社会・教養
ある日、家に帰ってきたら机の上に『うつヌケ』というピンクの本が置いてあった。帯には「うつ病脱出コミック!!」との宣伝文句。わたしもたまに原因不明で落ち込むことはあるけれど、たいてい一晩眠れば翌朝にはすっきりした気分になるので、“うつ”というほどではない。しかし、これは夫からの「気をつけろ」というメッセージであろうか。自分が思っている以上に、気になる空気を醸しているのだろうかと不安になった。夫の帰宅後に買った理由を聞いてみたら、周囲にうつ病を患ったことがある人が意外に多いので本書に興味を持ったのだという。手塚治虫のパロディで名前を知られる著者の田中圭一は、前作『ペンと箸』で数々の有名漫画家の家族を取材し、本人のタッチと作風を真似てその貴重な家族の話を表現していた。なかなか表には出てこない漫画家のエピソードに、面白みを感じながらも、ジワッとこころが温まるストーリーが魅力的だった。だから読む前から、うつ病という治癒が難しいとされる病気でも、著者ならその原因や乗り越える方法などを解明できるかもしれないと期待が膨らんだ。
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