生き方
地元の街の小さな町内会館の脇に、警備員が立ち物々しい雰囲気が漂っていた。隣の小さな神社の八重桜はまさに見頃を迎え、ぼんぼりのような花の房をいくつも下げた長閑な風景に、普段とは違う緊張感が入り込んでいた。その日の夜、帰り道にいつも吸い込まれるように立ち寄ってしまう飲み屋で、昼間の光景を店主に話すと、「『ツバキ文具店』のロケだよ」と物知り顔で返された。わたしが暮らす鎌倉を舞台にした小説がドラマ化されるという。興味をかきたてられて、すぐさま本屋に行って原作を手に取ったのだった。
ここから先は会員限定のコンテンツです
- 無料!
- 今すぐ会員登録して続きを読む
- 会員の方はログインして続きをお楽しみください ログイン
本の山の記事をもっと読む
本の山
- バックナンバー
-
- 北の大地を舞台にした熱気溢れる壮大なドラ...
- 「初心者目線」を保ち遭難者を発見する -...
- 「ものを書く」行為に突き動かされる理由ー...
- 大切なものを手放すことの難しさ -『よき...
- 各国の歴史的背景を学び、死刑の是非を自ら...
- 現実世界にも通じる奮闘を応援せずにいられ...
- 偽りの巡礼者 稀有な旅人の喜び -『天路...
- 面倒なことも楽しむことができるのが、人間...
- 言語が探検の道具となり、道を切り拓く -...
- 「使命を負った」アルピニスト との、愛...
- 物語を通して、悲劇を含め、歴史、現実世界...
- 本書がノンフィクションという事実が最大の...
- 若かりし頃に見た世界は、人生そのものと呼...
- 心のなかのとっておきの山を楽しもうとする...
- 「息子の思春期」でぐらりと揺れる母親の心...
- 自然環境に身をゆだねる─スノーボードを生...
- 自分と重ねてしまうコロナ禍の“妻”の日常...
- 他人の心のクオリアは自分の心にも抱えてい...
- 山で過ごした時間は永遠に積み重なっていく...
- 勝利のために、誰よりも「孤独な世界」に身...
- もっと見る