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情報の選球眼

2021.12.14 更新 ツイート

ビジネスパーソンは論文が読める英語力を身に着けるべし 山本康正

フェイクニュース、デマ、誤報。現代社会には手を出してはいけない情報が溢れています。しかし経営や投資において、情報を活用せずに成功を収めるということはあり得ません。『情報の選球眼』(山本康正、幻冬舎新書)では、投資家として活躍する著者が、自ら実践する情報の収集・活用方法を消化ししています。

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(写真:iStock.com/TakakoWatanabe)

翻訳された情報は価値が減少する

英語が原文の記事を日本語に翻訳した時点で、記事の情報は源泉から一歩遠ざかります。一次情報なら二次情報、二次情報なら三次情報となってしまうのです。翻訳した人によって、あるいは専門性の理解や感覚によって日本語の内容が微妙に異なるからです。

英語力が乏しいと、情報の背景にある文化や各種情報を取得することができない、とのデメリットもあります。たとえば、新型コロナウイルス関連の記事でよく見られる「public health」という単語。日本語では「公衆衛生」と訳されることが多いようですが、正確ではありません。

公衆衛生と聞いて、多くの日本人は単語そのままに、「大勢の人が集まる、公の場所での衛生」だと理解するからです。一方で、アメリカ人の感覚は異なります。

「public health」という単語には、「社会の健康」といま社会で問題となっている個人のメンタルヘルスも含まれ、日本人のイメージよりも広い意味を持っています。

世界の情報は英語でできている

単純に話者の数で考えても、世界でやり取りされている情報の約30%は英語です。一方日本人の人口比率は世界の中でわずか1.6%。つまり、日本語の情報よりも、いかに英語の情報量が多いかは明らかです。

英語の原文を読むことは、情報の鮮度という観点からも重要です。たとえば、日本市場を瞬く間に席巻したiPhone。日本に入ってきたのは2008年でした。発売直後ではなく、2代目の機種になってからです。重要なのは、その時点ですでに世界では約600万台も売れていたことです。

にもかかわらず、日本のマーケットはこれまでに主流だった折りたたみ携帯が一部分では優秀なこともあって、海外からの情報の取得に消極的でほとんど情報が入ってきませんでした。グローバルレベル、英語での情報は飛び交っていたにもかかわらず、です。

その結果もありどうなったか。日本企業はシェアにおいてiPhoneに対抗することができませんでした。そしてこのような情報格差、特にグローバルで当たり前の情報が日本語に訳されず、日本のマーケットにまだ入ってきていないがために、知り得ない。結果、ビジネスで大きな危機が迫っているのにもかかわらず、気づかないケースがあまりに多いのです。

アメリカで若者を中心に爆発的な人気を得ている、投資アプリを開発するフィンテックベンチャー、ロビンフッドも同様です。最近では日本のメディアで取り上げられる機会も増えてきましたが、ほんの数年前までは、存在すら知らない日本人が多かった。

現時点では日本への参入はありませんが、いずれ入ってくるでしょうし、そうなれば日本の証券会社や、金融業界にとっては大きな脅威になると私は見ています。

海外、英語の情報だからといって日本語に訳されるまで待っていたら、それこそビジネスチャンスを逃すばかりか、逆に、ピンチに陥るケースも多い。グローバルの情報を英語の原文で確認し、世界のトレンドを知ることが大切です。英語はできたら有利、というコスパ計算ではなく、できなかったら致命傷になり得るという危機感の方が重要でしょう

(写真:iStock.com/spinka)

論文は最もバイアスがかかりにくい情報の源泉

論文とは、過去の研究結果を踏まえた上で、新しい発見にアプローチを試みた知の結晶です。その成果から、社会に役立つアイデアが生まれるかもしれない。重要なのは、限りなくバイアスが排除されている情報の源泉であることです。

きちんとしたメディアやプレスリリースであれば、情報元である論文が読めるリンクを貼ってある場合が多いのです。言い方を変えると、論文のリンクが貼っていない記事は、信頼性に乏しいと言えます。

たとえば、AIの研究に注力しているグーグルが同研究内容を発表する際には、必ずと言っていいほど、記事にリンクが貼ってあります。著名な学術雑誌での査読を経た論文の一次情報によって、記事の信頼性が担保されているのです。

ここでひとつ注意したいのは、論文だから必ず正しいと盲目的に信じてはいけないということです。査読が済んでいないプレプリントの論文や、都合の良い箇所だけを切り取るものも含め、特に新型コロナウイルス関連では、誤解を生じさせるような論文が出回っていました。副反応も含めたワクチンの安全性などもそうです。実際、発表後に撤回されたものもありました。

論文は一次情報に近い信頼性があるものではありますが、どこのお墨付きを得ているのか、査読されているのかが重要になってきます。イギリスの総合学術雑誌、ネイチャーはおすすめです。掲載前に専門家が必ず内容をチェックする査読が行われている可能性が高いからです。

私がテクノロジー界隈の情報、論文を見る機会が多いのでネイチャーを挙げましたが、それ以外の領域でも同じように、一流の専門家による査読を通過した論文を記事とあわせて紹介しているジャーナルは多数あります。自分の調べている業界では、どこのジャーナルに掲載されている論文を読むべきかを、チェックしておくといいでしょう。

論文と聞くと、膨大な紙の資料を想像する人も多いようですが、現在ではPDF化されたものがネット上に公開、リンクされていますので、誰でも気軽に読むことができます。

ちなみに、中国語やスペイン語も世界で広く使われている言語ではありますが、論文においては、現在は英語で書くことが世界のスタンダードになっていますし、論文を書くような人たちは、英語力が備わっている場合が多いです。まずは論文が読める程度の英語力を身につけることが、価値ある情報を見極めるためにも必要です。

関連書籍

山本康正『情報の選球眼 真実の収集・分析・発信』

手を出すべきではない無数の虚偽情報が世の中に存在する。経営や投資において、フェイクや誤報を元に判断を下せば損失は免れない。だが、一方でスイングをしなければ利益を掴めない。ビジネスでは正しい情報が10あっても、大成功に結び付くのはたった1つ。トッププレイヤーでも1割以上の成功率を得るのは困難だが、彼らはその10の好機を見逃さずにバットを振り続けている。本書では投資家である著者が、自ら実践する情報の収集・活用法を指南。真実を見極める眼と、利益を最大化する思考力を養う一冊。

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情報の選球眼

2021年11月25日刊行の『情報の選球眼 真実の収集・分析・発信』の最新情報をお知らせいたします。

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山本康正 米ベンチャー投資家

1981年、大阪府生まれ。東京大学大学院で修士号取得後、米ニューヨークの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得。修士課程修了後に米グーグルに入社し、フィンテックや人工知能(AI)ほかで日本企業のデジタル活用(DX)を推進。自身がベンチャー投資家でありながら、日本企業やコーポレートベンチャーキャピタルへの助言なども行う。京都大学大学院総合生存学館特任准教授も務める。著書に『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』(講談社)、『スタートアップとテクノロジーの世界地図』(ダイヤモンド)、『ビジネス新・教養講座テクノロジーの教科書』(日本経済新聞社)『2025年を制覇する破壊的企業』(SB新書)ほか。

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