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キリ番踏んだら私のターン

2021.04.10 更新 ツイート

飲み会という場が失われた今、私たちを襲うものとは…? 長井短

すっかり春めいて参りましたが、皆さんお元気ですか~? 今年もお花見はお預けみたいで、悲しい気持ちでいっぱいだけど、でもほんの少しほっとしている自分がいます。なぜかって……? 

酒癖が悪化しているからです!!!!

思えば若い頃は、どれだけ泥酔しても「宴もたけなわでは~」の号令で家に帰れたし、帰ればそこには誰もいないから、痴態がそれ以上広がることはなかった。なのに……今は私を守っていたその二つの縛りが二つともないのです!

 

あ~マジ無理~これ以上失敗を重ねないために、今回は私の失敗と反省文、そして名誉挽回計画をお話しします……

酔っぱらい方のクセって、あるよね

若い頃、友達が私の酔っ払い方に名前をつけてくれたことがある。「スーパー感謝タイム」と名付けられたその酔い方は、アルコールが一定量を超えると「本当に……友達になってくれてありがとう……」って感謝を言うだけの肉塊になるっていうもので、それなりにダルいって定評はあったけど、人を傷つける類のものではなかった、と思う。「こんな沢山の人間の中で、出会って、仲良くしてくれてありがとう……」夜空の下でそう声を張り上げていた私はヤンデレかな? って感じだけど、酔って怒っちゃったり、泣いちゃったりではなかった。

自他共に認めるご機嫌な酔っ払いだったはずの私が壊れ始めたのは、コロナで飲み会が激減した頃。元来出無精の私は、自宅から出ないのも苦じゃないし、全然我慢しますよ~って余裕をぶっこいていたのだけど、だんだん自分の機嫌を自分で取れなくなってきた。

コロナが私にもたらしたもの

夫に叱られたのは、家で大量にアルコールをキメた翌朝だった。目が覚めた瞬間に、得体の知れない羞恥心が体を襲う。何も覚えていないけど、何かすごくバツが悪い。頭が痛い。リビングには買った覚えのない未開封のサラミと大量の氷結、開けっ放しの赤ワインが置いてあり、どことなく臭い。臭いの根源を辿っていくと、玄関に近付くほどイカ臭かった。当然だ。そこには封の切られたあたりめが落ちてるんだもの~。夫が起きてくるまでに、なんとしてもこのセルフ謎解きをクリアしたい。私は……一体昨日何をやらかした……? 

考え込んでいるうちに容赦無く夫は起きてきて、私は瞬時に「全部覚えているフリ」を発動する。「昨日はごめんね」と謝ると「少し話したほうがいい」と言われて血の気が引いた。マジでやらかしたか? 恐る恐る夫の隣に腰掛けると、予想していない方向からの指導が始まった。

「最近、酔うと攻撃的になってるよ。今まではそんなことなかったのに、荒れちゃうっていうのは、何か本当に辛いことがあったりするから?」

「いや、ないと思います」

「そうなると、傲慢になってるんじゃない?

ごごご傲慢……。言われて一番恥ずかしい言葉かもしれない。

「酔って気が大きくなっちゃったり、攻撃的になるのって、あんま良くないよ。今は身内にしかそうならないかもしれないけど、このままいくと、友達とか後輩にもやるようになって、人が離れていくと思う。飲み方もだし、なんでそうなるかとかも、一回ちゃんと考えたほうがいいんじゃない?」

知り合いのフードトラックが近所に回ってきたから食べにいった。真っ黒のハンバーガーは炭でできてるらしくって、めちゃくちゃ旨いよ。

吐き気がするのは二日酔いと自己嫌悪どちらのせいだろう。傲慢な酔っ払いにだけはなりたくなかったのに。穴があったら入りたい。恥ずかしすぎてこの日私は背筋を伸ばすことができず、中腰で家の中を歩き回った。恥ずかしすぎて生きているのが辛い→酒が飲みたいっていう最悪の輪廻に突入しそうになったけど、どうにか踏ん張って、私は、どうして私が荒れちゃうのかを真剣に考え始める。そこで見つかったのは「飲み会が足りない」っていうやばい結論だったんですけど、まぁ聞いてください。

飲み会が恋しい理由

飲み会が大好きだ。それに理由なんてないと思っていたけど、実際は逆で、理由がありすぎる。

まず第一に、友達に会えるのが嬉しい。それに、酔っ払って大騒ぎするのも楽しい。でも、そういう爆発みたいな多幸感とは別の理由もあるはずで、私にとってのそれは「労い」だったんだと思う。

時々「飲み会で仕事の話になるの嫌だ」っていう意見も聞くけれど、私はそんなに嫌じゃなくて、旧友が今どんなことを頑張っているのかとか、同業の仲間に起きた良いこと悪いことを聞くのが好きだ。どんなエピソードだとしても、全く理解が及ばない専門的な話だとしても、頑張ってるんだなぁって感じる。だから、感じた分だけ相手を労う。私の大好きな友達のみんなは、同じことを私にしてくれる。「こんな嬉しいことがあって!」にも「こんな酷い目にあって!」にも、同じだけ「凄いね、頑張ってるね」って言ってくれるのだ。

久しぶりにゲーセンで遊んだ。ジョジョの格ゲーやったら、全クリしてないのにランキング一位になって、ポルナレフの人気が心配になった。

スーパー感謝タイムに突入すると、ただの褒め合いみたいになって、私もみんなも謙遜するけど、本音はやっぱり素直に嬉しかった。私が辛かったのは、たぶん、この甘やかしあいの欠落だ。今日どれだけ頑張っても、明日も頑張らなきゃいけなくて、マジで人生って頑張り地獄。でもその地獄をなんとか生き抜いてこれてたのは、時々発生する甘やかしあいのおかげだった。「うちら偉いよね~」って戯れあうことで、どうにかやってこれたのだ。

でも、今はどうよ?

戯れあえないけど頑張り続ける場は維持されてて、完全に栄養バランスが狂ってる。頑張って頑張って、2020年が終わったけど、甘やかしてはもらえなくて、どうしようもないから私は、酔って自分を肯定して、傲慢にも夫に甘やかしを強制した。「私すごくない?」とか「私偉すぎ」とか言ったんだろう。酷い言葉で誰かを罵ったりもしたんだと思う。

あぁ~マジでダサい。恥ずかしい。

でも、もう原因は分かったから。私より頑張っている人がいるとかっていうことは関係なくて、とにかく私は頑張ると疲れちゃって誰かと甘やかしあいたい超赤ちゃんお姉さんなのだ。それを、素面でも認める必要がある。大人ぶってる場合じゃない。だから、ここで声を大にして言うね。

褒められたいでーす!!!!

私たち、もっと褒められて良くない? それって何も変じゃなくない? 我慢するから良くないのだ。お給料と一緒に褒め言葉も頂きたいです!

ここで踏みとどまれてよかった。友達とか知り合い相手に褒めを強制し始めたらいよいよやばい。まだ根の浅いうちに、カブごと鷲掴みにして私を叱ってくれた夫に感謝しかない。だから、絶対直します。寂しいなら、疲れたなら、甘えたいならそう言おう。満たされなさから傲慢になっていた私にさよならします。

*  *  *

次回は5月10日公開予定です。

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キリ番踏んだら私のターン

相手にとって都合よく「大人」にされたり「子供」にされたりする、平成生まれでビミョーなお年頃のリアルを描くエッセイ。「ゆとり世代扱いづらい」って思っている年上世代も、「おばさん何言ってんの?」って世代も、刮目して読んでくれ!

※「キリ番」とは「キリのいい番号」のこと。ホームページの訪問者数をカウントする数が「1000」や「2222」など、キリのいい数字になった人はなにかコメントをするなどリアクションをしなければならないことが多かった(ex.「キリ番踏み逃げ禁止」)。いにしえのインターネット儀式が2000年くらいにはあったのである。

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長井短

1993年9月27日生まれ、A型、東京都出身。

ニート、モデル、女優。

恋愛コラムメディア「AM」にて「長井短の内緒にしといて」を連載中。

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