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人はなぜ眠れないのか

2021.06.20 公開 ポスト

サーカディアン・リズムだけじゃない。3つの体内時計で睡眠の質を上げる岡田尊司

厚生労働省の2018年の調査では「睡眠で休養が十分にとれていない」人の割合は21.7%。日本人の5人に1人が睡眠に悩みを抱えています。自身も不眠症に長く悩まされた経験を持つ精神科医の岡田尊司さんが、睡眠のメカニズムや不眠症克服の極意を解説する幻冬舎新書『人はなぜ眠れないのか』より、睡眠の質を上げるための基礎知識やTipsをご紹介します。

眠気の強さは何で決まるか

眠ろうとしても、眠気がなかなかやってきてくれないと、うまく眠れない。逆に起きていたいのに、眠気が来て困ることもある。よい睡眠をとるためには、この気まぐれな眠気と上手に付き合っていく必要がある。睡眠を考えるうえで、睡眠時間とともに、睡眠のタイミングも重要だということが、近年わかってきた。

眠気の強さは、主に2つの原理によって決定される。1つは、体内時計のタイミングであり、眠気が強まる周期というものがある。もう1つは、睡眠負債がどれくらいあるかである。睡眠負債は、最後に目覚めてからどれくらいの時間が経過したかということと、最近、どれくらい寝不足が続いていたかによって決まる。この2つの原理を、よく頭に入れておく必要がある。

(写真:iStock.com/sam thomas)

朝早くから起きて活動し続けていれば、眠気も早く襲ってくる。ところが、とても眠かった時間帯に寝そびれてしまうと、あれほど強かった眠気が消えてしまって、今度は眠れない。そういう経験を誰もがしているだろうが、それには体内時計のタイミングが関与している。

体内時計は、眠気と覚醒のリズムを強力に支配しているので、この周期に逆らおうとしても、なかなかうまくいかない。この周期のことを、よく理解して付き合う必要がある。

体内時計の周期を理解するうえで重要なことは、体内時計には長い針、短い針、中くらいの針の3本の針があるということだ。

体内時計は、3つの周期で動いている。その3つの周期を知って、その波をうまく利用することがポイントである。

 

2つ目の、眠気は最後に目覚めてからの時間によって決まるという原理を念頭に置いておくことも、よい眠りをとるためには重要である。たとえば、夕方頃眠ってしまったり、夕食後眠ってしまうというのは、夜の寝つきを悪くし、眠りを浅くしてしまう。

眠りたいだけ眠ると、なぜ夜型になるのか

体内時計の3つの周期のうち、もっともよく知られているのが、24時間より少し長い周期で1回りするサーカディアン・リズム(概日リズム)である。

これは、1日の眠りの周期に関係している。夜の時間帯になると眠気が強まり、昼間の時間帯になると覚醒するというリズムである。つまり夜型とか昼型といった問題は、このサーカディアン・リズムのずれによって起きる。

サーカディアン・リズムは24時間より少し長いため、強制力を働かせずに、眠りたいだけ眠るという生活をしていると、だんだんずれが起きてくる。起きるのが遅くなり、さらに眠るのが遅くなり、を繰り返しているうちに、夕方にならないと起きられないということにもなる。

(写真:iStock.com/nevodka)

2番目のリズムは、約半日周期で眠気のピークがくるサーカセメディアン・リズムである。夜半過ぎと、昼過ぎに眠気が強まるのは、この半日周期の波による。睡眠学の権威ウィリアム・デメントによると、昼過ぎの眠気は、一般に信じられているように食事をして満腹になるためではなく、体内時計のリズムのためだという。居眠り運転は、この2つの時間帯に起きやすい。

朝7時に起きた場合、朝9時頃と、夜9時頃に、覚醒度がもっとも上がる時間帯が来る。昼間眠気があったのに、夜のゴールデンアワーの頃になると、目が冴えてくるということが起きるが、第2の覚醒のピークがやってくるためである。

夜型の人では、この覚醒のピークが後ろにずれているので、夜半までに眠ろうとしてもなかなか眠れず、ムダな努力をしてしまう。もっとも目が冴える時間に、体内時計のリズムに逆らって眠ろうとするようなものだからである。

 

さらにもう1つ、もっと短い周期で眠気が変動するリズムがある。約1時間半という短い周期の波で、ウルトラディアン・リズム(超日リズム)と呼ばれる。同じ夜のうちでも、眠気が強まったり、弱まったりするのは、ウルトラディアン・リズムによるし、眠りが深くなったり、浅くなったりするのも、このリズムがつくり出す波である。

1時間半という短い周期で変化するということは、今眠くてたまらなくても、40分か50分すると、眠気が薄らいでしまうということだ。逆に、今目が爛々(らんらん)と輝いていても、4、50分すると、眠気が強まるタイミングが来るということでもある。

子どもでは、こうした波の影響が顕著にみられる。眠くなる時間より、少し早いだけで、元気いっぱいに騒いでいる。とても眠りそうにないなと思っていると、急に眠気が襲ってきて、パタンと眠り込んでしまう。この波を捉え損なうと大変なことになる。タイミングが少し早いだけで、全然寝てくれないし、少しタイミングが遅れると、急に眠気がやってきて、食事もせずに眠ってしまう。

このことは、基本的には大人にも当てはまる。眠気が強まる局面で、床に就くようにすれば、よりスムーズに入眠できるが、それを外すと、次の周期まで眠気は来ない。この原理をしっかり頭に入れて対処することが、大いに役立つのである。実践的な方法については、後の章で述べることにしよう。

関連書籍

岡田尊司『人はなぜ眠れないのか』

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人はなぜ眠れないのか

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岡田尊司

1960年、香川県生まれ。精神科医、医学博士。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。同大学院高次脳科学講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医 学教室にて研究に従事。現在、京都医療少年院勤務、山形大学客員教授。パーソナリティ障害治療の最前線に立ち、臨床医として若者の心の危機に向かい合う。 

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