のあと、”不幸の詳細”が本人によって明かされます。そして、二人の短歌の交換もありますので、最後までどうぞお楽しみください。

*   *   *

事件です!対談が始まりません!

加藤千恵 / 歌人・小説家
1983年、北海道生まれ。短歌集『ハッピーアイスクリーム』で高校生歌人としてデビューした後、2009年、『ハニー ビター ハニー』で小説家としてもデビュー。以降、小説、詩、エッセイなど様々な分野で活躍。近刊に『そして旅にいる』『この場所であなたの名前を呼んだ』などがある。

加藤 回線はつながってそうだけど、声も聞こえないし、映像も映らないですね。大丈夫かな。岡本さーん、聞こえてますかー。

担当編集者S(以下、S) いま、岡本さん、きっとあわててると思います。申し訳ありません。ほんとに“天然”で不幸なことが起きるんですよ。

加藤 まだ北海道まで回線が届いてないのかもしれない(笑)。

S 打ち合わせはいつもズームでやっているので、届いているとは思います。

加藤 これも、エッセイや短歌にしてもらえる気がしますね。

S 確かにこうなったら、していただかないと……。

 

(などと雑談があって、やっと岡本さんがズーム対談に参加。しかし紗のかかったような、シルエットさえもわからない画面での登場)

岡本雄矢 / 歌人芸人
1984年、北海道生まれ。コンビ名はスキンヘッドカメラ。詠みはじめるとなんでも“不幸短歌”になってしまうという特徴を持つ、「日本にただ1人の歌人芸人」。
※こちらは、このzoom対談のときの、実際の岡本さんの画面です

岡本 ほんとにごめんなさい! 携帯の画面がバキバキなのでパソコンで入ろうと思ったんですが、どうしようもなくて、すみませんでした! 札幌よしもとで、スキンヘッドカメラというお笑いコンビを組んで活動している岡本です。加藤さん、今日はありがとうございます! よろしくお願いします! 短歌は俵万智さんから入ったんですけど、それから枡野浩一さんを知って、加藤さんは三番目ぐらいに知った歌人なんです。同学年で同じ北海道出身というのもあって嬉しくて、歌集も小説も読ませてもらっています。みんなの知ってる言葉で、みんなが思ってることをこんなふうに言えるのかーって、ほんとにあこがれてました!

加藤 光栄です。ありがとうございます。

岡本 その後、僕は札幌で歌人の山田航先生に出会いまして、「野性歌壇」を教えてもらったんですが、一回だけ加藤さんから特選に選んでいただいたことがあって。

加藤 私が小説誌「野性時代」で「野性歌壇」をやらせてもらっていたときですね。「学校行事」というテーマの回でした。特選にした岡本さんの短歌は〈最後まで一緒に走ろうって言ったじゃん首相になるなんて飛ばしすぎだし〉でした。ほんとうに面白かったです。今回はよろしくお願いします。

――さっそくですが、『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』の感想から聞かせてもらってもいいでしょうか。

加藤 私、実は短歌に説明をつけることには否定的なんですよ。短歌って一首で成立していてほしい。説明によって読み方が狭まっちゃうのはもったいないと思うんですね。だけど岡本さんの短歌は、エッセイによって深みを与えてくれて、読み方を広げてくれる印象でした。一首の力も強くて、エッセイとも呼応して、同じようなことが自分にもあったなと思い出したりして、想像が広がっていく。

岡本 ほんとですか! よかったです。

加藤 この中の一首〈初合コンで言われた第一印象は「実家の麦茶まずそう」でした〉って、実は私、この言葉が登場するネタ動画も見ていたんですよ。きっかけは、お笑いコンビの「金属バット」がやってるラジオ番組で、岡本さんの話が出たこと。「スキンヘッドカメラの岡本っていうのを後輩だと思っていじり倒してたら、まさかの先輩だった」っていう話をされていて(笑)。

岡本 金属バットさんと舞台で一緒になったとき、めっちゃ舞台でいじられました。

加藤 岡本さん、(キャラが)後輩っぽいですもんね(笑)。

――加藤さんは『真夜中の果物(フルーツ)』や『この街でわたしたちは』のような形で、物語と短歌が収められた作品を書かれていますが、物語が短歌の意味を狭めないよう、どんなふうに意識されているんですか。

加藤 ショートストーリーが(読み方の)一例になればと思って書いています。フィクションだと“正解”にならなくてすむんですよね。想像のひとつ……みたいな感じになる。でもエッセイだと、「これが正解です」というふうになる気がして。けど、岡本さんのエッセイはそうじゃなかったので楽しかったです。

岡本 すごく嬉しいです! 僕は自分のエピソードを短歌にして、それをエッセイとしても書いて、さらに日々新しく起こる不幸も加えていって、という感じですので。

『 真夜中の果物(フルーツ)』
まっすぐ進まない恋をしている人にだけ見える景色がある。せつない記憶を切り取った三十七のショートストーリーに短歌を添えて贈る、『ハニー ビター ハニー』の原点。甘くて苦い恋を描く、人気歌人の最初の小説集。
『この街でわたしたちは』
舞美には、いつも高級レストランに連れて行ってくれる年上の恋人がいる。でも彼には秘密があって……。東京を舞台に、 4組の男女がテーブル越しに繰り広げる繊細な恋愛模様を描いた短編小説集。

*   *   *

この連載の書籍化第2弾『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』発売中!

関連書籍

岡本雄矢『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』

今日も世界の片隅で、ひとり膝を抱える僕とあなたのために。 不幸に愛された、トホホ名人……歌人芸人が身を切って綴る、“せつなさとおかしみ”、“短歌とエッセイ”のマリアージュ。

岡本雄矢『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』

このコーナーの書籍化、第一弾! 誰にでもあるこんなトホホ、あんなトホホ。でも、ここにあるのは、とびきりのトホホ。――あなたに明日笑ってもらうために、世界の片隅で、僕の不幸をつぶやいてみました。“歌人芸人”による、フリースタイルな短歌とエッセイ。 穂村弘さん、俵万智さん、板尾創路さん、絶賛の1冊!(イラスト:谷端実)

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僕の不幸を短歌にしてみました(エッセイつき)

著者は、主に”不幸短歌”を詠む「日本にただ1人(たぶん)の歌人芸人」。
よく失敗する、言いたいことが言えない、反論したくても返せない、なぜ自分だけこんな目に合うのかといつも思う、自分には劇的なことが起こってくれないと嘆いて生きている……。
そんな著者から見える”世界”を、フリースタイルな短歌(&ときどきエッセイ)にしてお届け。
もしあなたが自分のことを「不幸だ」と思っているなら、「もっと不幸な男」がここにいると思ってください。

バックナンバー

岡本雄矢 主に”トホホ短歌”を詠む「日本に(たぶん)ただ1人の歌人芸人」

詠み始めるとなんでも”トホホ短歌””不幸短歌”になってしまうという特徴を持つ、「日本にただ1人の歌人芸人」。1984年北海道生まれ。吉本興業所属。コンビ「スキンヘッドカメラ」で活動中。YouTubeで「芸人歌会」を開催。北海道新聞等で連載も。

短歌とエッセイを収録した初の著書『全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割』には、俵万智さん、穂村弘さん、板尾創路さんからアツい推薦文が寄せられた。

最新刊は『センチメンタルに効くクスリ トホホは短歌で成仏させるの』。

 

 

 



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