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悪夢障害

2020.08.27 更新 ツイート

「似たような悪夢」はうつ病の前兆かも 西多昌規

寝つきが悪い、眠れない、途中で目が覚める……睡眠に問題を抱える人は大勢いますが、中でも無視できないのが「悪夢」でしょう。悪夢によって睡眠が妨げられ、日常生活に支障が出るようになったら、それはもう立派な「病気」。その生涯有病率は、なんと7割以上ともいわれています。精神科医で睡眠医学の専門家として知られる西多昌規先生の『悪夢障害』は、そんな悪夢について徹底的に掘り下げた貴重な本。心当たりのある方は、ぜひこのためし読みをご覧になってみてください。

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その悪夢はうつ病の前兆かもしれない

不眠がうつ病発症の前兆であることは、日常の診療現場でも実感することである。スタンフォード大学などが行った、対象者が1万4915人にも上る大規模調査でも、本格的なうつ病になる前に、不眠が前触れとして出現する割合は41%にも上った。

(写真:iStock.com/frenky362)

やる気が出ない、気分が沈む、世の中から消えたくなるといったうつ病の主要な症状がはっきりしてくる前に、不眠に悩む場合がかなり多いということだ。

いいかえれば、不眠を放置しておくと、うつ病のリスクが高まるということでもあり、不眠はうつ病の黄信号といっても過言ではない。

不眠で医者にかかる人は、ただの不眠症ではなく、うつ病の可能性がかなり高いことは、わたしが講義で学生に教えていることでもある。

このように長く続く不眠はうつ病の前兆である可能性も十分あるから、甘く見ないほうがいい。過労による睡眠不足が続いて、うつ病になってしまう人が跡を絶たないことからも、睡眠の問題はうつ病と深く結びついている。

 

ここで問題は、悪夢をよく見ることが、うつ病の前兆かどうかという点である。

ヒントとなるデータとして、モーリス・オヘイヨンがまとめたものがある。ちなみにオヘイヨンは、うつ病の前触れとして不眠が多いことを明らかにした前述の調査をまとめた論文の筆頭筆者である。

オヘイヨンは、一般の5622人を対象に、悪夢についての電話インタビューを行った。その中で、不眠症に該当する人は1049人に上った。そしてこのうち、なんと18・3%が悪夢を見ていたのだ。しかも女性が男性の2倍にも上った。

また、悪夢を見ている人の34・8%は、うつ病に類似した症状を呈していた。悪夢を見ない人でうつっぽくなっている人の割合は15・3%であったので、悪夢を見る人はそれに比べて約2倍、うつ状態になりやすいということになる。

さらに、インタビューを受けた全員の内容をまとめると、悪夢と相関性の強かった症状は、「しょっちゅう途中で目が覚める」「寝つくまでの時間が非常に長い」であった。眠りの質の悪さと悪夢とは、切っても切れない関係にあることを示している。

「仕事で失敗する夢」ばかり見る男性の例

本項冒頭で述べた、不眠がうつ病の前兆であることを考えると、悪夢もうつ病の前兆である可能性が十分にあるのではないかとわたしは考えている。

頻度だけでなく悪夢の内容も重要だが、これに関しての研究は少ない。「職場結合性うつ病」のように、仕事のストレスが非常に強い人は、仕事がテーマの悪夢をよく見ていることは明らかだ。仕事だけでなく、介護や育児にまつわる家族とのいざこざやトラブルがテーマの悪夢も、最近は増えている感覚をわたしは持っている。

(写真:iStock.com/kuppa_rock)

うつ病ではないかと受診した患者の中にも、不眠だけでなく悪夢を頻繁に見るようになったという人も、かなり含まれている。最近わたしが診察した例を紹介する。

30代のシステムエンジニアの男性で、不眠を治してほしいということで来院した。

会社側の仕事の要求水準は高く、システムやソフトウエアを作成しても、上司やクライアントはなかなか納得してくれない。やってもやっても仕事が終わらず、毎晩終電で帰宅するが、翌日は6時に起きなければ8時半までに会社に行くことは不可能である。

睡眠不足の状態にもかかわらず、帰宅する夜になると仕事のことばかり考えてしまう。このまま寝てしまっては納期に間に合わないのではないかという不安に襲われ、夜中まで仕事をしてしまう。夜中になって少しは寝るのだが、すぐに起床しなければならないので眠りは浅く、日中も思考力や注意力は落ちてしまい、もうろうとした状態である。

やっと眠りについたかと思うと、決まって、自分が作ったシステムが不具合を起こして大混乱となり、大勢の人の前で罵倒されるというような悪夢を見るという。

 

このように、似たようなテーマの悪夢を長期にわたって、持続的に見ている人は、ストレス過多であるのは間違いない。過重労働などによる睡眠不足や、現実問題における過剰なストレスが、うつ病を引き起こしている事実は無視できない。

したがって頻繁に見る悪夢は、うつ病の前兆である可能性があるため、なんらかの対処をしたほうがよいと私は考えている。

関連書籍

西多昌規『悪夢障害』

「寝つきが悪い」「眠れない」「途中で目が覚める」など睡眠に問題を抱える人は大勢いるが、なかでも無視できないのが悪夢。「悪夢障害」とは「極度に不快な夢を繰り返し見ることで睡眠が妨げられ、日常生活に支障が出る」病であるが、この生涯有病率は7割以上ともいわれている。悪夢はうつ病の前兆でもありうるため、軽視は危険。また悪夢を見て叫ぶ場合はパーキンソン病などの可能性もあるので、注意が必要だ。悪夢にまつわるすべてを網羅した一冊。

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悪夢障害

寝つきが悪い、眠れない、途中で目が覚める……睡眠に問題を抱える人は大勢いますが、中でも無視できないのが「悪夢」でしょう。悪夢によって睡眠が妨げられ、日常生活に支障が出るようになったら、それはもう立派な「病気」。その生涯有病率は、なんと7割以上ともいわれています。精神科医で睡眠医学の専門家として知られる西多昌規先生の『悪夢障害』は、そんな悪夢について徹底的に掘り下げた貴重な本。心当たりのある方は、ぜひこのためし読みをご覧になってみてください。

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西多昌規

精神科医・医学博士。スタンフォード大学医学部睡眠・生体リズム研究所客員講師。1970年、石川県生まれ。東京医科歯科大学卒業。国立精神・神経医療研究センター病院、ハーバード大学医学部研究員、自治医科大学講師などを経て、現職。日本精神神経学会専門医、睡眠医療認定医など、資格多数。これまでに数多くの患者を臨床現場で診察するだけでなく、精神科産業医として、企業のメンタルヘルスの問題にも取り組んできた。現在はスタンフォード大学にて睡眠医学の研究を行っている。

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