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悪夢障害

2020.09.03 更新 ツイート

精神科医も勧める「夢日記」でストレスの隠れた原因を突き止めよう 西多昌規

寝つきが悪い、眠れない、途中で目が覚める……睡眠に問題を抱える人は大勢いますが、中でも無視できないのが「悪夢」でしょう。悪夢によって睡眠が妨げられ、日常生活に支障が出るようになったら、それはもう立派な「病気」。その生涯有病率は、なんと7割以上ともいわれています。精神科医で睡眠医学の専門家として知られる西多昌規先生の『悪夢障害』は、そんな悪夢について徹底的に掘り下げた貴重な本。心当たりのある方は、ぜひこのためし読みをご覧になってみてください。

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通勤途中にメモするだけでもいい

本書で紹介しているホブソンやカートライトといった睡眠研究者は、夢日記というものを丹念につけ続けている。夢を分析するには、当たり前だが夢を覚えて、記録しなければならないのだ。

怠惰なわたしには日記をつける習慣がないが、この本を執筆するにあたって、1週間夢日記をつけることを試みた。ただ多忙な業務で日々疲れているせいか、毎晩ぐっすり眠れており、夢というものを案外覚えていないことに気づかされた。

(写真:iStock.com/Nattakorn Maneerat)

しかし、たいていの大人はそういうものだろう。夢を覚えているのはどういう人かというと、エビデンスレベルは低いものの、空想や想像が好きなタイプに多いようだ。

芸術の世界において夢が与えてくれる偶然の創造性は、神秘的であり偉大であるといわざるをえない。

凡人も、ストレスが強くなれば、悪夢が増える。また、悪夢が多くなったとしても、自分がストレスに押しつぶされそうになっていることに気がつかない、あるいはどこかで自分がストレスに影響を受けていることを否認するような心理になりがちである。

うつ病の患者も、「自分はうつではない。性格の問題だ」などと性格の問題にすりかえ、自身の病気を否認することが少なくないが、それと似ている。

現在の社会生活に関連する悪夢が増えているならば、自身がストレスの悪影響を確実に受けている証拠ととらえるほうがいい。

しかし、悪夢にも癒やしと回復する機能が含まれているとすれば、やはりなんらかの形で記録に残しておいたほうが、ストレスマネジメントとしても機能するのである。

自身の夢を、翌朝の通勤途中などに2~3行程度でいいので書きとめておくと、今の自分のストレス強度と、なにより何がストレスになっているかを把握できる可能性が高い。自分の予想していたストレスもあれば、意外なストレスも見つかるかもしれない。

夢からわかることはこんなにある

わたしの患者の中にも、急に子どもの頃の悪夢を見るようになったという初老の男性がいた。自分は子どもに返っているのだが、どういうわけか川で溺れている。それを見つけた母親は無表情で、助けようとしない。水の中で溺れて苦しいかといえば、そういうわけでもなく、母親の姿を溺れながらもちゃんと観察できている。

(写真:iStock.com/Vagengeym_Elena)

後でわかったことだが、彼の母親の認知症が進行し、高齢者施設に入所するためのやりとりで、心身ともに疲れているということだった。

他人から見れば、過度のストレスが生じているのは明らかなのだが、彼にとっては「息子としては当たり前のこと」「友人も同じ悩みを抱えていた」など、理由をつけてストレスであることを否認していたのである。

 

わたしがたまに見る悪夢は、だいたいは仕事関連の内容が多い。しかし、この患者の話を聞いて、いずれ同じ問題を抱えるであろう自分も、子どもの頃や両親の夢を見ることになるのかと、気が滅入ったのを覚えている。

ここからは教科書による知識だが、夢を覚えておくには、自己暗示が効果的であるようだ。寝る前に、「夢を見て、覚えておこう」「翌朝に、見た夢を記録しよう」などと、暗示をかけるのである。

実際に、夢を覚える能力は、夢に対する興味や関心の強さに依存する。また、その能力は、トレーニングで上達するという。

 

これもよく経験することだが、平日に寝ついてからのまもない夢よりも、週末などに朝寝坊や二度寝したときの遅い朝に見る夢は、比較的記憶に残りやすい。

自分の夢を集めて見直してみると、意外な発見があるかもしれない。自身が否認したり隠蔽しようとしたりしている心的葛藤を直視することにもなる

夢日記をつけることは、カートライトによれば「自分でできる精神分析」なのである。

関連書籍

西多昌規『悪夢障害』

「寝つきが悪い」「眠れない」「途中で目が覚める」など睡眠に問題を抱える人は大勢いるが、なかでも無視できないのが悪夢。「悪夢障害」とは「極度に不快な夢を繰り返し見ることで睡眠が妨げられ、日常生活に支障が出る」病であるが、この生涯有病率は7割以上ともいわれている。悪夢はうつ病の前兆でもありうるため、軽視は危険。また悪夢を見て叫ぶ場合はパーキンソン病などの可能性もあるので、注意が必要だ。悪夢にまつわるすべてを網羅した一冊。

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悪夢障害

寝つきが悪い、眠れない、途中で目が覚める……睡眠に問題を抱える人は大勢いますが、中でも無視できないのが「悪夢」でしょう。悪夢によって睡眠が妨げられ、日常生活に支障が出るようになったら、それはもう立派な「病気」。その生涯有病率は、なんと7割以上ともいわれています。精神科医で睡眠医学の専門家として知られる西多昌規先生の『悪夢障害』は、そんな悪夢について徹底的に掘り下げた貴重な本。心当たりのある方は、ぜひこのためし読みをご覧になってみてください。

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西多昌規

精神科医・医学博士。スタンフォード大学医学部睡眠・生体リズム研究所客員講師。1970年、石川県生まれ。東京医科歯科大学卒業。国立精神・神経医療研究センター病院、ハーバード大学医学部研究員、自治医科大学講師などを経て、現職。日本精神神経学会専門医、睡眠医療認定医など、資格多数。これまでに数多くの患者を臨床現場で診察するだけでなく、精神科産業医として、企業のメンタルヘルスの問題にも取り組んできた。現在はスタンフォード大学にて睡眠医学の研究を行っている。

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