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裁判官のお言葉集シリーズ

2020.09.24 更新 ツイート

「もうやったらあかんで。がんばりや。」 長嶺超輝

裁判官は無味乾燥な判決文を読み上げるだけ…と思ったら大間違い。

人を裁くという重責を担っているからこそ、ときには厳しく温かく、人間として被告人に、被害者に、そして社会に語りかける場面も。

法廷での個性あふれる裁判官の肉声を集めた幻冬舎新書『裁判官の爆笑お言葉集』から、特に考えさせられる部分を抜粋しました。

*   *   *

そのとき、40センチの段差が埋まった

もうやったらあかんで。がんばりや。

窃盗の罪に問われた被告人に、執行猶予・保護観察つきの有罪判決を言い渡しての、閉廷後の出来事。被告人が退廷するときに、一段高い裁判官席から身を乗り出し、被告人の手を握りながら。

大阪地裁 杉田宗久裁判官
当時47歳 2003. 10. 29[閉廷後]

(写真:iStock.com/wutwhanfoto)

裁判官に励まされた本件の被告人は、その場に泣き崩れたといいます。育ち盛りの2人の子どもを持つ母親で、パートで働いてはいたものの、数年前に家出した夫の借金まで抱え込み、追いつめられた末に、スーパーで万引きを繰り返していました。

この杉田宗久判事、女性5人が被害に遭った強盗・強姦事件の判決公判において、「検察官の求刑は軽きに失する」として、求刑を2年上回る懲役14年を言い渡したことで有名です。最近も、ある酒気帯び無免許運転に「求刑超え判決」を下しておられます。

「求刑の8割」が、量刑相場として通用している司法業界。求刑を超えた厳しい結論を2回も出した裁判官は、日本広しといえど杉田判事ぐらいのものでしょう。

ある公判では、冒頭陳述(被告人のプロフィールや事件の背景などを語る手続き)で、被告人の前科や前歴の有無を記載しないように、あらかじめ検察官に指示したことでも知られます。「罪を犯した過去があること」と「本件を犯したかどうか」は、本質的には無関係ですからね。偏見や先入観を取りのぞいて、審理に正面から臨むという志に貫かれた、厳しさであり、優しさなのでしょう。

関連書籍

長嶺超輝『裁判官の人情お言葉集』

「困ったときには私に会いに来てもいい。そのときは裁判官としてできるだけのことをします」――公判中、氏名を黙秘し続けた窃盗犯に罰金刑を言いわたして。 情を交えず、客観的な証拠だけに基づいて判決を下すのが裁判官の仕事。 しかし彼らも人の子。 重い刑を言いわたす前には大いに迷うし、法律と世間の常識のギャップに悩むこともある。 葛藤を乗り越えて、自らの信条を賭して語りかけるとき、被告人の頑なな心が氷解しはじめる――。 ベストセラー『爆笑お言葉集』に続く涙のお言葉集。

長嶺超輝『裁判官の爆笑お言葉集』

「死刑はやむを得ないが、私としては、君には出来るだけ長く生きてもらいたい」(死刑判決言い渡しの後で)。 裁判官は無味乾燥な判決文を読み上げるだけ、と思っていたら大間違い。 ダジャレあり、ツッコミあり、説教あり。 スピーディーに一件でも多く判決を出すことが評価される世界で、六法全書を脇におき、出世も顧みず語り始める裁判官がいる。 本書は法廷での個性あふれる肉声を集めた本邦初の語録集。 これを読めば裁判員になるのも待ち遠しい!

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