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2020.12.13 更新 ツイート

言語と人間の不思議さをめぐる心やさしいエッセイマンガ じゃんぽ〜る西『フランス語っぽい日々』 中条省平

こんにちは。

幻冬舎新書で『世界一簡単なフランス語の本』を出している中条省平です。

 

このコーナーでは面白いマンガの新刊を紹介するのが仕事ですが、本職は大学の教師で、もう30年以上もフランス語とフランス文学を教えています。

つまり、フランス語を生涯の仕事にしているのですが、妻は日本人です。フランス人女性と結婚することなど考えられませんし、考えたこともありません。

ところが、今回このコーナーでご紹介する『フランス語っぽい日々』(白水社)を描いたマンガ家のじゃんぽ~る西さんは、フランス人女性のカリンさんと結婚しています。

この『フランス語っぽい日々』も、西さんのマンガとカリンさんのエッセーからなるご夫婦の共同の著作です。

で、何がすごいかというと、西さんの「じゃんぽ~る」という名前は、もちろんペンネームで、日仏のハーフなんかでもありません(たぶん)。この西さんが、フランス人女性と結婚していながら、ほとんどフランス語ができず、日本の学校で習う中1の英語レベルのフランス語ができるようになりたいと熱望している。そのことがすごいのです。

フランス人女性と結婚していると、フランス語ペラペ~ラだろうなと当方などは勝手に思いこんでしまうのですが、西さんはフランス語が本当にできません。

一念発起して、フランス語を無料でしゃべってくれる奥さんがいるにもかかわらず、週1回80分の10回コース、マンツーマンの授業に15万円も払って通ったのです。

そして、パリに行き、知り合いのフランス人に「フランス語上達したね」といわれて、「俺の仏語は中1になったんだ!」と感動しています。こちらもなんだか感動してしまいます、その純なる意欲と、できなさ加減にも。

西さんとカリンさんのあいだには、ふたりの子供(ともに男児)がいます。

それで、環境と父親は日本語ですが、母親はフランス語なので、当然バイリンガルとして成長するわけです。その過程がこのマンガには記録されていて、これが本当に面白い。

私たちは、日本語ができることを当然だと思い、その習得過程などたいして気にしないのですが、日本語とフランス語を同時に習得しなければならないバイリンガルの子供たちはじつに複雑な言語生活を送り、その言語習得の様相もきわめて個人的な差異に彩られてます。下手をすれば日本語もフランス語も未熟なものになりかねない危険をはらんでいるのです。

でも、西さんの子供たちはそんな危機を軽々とユーモラスに乗りこえているように見えます。このマンガを読んでいると、外国語コンプレックスなど忘れて、言葉って面白いな、人間って面白いな、と素直に思えてきます。言葉をめぐるエッセーマンガですが、人間の不思議さについての心やさしい省察録でもあるのです。

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中条省平

1954年神奈川県生まれ。学習院大学フランス語圏文化学科教授。東大大学院博士課程修了。パリ大学文学博士。著書『中条省平は二度死ぬ!』『文章読本』など。翻訳書最新刊はロブ=グリエ『消しゴム』。

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