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アルテイシアの熟女入門

2021.04.01 更新 ツイート

JJがやらかし反省会をする理由 アルテイシア

「あなたたちの中で罪を犯したことのない者がこの女に石を投げなさい」

イエスにそう言われたら、私は「すみませんでした!!」と石板の上に土下座する。

フェミニズムのコラムを書く45歳の我も、過去にさんざんやらかしてきた。その反省を忘れないために、脳内でやらかし反省会をしている。

JJ(熟女)の忘却力を発揮して、記憶がどんどん薄れているからだ。

 

たとえば、20代の私は「イケメンなのに東大なんてすごいね!」とか平気で言っていた。

現在は「人の見た目に言及しない」とJJべからず帖に刻んでいるが、当時はルッキズムという言葉すら知らなかった。

また、中学時代はとんねるずの保毛尾田保毛男のモノマネをして、同級生と笑っていた。

当時は「この教室の中にもセクシャリティに悩む人がいるかもしれない」と想像できるだけの知識がなかった。それで無自覚に差別する側になっていたことを反省している。

振り返ると、私のやらかしは「無知ゆえの過ち」だったと思う。

会社員時代に育休中の先輩の家に行った時、彼女が赤ちゃんのおむつを替えながら「見てこのツルツルのお尻! 触ってみる?」と聞いてきた。20代の私は素直に触って「おお~ツルツル!」と感動していた。

そんな己のケツを蹴とばして「これを読め!」と『おうち性教育はじめました』を渡したい。

本書では「おしりを触ってキャッキャふざけるのも、親子の楽しいコミュニケーションかなって……」という親に対して、村瀬幸浩先生が「プライベートパーツを触ったり見たりして、ふざけるのはよくないね。コミュニケーションなら他の方法でとってほしい」とキッパリ答えている。

「これは親のほうが意識して線引きしてあげないと、プライベートパーツを勝手に見たり触るのが『好き』の表現だと教えてしまうことになりかねないんだよ」

「プライベートパーツへの不本意で理不尽な侵入や攻撃は、想像以上に深刻な屈辱感やコンプレックスを与えるんだ」

「その証拠に、性的ないじめは自殺につながるケースも少なくない。それだけ深い傷を与えることにもなるんだ」

この言葉に全力で膝パーカッションする我である。

知人女性は小学生の時にスカートめくりをされたトラウマで、スカートを履けなくなったそうだ。

また、教育関係の友人が話していた。「ズボンおろしをされるのがイヤで、小学校に行けなくなった男の子がいるのよ。おろした男の子に聞くと『周りが笑ってくれるから冗談のつもりでやった』と言ってた」

その男の子は「冗談でも絶対やっちゃダメ」と教わる機会がなかったのだろう。かくいう私も20代の頃は、プライベートパーツという言葉すら知らなかった。

まともなジェンダー教育や性教育を受けられないまま、世間やメディアから偏見や差別を刷り込まれて育つ。私を含めて、ほとんどの日本人がそうなんじゃないか。

知識を学ぶ機会がなかったことは、本人の責任じゃない。だからといって「俺は悪くない!」と開き直る気はさらさらない。

過去のやらかしを思うと恥ずかしくて、アンジェロみたいに石化したくなる。でも思考停止して沈黙するわけにはいかない。

過ちを反省しているからこそ声を上げなきゃと思うし、「アップデートを怠るべからず」とJJべからず帖に刻んでいる。
そしてこつこつ本を読んだりして勉強している。JJは小さい字が読めなくてつらい。

世の中に一度も間違ったことがない人なんていないだろう。間違ったことがない人しかジェンダーやフェミニズムを語ってはいけないとなると、誰も語れなくなる。

自分も含めてアップデートの途中だから、みんなでアップデートしていって、社会全体が変わるといいなと思う。
そのためには、自分の間違いを認めて反省すること。人の意見に耳を傾け、真摯に学ぶ姿勢が必要だろう。

一方、失言が炎上しても「俺は間違ってない!」と開き直り「こんなに叩かれていじめだ!」と被害者ぶる人たちがいる。なぜ批判の声が上がったのかを考えないから、同じような炎上を繰り返すのだ。

また「差別する意図はなかった」と言い訳しつつ「誤解を招く発言をフンガフンガ」と謝罪する人たちもいるが、謝罪よりも勉強してくれと言いたい。差別についてちゃんと学ばないから、同じような(略)

「俺は間違ってない!」が通用するのは、権力をもつ立場だからだ。そういう人は、周りに注意してくれる人がいないんじゃないか。
立場が下の者が忖度して意見を言わないか、「どうせ言っても変わらない」と諦めているのだろう。

そうして裸の王様になった彼らは「今はすぐに叩かれて生きづらい、窮屈な世の中だ」とボヤく。

そんな彼らに「叩いているのはどっちだ?」と聞きたい。昔は差別やハラスメントをされた側が、我慢するしかなかったのだ。

批判しても直接殴られないネットが普及したお陰で、被害者が声を上げられるようになった。生きづらさを強いられてきた側にとっては、今の方がマシな世の中である。

フジテレビ「ワイドナショー」で武田鉄矢が「セクハラは必要悪」と加害者視点で語っていたが、「昔は気軽にお尻に触られてよかったわ、昭和サイコー!」と語る女性は見たことがない。

テレビやメディアは「元号が令和になったことに気づいてないのかな?」みたいなおじさんたちが未だに権力を持っている。

私が小学生の時に、とんねるずの「一気!」という曲が流行った。「飲めぬ下戸にはヤキ入れて 付き合い程度じゃ許さずに 一気! 一気!」という歌詞を書いたのはご存じ秋元康だ。

今この曲がテレビで流れることはないだろう。若者が急性アルコール中毒で亡くなる事件が報道されて、「お酒の強要は絶対ダメ」が社会的な常識になったから。

それについて「一気がNGなんて窮屈な世の中になった」とボヤくおじさんは見たことがない。

一方、性差別や性暴力については「いちいち騒がなくても」「過剰反応」「面倒くさい女だなあ」とボヤく。それは性差別や性暴力なんて大した問題じゃない、と軽視しているからだ。

性犯罪の加害者の95%以上が男性、被害者の90%以上が女性である。女性に比べて性暴力に遭いづらいことも男性のもつ特権だが、人は自分の特権には気づきにくい。

また性暴力をギャグやエロネタ扱いしてOKという文化が染みついているため、感覚が麻痺しているのだろう。そういう人には「学び落とし」が必要だが、必要な人ほど頑なに学ぼうとしない。

TBS「グッとラック!」で立川志らくが「スカートめくりでゲラゲラ笑ったってそれで家族が明るければ、そこの家庭は幸せなんですよ」と語っていた。

何度炎上しても反省しない、その姿勢がすごい(すごい)

褒めてない(褒めてない)

森喜朗にしてもそうだが、絶対反省しないマンに共通するのは「男らしさ」の呪いだと思う。

男はくよくよするな、過去を振り返るな、前だけ見て進め!! 系のマッチョイズムが染みついているため、自分と向き合って反省することができない。だから永遠に変われない。

太田啓子さん著『これからの男の子たちへ』を特集した際、志らくが「全部読んだわけじゃないけど」と言っていたが、まずは読めよ。字も小さくないから中年にも優しいよ。

「男だから泣くんじゃないってこれ否定されたらね、やり方なんですよね」

「女の子は女の子らしく、かわいらしくって一つも悪いことだとは思わない」

「女性は女性らしく、おしとやかに。欧米に行ったら違うかもしれないけれども、日本人は日本人としての良さがたくさんある」

……など、志らくはトンチキ発言を連発していたが、はなからジェンダーを理解する気がないのだろう。

「性別による差別をなくそう」「みんなそれぞれ違う人間として見よう」「自分らしく生きられる社会にしよう」

そんなシンプルな話に拒否感を示すのは、彼が「男は強くあるべき」「泣いちゃダメだ」と言い聞かせて生きてきたからじゃないか。
だからジェンダーと聞くと反射的に、自分の人生を否定されたように感じるのかもしれない。

でもそれは勘違いで、ジェンダー平等は個人の生き方を否定するものじゃない。あなたがどんな生き方をしようが自由だけど、それを「男らしさ」「女らしさ」として他人に押しつけるな、という話なのだ。

まあ志らくも「ジェンダー平等は大事やで」と文珍に言われたら、聞く耳を持つのだろう。

なぜ文珍かというと、『さんまの名探偵』で文珍が殺されていたからだ。(※私が小学生の時にヒットしたファミコンのゲーム)

つまり私はそれぐらいしか落語の知識がないわけだが、「なぜ落語家は座布団に正座して話すんだ、ヨギボーに寝転んでもいいじゃないか、そんなの窮屈だ!」なんてトンチキなコメントはしない。

もし落語について聞かれたら「私は落語のことわからないので教えてください」とお願いする。まともな知識がないのに適当な発言をするのは失礼だし、無責任だと思うから。

私がヨギボー云々言っても己の無知が露呈するだけだが、ジェンダー差別、性暴力、虐待、DV等は現実に苦しむ被害者がいて、人の生死に関わる問題である。

それについて、まともな知識のない人間がメディアで無責任な発言をすると、差別の強化や二次加害につながる恐れがある。

以前フジテレビ「バイキング」で松嶋尚美が「もし自分のところに(児童相談所が)来るとなったら、引っ越しする可能性はあります」「親に暴行されてキーッとなった子が外に飛び出して暴力振るったり、カツアゲしたりするかもしれない」とコメントした。

この偏見に満ちた発言は虐待被害者に対する深刻な二次加害であり、「無知だから」で済まされる話ではない。

なぜこんなものを電波で流していいと思うのか? 差別解消を目指すべきメディアが、なぜここまで差別に鈍感なのか?

とプーチン顔でこの原稿を書いていたら、日本テレビ「スッキリ」のアイヌ差別表現があり、テレビ朝日「報道ステーション」のCM動画が炎上した。

もうプーチン(怒)を通り越してハシビロコウ顔(虚無)にナッチャウヨ。とアルシンド、じゃなくてアルテイシアは頭を抱えて、こちらの記事を書いた。

『報ステCM炎上……同じ過ちを繰り返す「メディアの偉い人」の首根っこをつかんで伝えたいこと』より

『報ステの偉い人よ、聞いてくれ。あなたは「視聴者が不快な思いをしたから」ではなく「自分が差別的なCMにゴーを出したから」批判されたのだと認めるべきだ。そのうえで徹底的に検証して再発防止プランを考えて、それを視聴者に報告するべきだ。

でも全然しなさそうだから、ワイがぽくぽく考えてみた(優しい)』

報ステの公式は「意図が伝わらず」「不快な思いをされた方が」というテンプレ謝罪文を出して、動画を削除していた。

「自分は悪くないけど、そっちが誤解したなら形だけは謝りますよ」というヘルジャパンのお家芸や、「孫娘に叱られちゃいましたよテヘ」みたいな反省ポーズを見せられると「ナメるのもいい加減にしろ!!」と生霊を飛ばしたくなる。俺の生霊はよく飛ぶぜ。

一方、本気で反省して変わろうとする人は、応援したいなと思う。なぜなら自分も過去にさんざんやらかしてきたから。

それに「ジェンダーやフェミニズムって難しそう」「ややこしそうだし近寄らないでおこう」と思われると、理解が広がらないから。

ジェンダーやフェミニズムについて学びたい人には、わかりやすく伝えたい。なんなら志らくにも私が教えてあげるよ、たぶん文珍よりは詳しいから。

文珍に思いをはせながら、夫に「なんでヤスは文珍を殺したんやっけ?」と聞くと「ヤスはポートピア連続殺人事件だぞ」と返ってきた。やっぱり記憶の混濁がヤバい。

ガチで記憶にございません状態になる前に、やらかし反省会をしたいと思う。そしていくつになっても反省できる、若い人に「教えて」と素直に言える、そういうものにわたしはなりたい。

関連書籍

アルテイシア『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』

生涯のパートナーを求めて七転八倒しオタク格闘家と友情結婚。これで落ち着くかと思いきや、母の変死、父の自殺、弟の失踪、借金騒動、子宮摘出と波乱だらけ。でも「オナラのできない家は滅びる!」と叫ぶ変人だけどタフで優しい夫のおかげで毒親の呪いから脱出。楽しく生きられるようになった著者による不謹慎だけど大爆笑の人生賛歌エッセイ。

アルテイシア『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった アルテイシアの熟女入門』

加齢最高!大人気連載が1冊になりました。若さを失うのは確かに寂しい。でも断然生きやすくなるのがJJ(=熟女)というお年頃!おしゃれ、セックス、趣味、仕事等にまつわるゆるくて愉快な熟女ライフがぎっしり。一方、女の人生をハードモードにする男尊女卑や容姿差別を笑いと共にぶった斬る。「年を取るのが楽しみになった」「読むと元気になれる」爆笑エンパワメントエッセイ集。

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アルテイシアの熟女入門

人生いろいろ、四十路もいろいろ。大人気恋愛コラムニスト・アルテイシアが自身の熟女ライフをぶっちゃけトークいたします!

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アルテイシア

神戸生まれ。現在の夫であるオタク格闘家との出会いから結婚までを綴った『59番目のプロポーズ』で作家デビュー。 同作は話題となり英国『TIME』など海外メディアでも特集され、TVドラマ化・漫画化もされた。 著書に『続59番目のプロポーズ』『恋愛格闘家』『もろだしガールズトーク』『草食系男子に恋すれば』『モタク』『オクテ男子のための恋愛ゼミナール』『オクテ男子愛され講座』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』など。最新作は『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』がある。 ペンネームはガンダムの登場人物「セイラ・マス」の本名に由来。好きな言葉は「人としての仁義」。

twitter : @artesia59

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