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情報の選球眼

2021.12.08 公開 ポスト

投資家、経営者はニュースの情報に頼らない山本康正(米ベンチャー投資家)

フェイクニュース、デマ、誤報。現代社会には手を出してはいけない情報が溢れています。しかし経営や投資において、情報を活用せずに成功を収めるということはあり得ません。『情報の選球眼』(山本康正、幻冬舎新書)では、投資家として活躍する著者が、自ら実践する情報の収集・活用方法を紹介しています。

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メディアを介した時点で情報の価値は減少する

情報の流れは、私たちの身のまわりの自然界、川や海の流れと似ています。海には、さまざまな川から集まってきた水や雨水、その他の物質が混じり合っています。けれども、おおもとは川の源流です。

鮮度が最高の状態にあるのが一次情報だと言えます。続いて、第三者を介して知った情報や一次情報をもとに加工したのが二次情報、さらに加工すると三次情報となっていくのです。

(写真:iStock.com/metamorworks)

たとえば、ある大学発ベンチャーが投資に値する企業か判断するために、最新情報を知りたいとします。そうするとメディアで紹介されている記事からの情報はベンチャーを応援する特集で取り扱っていたりするため、都合の悪い情報は出しにくくなります。その時点で、本来の一次情報とは違う内容が加えられていることが、分かるのではないでしょうか。

交通事故での報道を考えてみると一次情報の大切さに気づくはずです。事故現場で実際に事故を起こしたドライバー、あるいは、現場に居合わせて事故を目撃した人の情報が、一次情報。さらに言えば、当事者や目撃者の主観が入っていますから、そもそも人に聞いた時点で、事故の場合は正確な源泉の情報と定義するのは難しいでしょう。

情報が拡散していけば、二次情報だけでなく、三次情報、四次情報と広がっていき、当然、情報の鮮度も信頼度も比例して下がっていきます。自動車事故の例であれば、極端ですが、実際には右折していた車が、左折していたと報道される。このような真逆の情報が流れていくことさえあるからです。

記者やコメンテーター、あるいはブロガーなどが介在していることを、情報を得る際には、しっかりと頭に入れておくべきです。特に閲覧数が増えれば広告などの収入が増えるという構造の媒体にとっては、間違っていても読まれればそれで目的は達成したことになります。

緊急事態宣言発令の噂はどこからやって来たのか

新型コロナウイルスに関するさまざまな情報も、情報が源泉から川、海へと流れていく構図そのものです。2020年の4月に最初の緊急事態宣言が発せられた際、政府が正式に公示する前に、巷ではすでに「緊急事態宣言が出る」との情報が飛び交っていました。

読者の中にも、知人からLINE(ライン)などでニュースよりも早く、情報を得た人がいることでしょう。しかし、そのような知人から得た情報は、多くの人を介在して回ってきて、二次、三次ではすまない、もっと下流の情報です。実際の宣言と日付が違うなど、内容は信頼に値しませんでした。

そしてここでも先ほど触れたように、なぜ、その情報が自分のところに回ってきたのか、誰が伝えたのかを考えることが重要です。緊急事態宣言であれば、多くは2つの理由がありました。

ひとつは、知人などにいち早く知らせたいとの善意によるもの。もうひとつが問題ですが、自分はまだ世に出ていない情報を知っていると、自慢したい属性の人たちによるものです。実際に緊急事態宣言の発出、検討に直接携わっていない関係者が、噂の段階で発出されると周囲に喧伝するような事態が起きています。

このように情報には流れや鮮度があります。誰かが意図的もしくは意識せずとも介在することで、誤った情報が流れていくリスクがあることを知っておくことが情報を得る上でまず重要です。

嘘は真実よりも拡散力が高い

「真実は伝わりにくい」。情報を伝えたり得たりする場合には、このことを大前提として念頭に置く必要があります。その上で、源泉の情報を取りに行かなければなりません。

真実にたどりつきにくい理由は、情報が下流に流れていくことで、多くの人が介在し、伝えやすいように詳細を省いたり、思い込みで伝えてしまったりすることが起こるからです。

(写真:iStock.com/Yusuke Ide)

そもそも真実とは複雑であることが多いのです。たとえばAI(人工知能)で考えると、ディープラーニングの発達で人間よりも高い精度で情報処理が可能になり、一部の仕事を任せることができるようになるという流れがあります。

この情報を正しく伝えようとするには、ディープラーニングの仕組みについて解説することが必要ですし、どんな作業に限定されるかについても説明しなければなりません。それよりは「AIは人間の仕事を奪う」という言い方の方が、簡単かつインパクトもあるので伝わりやすくなるというのがお分かりいただけるはずです。

幼いころ、学校のレクリエーションで行った伝言ゲームやゼスチャーゲームを思い出してみてください。伝える人が増えれば増えるほど、伝える内容の量が多ければ多いほど、情報が真実から離れていくのは明白です。メディアが発している情報でも、まったく同じことが言えます。

もうひとつ問題なのは、いわゆるデマです。こちらは意図的に誤りに誘導するという点で悪質です。噂のような情報は、真実が伝わるのと比べ8倍以上の速度で拡散すると言われています。今回の新型コロナウイルスに関するさまざまなデマ、噂の広がりは、まさにいい例です。

関連書籍

山本康正『情報の選球眼 真実の収集・分析・発信』

手を出すべきではない無数の虚偽情報が世の中に存在する。経営や投資において、フェイクや誤報を元に判断を下せば損失は免れない。だが、一方でスイングをしなければ利益を掴めない。ビジネスでは正しい情報が10あっても、大成功に結び付くのはたった1つ。トッププレイヤーでも1割以上の成功率を得るのは困難だが、彼らはその10の好機を見逃さずにバットを振り続けている。本書では投資家である著者が、自ら実践する情報の収集・活用法を指南。真実を見極める眼と、利益を最大化する思考力を養う一冊。

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情報の選球眼

2021年11月25日刊行の『情報の選球眼 真実の収集・分析・発信』の最新情報をお知らせいたします。

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山本康正 米ベンチャー投資家

1981年、大阪府生まれ。東京大学大学院で修士号取得後、米ニューヨークの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得。修士課程修了後に米グーグルに入社し、フィンテックや人工知能(AI)ほかで日本企業のデジタル活用(DX)を推進。自身がベンチャー投資家でありながら、日本企業やコーポレートベンチャーキャピタルへの助言なども行う。京都大学大学院総合生存学館特任准教授も務める。著書に『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(講談社)、『スタートアップとテクノロジーの世界地図』(ダイヤモンド)、『ビジネス新・教養講座テクノロジーの教科書』(日本経済新聞社)『2025年を制覇する破壊的企業』(SB新書)ほか。

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