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人はなぜ眠れないのか

2021.07.11 公開 ポスト

眠れないときは眠らなくてOK!目を閉じるだけで脳は休息状態に岡田尊司

厚生労働省の2018年の調査では「睡眠で休養が十分にとれていない」人の割合は21.7%。日本人の5人に1人が睡眠に悩みを抱えています。自身も不眠症に長く悩まされた経験を持つ精神科医の岡田尊司さんが、睡眠のメカニズムや不眠症克服の極意を解説する幻冬舎新書『人はなぜ眠れないのか』より、睡眠の質を上げるための基礎知識やTipsをご紹介します。

目を閉じて横になるだけでも休息できる

不眠症の人では、眠らねばならないという気持ちが強すぎて、そのことが緊張を生み、睡眠のために必要なリラックスを妨げている。明日活動するために眠らなければならないという焦燥感ばかりが強く、夜のこの休息の時間を楽しむという心の余裕はない。眠れないことは、時間の浪費であるばかりか、翌日の活動に支障を来し、体調にも響くと、損失やマイナスのことにばかり考えが結びついてしまう

(写真:iStock.com/fizkes)

すぐ眠りに落ちて、朝までぐっすりという眠りが可能だとしたら、それは、かなり睡眠負債がたまっているからに他ならない。たっぷり眠っているうえに、完璧な眠りを欲して、睡眠薬に頼るという矛盾した事態も起きてしまう。不眠症の人の多くは、完璧な睡眠というものを求めすぎているのである。それは、自然な眠りではなく、むしろ不自然な、人工的な眠りになってしまう。

ただし、うつ病や統合失調症のような疾患があって、多めの睡眠を必要としているという場合は、話は別である。その場合は、薬の助けを借りてでも、十分睡眠をとることが、神経細胞の回復や損傷の予防に不可欠である。

 

そうでない多くの通常の不眠症では、理想的な眠りに対する過剰な欲求と、その欲求が妨げられるのではないかという恐れのほうに、むしろ苦しみの原因がある。眠れないこと自体よりも、そちらのほうが問題なのである。

つまり、睡眠に対する偏った囚われ、言い換えると認知の歪みを修正しなければならない。固定観念の枠組み自体を変え、新しい視点から事態を捉え直すリフレーミングという作業を行う必要があるわけだ。これは、認知行動療法と呼ばれるもので、自分で行うことも可能だ。

 

囚われの根底には、眠れないことは悪いことだという信念がある。そこから、さらに、眠れないことによって生じるダメージを次々と考えて、余計にあせってしまうという悪循環に陥り、さらにストレスを感じる。

そうではなく、眠れなくても、よいこともあるので、別にかまわないし、体が眠りを必要とするときが来たら、起きていたくても眠ってしまうと、受け止め方を切り替える必要がある。ここまで述べてきたことも、ある意味、睡眠についての囚われをリフレーミングするためのものでもある。読者の中では、睡眠に対する考え方が、少しずつ変わってきているはずだ。自分の状態を客観的にみることで、自分の囚われの正体に気づいた人もいるだろう。

睡眠不足は、長期間続けば有害であるにしても、むしろほどよい睡眠負債は、よく眠るためには必要だということもみてきたし、ごく短い睡眠しかとれなくても、休養をとることで健康を維持することは可能であり、常に完璧な睡眠をとる必要はまったくないのである。短期間であれば、睡眠時間が短くなることは、むしろプラスの効果があることもみてきた。ストレス・ホルモンが高まることは、脳や体の活性を高め、パフォーマンスを向上させる面もあるのだ。

眠れなくても、大丈夫だし、むしろよいこともある」と、常々自分に言い聞かせることが大事なのである。

(写真:iStock.com/fizkes)

それに関して重要なことの1つは、眠れなくても、目を閉じて横になっているだけで、よい休息になるということである。

たとえば、横になっているだけで、肝臓や腎臓への血流は数十パーセント増え、老廃物の代謝や排出が進む目を閉じていることで、脳からα波が出て、休息状態になる。40年も眠れていないキューバ人の男性が、元気で暮らしていられるのは、彼が目を閉じ、横になって休息をとっているからだ。一晩か二晩眠れなくても、ちゃんと休息をとっていれば、どうということはないのだ。

このことを思い出し、のんびり休息するつもりで横になっていればいい。バカンス中のヨーロッパ人たちは、浜辺やプールサイドの寝椅子で、何時間も横になって過ごすが、あれと同じように、休息していることを楽しむことだ。

*   *   *

本連載は今回で最終回。睡眠の質を上げたい方は幻冬舎新書『人はなぜ眠れないのか』をご覧ください。

関連書籍

岡田尊司『人はなぜ眠れないのか』

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人はなぜ眠れないのか

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岡田尊司

1960年、香川県生まれ。精神科医、医学博士。東京大学哲学科中退。京都大学医学部卒。同大学院高次脳科学講座神経生物学教室、脳病態生理学講座精神医 学教室にて研究に従事。現在、京都医療少年院勤務、山形大学客員教授。パーソナリティ障害治療の最前線に立ち、臨床医として若者の心の危機に向かい合う。 

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