社会・教養
読み終えたときの安心感はどこから来たのだろうか。
この小説に描かれている人物たちはけっして穏当とはいえない。たとえば、不倫相手との間にできた子どもを別の男に認知させる未婚の母、愛する妻に対してストーカーまがいの行為をする夫、小料理屋を営む女性と定年を数年後に控えた女教師のカップルなどなど。江國香織さんが生みだす世界の人々らしいともいえるけれど、一筋縄ではいかない人生を送っている人たちが、さも当たり前のように日常に存在している姿は異様にも思える。
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