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その下ごしらえ、ホントに必要?

2022.02.10 公開 ポスト

大根の下ゆではしなくても大丈夫野田真外(映像ディレクター)/松本仲子

コロナ禍を経て、自宅で料理をする人が男女共に増えています。でも、いざ始めてみると色々と素朴な疑問が出るものですよね。そんな料理初心者の方をはじめ「なんとなく日々料理をこなしているけど、自己流でやっていてイマイチ美味しくならない」という方にお勧めなのが『その下ごしらえ、ホントに必要?』です。必要だと思っていたけれどやらなくてよかったことや、これは外さないで! ということが分かる本書から少しずつ試し読みを掲載致します。

(写真:iStock.com/Yusuke Ide)

野田 大根の煮物のレシピも、たいていは米ぬかやとぎ汁で下ゆですると書いてありますけど、これは必要なんでしょうか。

松本 昔の大根には苦味がありましたからね。今は苦い大根って当たったことありませんでしょ?

野田 苦いのはないですね。辛いのは時々ありますけど。ということは、下ゆではしなくていいんでしょうか。

松本 しなくていいと思います。おでんとかふろふき大根でもいらないでしょうね。ここ20~30年、私は下ゆでしないで煮てますけど、苦いと思ったことはないですね。

野田 では下ゆではしないとして、大根の面取りは必要なんですか。

松本 見た目をきれいにしたければした方がいいわね。角が立ってると崩れやすいの。丸いと崩れにくいじゃないですか。角がくずれても気にしないというのであれば必要ないけど、私は習慣のようにしますね。習慣っていうか、角をむくのが好きなの(笑)。

野田 確かにちょっと楽しいですよね。

松本 私はなんとなくむきますけど、家庭だったら必要ないでしょう。里芋なんかだと、角が崩れやすいですよね。私は崩れたのがむしろ好きですけど、お料理屋さんでは崩れたら「家庭的」になりますからダメなんですね。

野田 里芋は崩れてちょっとねばっとしてるぐらいの方が……。

松本 むしろ食べたら美味しいと思いますよ。だけど崩さないように煮るのがお料理屋さんなんですね。ですからお料理屋さんは、里芋をゆでる時にみょうばんを入れたりするんですよ。みょうばんを入れてゆでると、色も白くなるし柔らかくなりにくい。よく言えば煮崩れしない、悪く言えば「ほくほくさ」がなくなるんですね。

野田 お料理屋さんは、家庭料理のよさとは正反対を目指すテクニックが入っていることも多いんですね。

松本 教科書を書くのに、多くの場合プロの方の方法をお手本にしますでしょ。お料理屋さんの料理を手本にした内容や手順がそのまま教科書に入ってますから。だけど私は、煮上がった時に形が保たれていると、ほくほくしてないのかなと逆に思ったりして。少し煮崩れてるくらいの方が好きですけどね。

野田 里芋はむくのが面倒で、冷凍を使うことが多いです。

松本 冷凍の里芋を使う人は多いですね。野菜って冷凍するとまずくなるものが多いんですよ。だけど里芋は冷凍してもそんなにまずくならない。

野田 実際そうお感じになりますか?

松本 感じます。ご飯やパンなどのでんぷん質のもの、芋類やカボチャは水分が少ないから大体大丈夫だと思います。葉物は冷凍するとまずダメですね。90%以上が水ですから、凍ると水が膨張して細胞が壊れちゃうんです。ただ冷凍食品として販売されている野菜類は冷凍に強い品種を使っているので、その場合は葉物でも大丈夫です。

関連書籍

〈教えた人〉松本仲子/〈教わった人〉野田真外『その下ごしらえ、ホントに必要? 段取り少なく美味しくできる、家庭料理の新常識レシピ』

家庭で炊事担当になった男性TVディレクターが女子栄養大学名誉教授に教わった、「本当はやらなくていいこと」を省いて美味しい料理を作るコツ

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その下ごしらえ、ホントに必要?

家庭で炊事担当になった男性TVディレクターが女子栄養大学名誉教授に教わった、「本当はやらなくていいこと」を省いて美味しい料理を作るコツ。

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野田真外 映像ディレクター

1967年生まれ。福岡県北九州市出身。CM制作会社、フリーランスを経て、2003年に有限会社グラナーテ設立。TV番組など映像の演出をメインにグラビアDVDから温泉旅番組、オタク番組まで幅広く活動。主な映像作品に『東京静脈』(03)『行くぞ! 30日間世界一周』(08)等。押井守原理主義者で1997年には研究本『前略、押井守様。』(フットワーク出版)を上梓。

松本仲子

1936年生まれ。女子栄養大学名誉教授。聖徳大学大学院兼任講師。管理栄養士。医学博士。専門分野は調理学、官能評価法、食文化論。「調理法の簡便化が食味に及ぼす影響」等の研究多数。著書に『楽しい食品成分のふしぎ 調理科学のなぜ?』(朝日新聞出版)、『調理と食品の官能評価』(建帛社)、『日本食と出汁―ご馳走の文化史―』など多数。

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