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ヘイケイ日記~女たちのカウントダウン

2020.10.15 更新 ツイート

若くない女の性欲は嗤われる 花房観音

前回、50歳からの性欲の行方について書いたが、ちょうど面白い本を読んだ。

日本史エッセイスト・大塚ひかりさんの「くそじじいとくそばばあの日本史」は、パワフルなキーワードとして「くそ」という言葉を使い、日本史に登場する老いた者たちの活躍を紹介している。

その中で、改めてすごいなと思ったのが、一休と小林一茶だ。

 

一休さんはセックスが好き好き好き好き

一休さんは、私が子どもの頃はアニメの可愛い「とんちの一休さん」しか知らなかったが、大人になるにつれ、実在の人物、しかも天皇の息子という血筋なのに、そのあまりにも破天荒な生き方に度肝を抜かれた。

一休さんは70歳を過ぎてから、盲目の森女という女と仲良くなり、そのセックスを赤裸々に歌で残している。美しい言葉を使っているが、かなり過激な内容だ。

それだけではなく、一休さんは男と交わったことも遊郭通いも隠さない。当時、お坊さんは建前として女犯、つまり女性とセックスすることは禁じられていたのだから、どれだけ大胆な人だったのかわかるだろう。

そして小林一茶だ。一茶は52歳で最初の結婚をしてから、結婚3回、子どもが4人生まれた。一茶はなんと、夜の営みの回数を日記に残していて、一晩3回、5回のときもあるという。

今の時代に一休と一茶がいれば、週刊現代や週刊ポストの「60歳からのセックス」特集にコメントを寄せていることだろう。

ただ、精力絶倫の男性の話などは、特に珍しくもないし、今の時代だって元気なおじいちゃんは結構いる。風俗やストリップだっておじいちゃんだらけだ。

問題は、女のほうだ。

女はいつまでセックスできるのか、相手はどこで見つけるのか。

「いい年をしてるくせに」と嗤われる女

この本の中にも少し紹介されているが、「源氏物語」に登場する源典侍という女性は、50代の仕事ができて教養もある女官だが、「いろごのみ」として知られている。

主人公の光源氏、友人の頭中将も源典侍とはセックスするが、物語の中で彼女は、「いい年をしてるくせに」と侮蔑、嘲笑のニュアンスで描かれている。

若くない女の性欲は、嗤われる。

平安時代だけではなく、今の時代だってそうだ。ババアの性欲気持ち悪い、ババアのセックス話なんて聞きたくないと、40代の私だとて散々言われた。

年を取っても終われない

確かに男に比べ、若くない女のセックス、性欲の話は生々しく感じてしまい、私も人に聞かされて戸惑うこともある。どこか受け入れがたいのは、「若くない女」が、自分の母親と重なるからなのか。母というイメージはセックスと切り離される。だから母親は恋愛するな、遊ぶななんて言われてしまう。

けれど現実には母親であろうとも若くなかろうとも、年を取って「はい終わり!」と、性欲は簡単に完結しない。たとえみっともない、恥ずかしいと言われようと、セックスしたい女は、たくさんいる。

前述した一休も一茶も、その元気さは称賛したいが、相手が当人よりもだいぶ若い女ばかりで、「結局、若い女しかセックスしちゃういけないの? 男はみんな若い女が好きなの? おばさんはどうすればいいの? 若くない女でセックスしたがる源典侍は嘲笑の存在だし、やっぱおばさんはあかんのか?」と、グレそうになっていたが、ちょっと待て。

改めて考えると、源典侍って、源氏物語に登場する女の中で、幸せ度は相当高いのではないか?

ガンガンやる

源氏物語に登場する光源氏の女たちだが、紫の上は幼い頃に、源氏の母の面影を残しているからと、無理やりやられてしまい妻になる。子どもはいないが美しく気遣いもできる紫の上は「完璧な妻」と評判も高いが、源氏が自分よりずっと若い女三宮を妻にすると、心が不安定になり病に苦しみ、出家して源氏の妻であることから逃れようとするのに許されない。その女三宮は、夫以外の男から強引に迫られ不義の子を宿し、若くで出家する。

源氏の最初の妻・葵の上は、源氏に手を出されたあげく冷たくされ生霊となった六条の御息所の嫉妬で亡くなるし、明石の君は自分は身分が低いからと日陰の身で嫉妬を抱え込みながらもじっと耐えて過ごす。源氏の継母である藤壺の宮は源氏に迫られ関係を持ち子どもを産み、罪の意識に苛まれこれまた出家する。

源氏はイケメンな上に財力もあるから、好意を抱かれ関係を持った後は、心が他の女に移っても生活の面倒は見てくれて安泰ではある。

でもそれでいいのか女たちよと、源氏物語を読むと、たまにもやもやする。

その点、源典侍は、自分から男を誘い、ガンガンやる。

今でいうと「ヤリマン」なのかもしれない。

おばさんのヤリマン、いや、当時の感覚だと、おばあさんのヤリマンだ。

しかも、セックスが、男が好きで、50歳を過ぎても若いイケメンたちと一夜の遊びをして楽しむ彼女には、ずっと思い続けてくれる修理大夫という男もいるのだ。

……あれ、源典侍がやっぱり一番幸せな女ではないか??

卑屈なおばさんのほうがみっともない

儚く美しく、男が他の女と遊ぶのにも耐える良妻、そして源氏の欲望に従い若くで亡くなった女たちは、物語の中で美しく描かれる。

けれど、笑われ、バカにされても、欲のままに男とセックスして長生きもした源典侍が一番人生を楽しんでいるのは、間違いない。

もうすぐ50歳になる私は、どうせまたあと何十年か生きるのならば、みっともないと笑われても、「私おばさんだから」と卑屈にもならず、ガンガンとセックスありきの人生を楽しむ源典侍を羨望する。

(有名すぎて食べたことなかった美々卯のうどん)
(伊丹空港にあった皮をむいた生のりんごの自動販売機)

関連書籍

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花房観音

2010年「花祀り」にて第一回団鬼六賞大賞を受賞しデビュー。京都を舞台にした圧倒的な官能世界が話題に。京都市在住。京都に暮らす女たちの生と性を描いた小説『女の庭』が話題に。その他著書に『偽りの森』『楽園』『情人』『色仏』『うかれ女島』など多数。

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