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妻のパンチライン

2021.12.17 公開 ツイート

発売記念Space #3 妻×ぬまっちさん

教え子には、失敗したときでも頑張れる子になってほしい @wifeisking

「子どもが一緒なのに、なんで5分で出発できると思ってんの!? それは想像力がないだけや」

「家事・育児に参加しない夫は、幽霊部員みたいなもん」

「子どもに、どうした? って聞きまくるのは、寄り添っているようで責めてるだけやで」

「結婚を恋愛のゴールにしたらアカン。結婚は共同創業と捉えたほうがいい」

「“いる”と“コミット”は違う。携帯片手にいるだけなんて、バイトだったらタイムカード切って! って言われるで」

など、「それ私の言いたかったこと!!」と全国の妻が共感しまくるTwitterアカウント、「妻のパンチライン(@wifeisking)」が書籍化しました!

書籍『妻のパンチライン』の発売を記念して、TwitterのSpaceで毎日行われる対談企画。11月9日には現役小学校教師のぬまっちさん(@88834)にお越しいただきました。「夫婦と子育ての関わり方」というテーマでお話ししました。

幻冬舎plusではその内容を少しだけお裾分けします!

*   *   *

:自己紹介をしていただいてもいいですか?

ぬまっち:沼田晶弘と言います。世の中ではぬまっちと呼ばれていて、小学校の先生をしています。今はクラス担任も持っています。

担任を初めて持ったのが30歳過ぎてからでしたけど、その時に「変わった奴がいる」って注目をされて、2015年に「この小学校の先生がすごい!」っていう記事を書いていただき、それが「大バズり」ってやつになりまして。一晩でtwitterのフォロワーが1万人増えたり、フェイスブックで10何万いいねをいただいたり、なかなか経験できないことを経験しました。

自由な発想で子どもの好奇心に着火

ぬまっち:僕のポリシーは「やってもらう」。先生って教えてあげたいっていう気持ちが強いんです。でも気がついたんですよ。僕がどんなに頑張ろうと、僕がどんなに上手に教えようと、子どもが勉強しなかったら意味がない。逆を言えば、僕が昼寝をしていようが、僕が酒を飲んでいようが、子どもが超勉強して結果を残したらOK。そう気がついた瞬間に、自分の仕事がどんどん減っていきました。

:なるほどなぁ。子どもの好奇心にスイッチが入って、「よし、やるか」っていう気持ちに着火させたら、もうこっちは仕事終了ってことですよね。

ぬまっち:そうです。たとえば、2年生の担任をやってる時に気がついたことがあって。2年生のちょうど今ぐらいの時期に掛け算・九九が始まるんです。お風呂の中で暗記させたりするじゃないですか。

:そうですね。表を貼ってね。

ぬまっち:そこで気付いちゃったんですよ。一クラス40人弱いて、チェックは友達、お家の人、先生というふうに、最後は先生。つまり、全員が一発合格したとしても僕は360回も九九を聞かなきゃいけないんですよね。

:そうですね、それどころか何回も聞いてますよね。

ぬまっち:子どもって失敗すると一回練習してくるかと思いきや、そのまま並ぶんです。だから僕のところで言うのが練習になってる。これはやべーことになったぞと。

:いや、確かにそう思うと、先生ってめちゃくちゃブラックですよね。

ぬまっち:それでやめて、代わりに空白の81マスのカードを作って、掛け算九九を1から順番に並べて、F1の「TRUTH」を流して、九九を書き終わるのが二分切ったらU2(=Under 2minutes)って名乗っていいよって言ったんです。

:ふふふ(笑)。

ぬまっち:そうしたら子どもたちがめちゃくちゃ勉強しだしたんです。毎日毎日、一回曲を流しながらやるだけ。丸つけもするから一日二回九九をやることになりますよね。そうすると、2分とか楽勝でクリア出来るようになっちゃって。

:ええ、全員2分で81個書けるんですか?

ぬまっち:2年生だと3ヶ月ぐらいで全員できるようになっちゃう。つまんないから、3学期に入ったら「ランダムU2」とか名前をつけて、今度は数字がランダムに変わるようにしたり。それもまた全員で2分切ろうって言ったら、三学期にまた全員2分切ってるんです。だけどその時、僕は何にもしてない。ただ81マスを書いた紙を印刷しただけなんですよ。そういう感じの教育方法を好き好んでいます、っていう先生です。

妻・夫:面白い。

:膝つき合わせて横にぴったりついて、これはこうでっていうのが勉強教えるっていうふうに思ってました。自分もそうされたし。

ぬまっち:そこがポイントです。僕は自分がされてきたことは今の子に通じないと思っていて。たとえば、10年前にはもうスティーブ・ジョブズが亡くなっていて、その時にiPhone4sが出たらしいんです。じゃあ今、iPhone4sを使いますか?

:もう使いかたも微妙ですね。

ぬまっち:ツイッターつなぐだけでもすげー時間かかる気がするんです。

:ああ、そうですね。クルクルクルクルしちゃいそう。

ぬまっち:10年前の教育方法って、iPhone4sの時代の教育でしょ? 10年前もめちゃくちゃ昔。そうすると、僕らが習った頃って、もう何10年も前じゃないですか。

:そうですね。化石みたいなもんですもんね。

ぬまっち:携帯電話もありませんでしたしね。そういう時代にやったことを今の子どもにあてはめても、効かないのかなと思っています。

:ぬまっち先生はどのタイミングで、自分のやり方でやる方がいいって思ったんですか?

ぬまっち:2年目ぐらい。

:早い!

ぬまっち:僕はオールドルーキーで、他にいろんなことしてから先生になってるんです。だからたとえば国語とかは教科書を見ると気がつくこといっぱいある。物語文とか説明文とかはきちんとやりますけど、「新聞を作ろう!」とか言われても、書きたいことがないのに書けって言われても困りますよね。だから書きたいことがあるときにやろう、とか。

:じゃあこの3ヶ月の中で完成させてくださいみたいな?

ぬまっち:そうそう。修学旅行から帰ってきてから書こうか、とか。最近はそれすらめんどくさくなってきて、自分で記者会見を開いてるんです。

:記者会見! どういうことですか。

ぬまっち:僕、コロナの前は全国へ出張にいっていたので、5時間目と6時間目だけ教室を空ける、ということがあったんです。そうすると月曜日に、どうだった? と児童から聞かれるんですよ。それもちょっと面倒だなと思って、月曜日の朝に記者会見を開くんです。ちゃんとマイクも用意して、「記者会見を始めたいと思います。なお質問のある方は、会社名と名前を言ってから発言願います」とか言って。そうするとみんな勝手に新聞社の名前を作って質問してくるんで、質問に答えて。それをまとめて200字ぐらいの記事にしてもらう。45分の授業の中で20分くらい記者会見して20分くらいで記事を書いて、というのをやってました。

:子どもたちが各々作るので、30枚記事ができるってことですか?

ぬまっち:そうですね。僕、結婚した時も記者会見の質疑応答の中でしれっと発表したんですよ。

:ええ!

ぬまっち:だから全員から号外が出て、面白かったですね。面白すぎて結婚式の会場に貼りました(笑)。こういう話をすると、おたくの学校は優秀だからって言われて、まあ確かにそれもあるんですけど、別に全員が優秀なわけではないし、子どもたちは毎週楽しんでやっているし、それでかなり力をつけるんです。

:多分ぬまっち先生が好奇心に着火して、子どもたちが面白がってやってるんだろうなと思うんですけどね。

褒められることを練習させたい

:今日のテーマは「夫婦と子育ての関わり方」です。ぬまっち先生も保護者面談をされると思うんですけど、親はどんなことで悩んでるんですか?

ぬまっち:簡単に言うと、親が自分の子を比較するのは、学級のオールスターなんですよね。

:へえ~。

ぬまっち:たとえば、「走るのが速いね」って褒められたとします。そうすると「でも漢字は○○くんのほうができるから」って。その子はうちのクラスの漢字のスーパーエースだよっていう子と比べるんです。

:部門部門で出木杉君がいるってことですね。

ぬまっち:どこのクラスにも部門ごとの一番がいるじゃないんですか。その子と自分ちの子を比べるから、自分ちの子、0勝なんですよ。

:全然あかんってなるわけか。

ぬまっち:親って、できてないところを何か言いたくなっちゃうみたいなんですよね。

:ぬまっち先生は日本人は叱られるのが多くて褒められるのが苦手だっておっしゃってるじゃないですか。それって親からも受け継がれて、そういうコミュニケーションが育ってしまっているんですかね。

ぬまっち:そこ、僕の中で新展開を迎えています。日本人って褒められ方が下手だと思って。

:リアクションがですか?

ぬまっち:それもあるんですけど、アメリカ人って写真撮るときにすごい笑顔で笑うじゃないですか。彼ら、小さいころから笑う練習してるんですよ。僕も仕事の関係でたまに写真を撮られることがあるんですが、大体「笑ってください」って言われるんです。けど素人だから自然に笑えない。それでちょっと練習してみたんです、一人でこっそり。そうしたら、3秒ぐらいは笑顔ができるようになったんです。

:いい作り笑いってことですよね?

ぬまっち:そうそう。その時に、日本人って褒められ方の練習をしていないんじゃないかって思ったんです。たとえば職場でやたらとお土産とかプレゼントがもらえるような子たちをよく観察すると、100%もらい方がめちゃくちゃ上手。

:へえ~、モテる女子と近いものがありますね。

ぬまっち:うちの奥様がその最たるもので。出張でお土産を買って帰るじゃないですか、そうするとすごく嬉しそうにするんです。毎回喜ばれたら、買ってきてあげたくなるじゃないですか。それと同じで、褒められたときにめちゃくちゃニコニコしてれば、また褒めたくなるんですよね。でも日本人って、褒められたときにちょっと喜びを隠すじゃないですか。

:ええ、そうですね。

ぬまっち:だからクラスで、褒められトレーニングを始めたんです。

:それ私もやりたいな!

ぬまっち:褒めた時にちょっと照れたりすると、やり直し。「だめ、リアクションが薄い!」って言って、少し前のセリフからもう一回始めて、もう一回褒めるんです。中には褒められ上手な子もいるので、その子に「ちょっと今から褒めるから喜んでみて」「お、今日服かっこいいね!」とか言うと、「ほんとですか? ありがとうございまーす!」って言ったりして。

:可愛いな!

ぬまっち:で、さっきうまく褒められなかった子に、「今の参考にやって!」って言ったり。あとは褒められたら立ち上がって、大統領のように手を振るとか、毎日続けさせていたんです。そうしたらクラスの雰囲気が良くなりました。友達同士でも褒めあったりするわけ。

:あの子のリアクションいいよね! みたいなね。

ぬまっち:子どもたちはどんどん褒められ慣れていくから、やっぱり褒められる練習はした方がいいんじゃないかな。

関連書籍

@wifeisking『妻のパンチライン』

オムツ替えて、荷物の再確認して、靴を履かせて…… 「なんで5分で出発できると思ってんの!?」 それ、私の言いたかったこと! と全国の妻、共感の嵐! SNSで話題沸騰。 一人では受け止めきれなかった夫が思わずシェアした、切れ味鋭く、愛情深い言葉たち。 「毎日の家事・子育てのなかで、妻が息するように吐き出すパンチラインをつぶやきます。」 そんな自己紹介を掲げて始まったTwitterアカウント「妻のパンチライン」。 厳選したツイートに、妻による解説を書き下ろしました。

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妻のパンチライン

「毎日の家事・子育てのなかで、妻が息するように吐き出すパンチラインをつぶやきます。」

そんな自己紹介を掲げて始まったTwitterアカウント「妻のパンチライン」。

書籍の試し読みや、発売記念Spaceの記事を公開します。

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妻は、凄い。毎日の家事・子育てのなかで、妻が息をするように吐き出すパンチラインをつぶやきます。

と掲げて始まったTwitterアカウント。フォロワー数約3.7万人(2021年11月現在)。

3人の子を持つ家庭で生まれる、鋭く、愛のある言葉たちを夫が編集・ツイートする。日々、夫がくらったパンチラインを投稿している。

Twitter:@wifeisking

Instagram:@wifeisking_

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