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編集部日記

2021.07.17 更新 ツイート

「映画:フィッシュマンズ」を見た週 竹村優子

7月12日
昨日のガンバレプロレス「ロスト・ハイウェイ2021」観戦の興奮が一日経っても鮮烈に残っている。5月に「私と本棚」へご寄稿いただいたプロレスラー&映像作家の今成夢人さんのプロレスをはじめて見た。プロレスは見世物だけど、殴られ、投げられ、倒される痛さは本物であることにいつも不思議な気持ちになる。今成さんは、文章のなかで、「経験する」ことのこだわりを綴ってらしたのは、この「痛み」のことかと思うと腑に落ちる。

午前中から会社に行こうかなと思ったけど、やっぱり混んでいる電車は避けたくて、自宅で仕事していると、電話その他、少しバタバタとする。そのあと会社へ。

 

社長から『薬物売人』がおもしろくて読むのをやめられなかったという感想をもらう。うれしい。「どうしてこんなに読ませる文章が書けるのか?」と訊かれたけれど、私もその理由を少しでも知りたくて、著者の倉垣さんに「私と本棚」へのご寄稿をお願いした。文章がうまい理由はいまもわからないけれど、そこで書かれた文章もいい、といろいろ感想をもらった。

今日から四度目の緊急事態宣言。でももうタイトルに使いたくないので、違うパターンにしようと決める。


7月13日
夕方近くまで自宅で原稿読み。それから会社に行って、10月文庫の作業。

町田康さんのバンド「汝、我が民に非ズ」のライブ視聴チケット買っていたけど、リアルタイムでは見られそうになく、アーカイブで楽しむことに。


7月14日
原稿を集中して読みたいので終日在宅。新しい「私と本棚」も公開。りょかちさんによる、「嘘偽りない自分がいる場所」としての本棚。

夕方、芥川賞と直木賞の結果発表を聞いたあと、夜ごはんの買い物へ。往来堂書店にも寄ると、「本の雑誌」の方がいらしてて、「伊野尾さんの名文が~」という話が聞こえてくる。あ、そうだったと思い、『本の雑誌8月号』を購入。特集は「途中経過!コロナと出版」。伊野尾書店店主・伊野尾さんによるコロナ禍一年間の書店日記は、忘れていたことをたくさん思い出させてくれた。『ペスト』が売れたことも遠い記憶になっていた。『ペスト』を読んで思ったのは、新しい感染症はいつか終わる、という希望だったけれど、こんな政治の問題にすり替わるとは予想していなかったな。


7月15日
午前中、オンラインで幻冬舎plusの定例ミーティング。「結婚って何?」特集は、最後は高山なおみさん。結婚のわからなさ、誰かと日常を重なること、そこで出会う知らない自分について。

終わったあとは、すぐに出かける準備をしてまず渋谷へ。コンタクト買いたかったのだけど、緊急事態だから営業時間を短縮して木曜日は休みだという。今まで平日の定休日なんてなかったのに、とやりきれない思いのまま会社へ。いくつか仕事をしたあと、新宿の別のお店でコンタクトを無事購入し、「映画:フィッシュマンズ」を見る。公開前は、長いからどうしようかな~と思っていたけど、イーストプレスで『僕と魚のブルーズ 評伝フィッシュマンズ』を担当した友人のSNSを見ていたら、募る気持ちが抑えられなくなった。私の大学時代は、フィッシュマンズの全盛期とまるまる重なる。熱心なファンでなくとも、ヴォーカルの佐藤伸治の声はそのときもそのあとも特別だった。映画で描かれていたことは、音源を聴くだけだった私には、知らないことばかり。こんなにも「バンド」だったことも。佐藤くんが望んだように、フィッシュマンズの音楽で誰かの人生は変わっていると思う。胸がいっぱいで東新宿まで歩いた。

帰り道

90年代の音楽は、私にとって幸せな記憶だけれど、小山田圭吾氏がオリンピック開会式の音楽担当になったこととともに問題になったインタビュー記事、たしかにこういうことは知っていたと思い出す。


7月15日
原稿読みを自宅で。夕方から会社に行く。

『往復書簡 限界から始まる』のイベント第二弾の告知記事も公開。8月26日オンライン開催で、ゲストは、宮台真司さん。「往復書簡」のなかにもいろいろ出てくるブルセラ少女だったときの涼美さんの話。宮台さんは、当時、その少女たちを社会システムとともに分析し、鮮烈な存在感を放っていた。ブルセラショップに出入りする少女、援助交際をする少女たちについては、河合隼雄さんが「魂に悪い」という言葉でたしなめていたり、盛んに大人たちによる議論が行われていたのだ。

あれから30年弱。女性たちの「売春」はモラルよりも、経済の問題、貧困の問題となってしまった。いや、もともと貧困の問題だったのに、その頃だけがが違ったのかもしれない。とはいえ、当時から現在までの変化のひとつは、日本経済の弱体化と格差の拡大、そうした貧困を生み出す社会構造をただすよりも、自己責任で解決するネオリベ化が進んだこと。小山田くん問題により、90年代の総括がいろいろ始まりそうだけど、これもそのひとつといえるのかも。
 

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幻冬舎plus編集部員の仕事と日々。

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竹村優子

幻冬舎plus編集長と単行本、新書、文庫の編集に携わる。手がけた本は、『世界一の美女になるダイエット』(エリカ・アンギャル)、『青天の霹靂』(劇団ひとり)、『職業としてのAV女優』(中村淳彦)、『快楽上等!』(上野千鶴子・湯山玲子)、『大本営発表』(辻田真佐憲)、『弱いつながり』(東浩紀)、『赤い口紅があればいい』(野宮真貴)、『じっと手を見る』(窪美澄)、『銀河で一番静かな革命』(マヒトゥ・ザ・ピーポー)、『しらふで生きる』(町田康)など多数。

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