幻冬舎営業部 コグマ部長からオススメ返し
鈴木おさむ『僕の種がない』
2年前の夏の終わりのこと。有楽町の書店で副店長だった内田剛さんから
「実は、会社を辞めようと思います」
と打ち明けられた。当時50歳。驚きはしたが、そんな人生の節目で新しい一歩を踏み出すことを決めた内田さんの表情はスッキリしていて、どこか羨ましくもあった。時を経て、「カリスマ書店員」(ご本人はこの呼び名を気にいってなかったかもしれないが)から、今や「ブックジャーナリスト」に肩書が変わった内田さんとこんな連載ができるとは!
さて、内田さんの渾身の1冊に対抗して、私のオススメはこれ!
鈴木おさむさんの『僕の種がない』だ。
人気放送作家の実体験にもとづく、テレビ界を舞台にした男性目線の「不妊治療」小説。これだけ聞くと読者はあるおきまりのイメージを描きがちですが、鈴木さんの小説には予定調和は一切なし。読み進めていくと、残酷なことや、辛い描写もありますが、読者の想像をすべて裏切っていくスリリングな展開。不妊にたいして自分が知っていると思っていたことなんか、ごく一面でしかなかったと思わせる圧倒的な情報量。読み始めたら最後まで、鈴木さんが作った世界を脇目もふらずに走ることになりました。
読後、温かい気持ちに包まれるはずです。
これは私がどうしても読んでもらいたい小説です。
当欄では、幻冬舎の販促責任者である私がオススメする小説を続々紹介させていただきます。お付き合いどうぞよろしくお願いいたします。
アルパカ通信 幻冬舎部

元カリスマ書店員で、POP職人でもある、ブックジャーナリストのアルパカ内田さんが、幻冬舎の新刊の中から、「ぜひ売りたい!」作品をピックアップ。
書評とともに、自作の手描きPOPも公開。
幻冬舎営業部のコグマ部長からの「オススメ返し」もお楽しみください!
- バックナンバー
 - 
						
						
						
- まさきとしか『スピーチ』- 鍵を握るのは...
 - 宮田珠己『そして少女は加速する』- コン...
 - 新川帆立『魔法律学校の麗人執事1 ウェル...
 - 最東対地 『耳なし芳一のカセット テープ...
 - 標野凪『独り言の多い博物館』- 思い出の...
 - 伊東潤『鋼鉄の城塞ヤマトブジシンスイス』...
 - 瀧羽麻子『妻はりんごを食べない』/河井あ...
 - 岡本雄矢『僕の悲しみで君は跳んでくれ』/...
 - 恩田陸『珈琲怪談』/賀十つばさ『ドゥリト...
 - 久坂部羊『絵馬と脅迫状』/越尾圭『ぼくが...
 - 井上荒野『しずかなパレード』/真下みこと...
 - 柳広司『パンとペンの事件簿』/天野節子『...
 - 増山実『あの夏のクライフ同盟』/町田康『...
 - 南杏子『いのちの波止場』/森沢明夫『桜が...
 - 鯨井あめ『白紙を歩く』/岩井圭也『夜更け...
 - 辻堂ゆめ『ダブルマザー』/中山七里『作家...
 - 下村敦史『全員犯人、だけど被害者、しかも...
 - 浜口倫太郎『コイモドリ時をかける文学恋愛...
 - 水野梓『金融破綻列島』/柴田哲孝『暗殺』...
 - 真梨幸子『教祖の作りかた』/村木嵐『まい...
 - もっと見る
 
 
					
					



					
					
					





