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奄美の研修医

2020.07.27 更新 ツイート

本土出張は勉強、勉強、勉強、ときどき煩悩ショッピング熊原悠生実

鹿児島本土での生活も残すところ1カ月となりました。新型コロナウイルスが流行するずっと前から、本土で研修の時は沢山いる大学時代の同級生と会って週末には飲もうと思っていましたが、なかなかそうはいかずに終わってしまいそうです。

以前、島で生活していく上で、特に日常生活で不便を感じたことはないとお伝えしました。何かあったらAmazonに頼ればいいし、そもそもスーパーやコンビニも近くにあるから……と。しかし、実際本土に戻ってくると、島では「不便を感じない」というよりは「ちょっとした欲を忘れている」が正確な気がしました。

 
奄美空港で飛行機に乗り込んだら、隣にもう1台小型機が

昨年の1年間で一番多い出張先は、やはり鹿児島市内。空港から高速バスに乗って40分、鹿児島中央駅に着くとまず赤を基調とした観覧車が目に入り、今も発展を続ける駅ビルが並びます。ここで煩悩を復活してしまうのがいつものお決まりのパターンです。「そういえば、靴下に穴が空いちゃったんだった。せっかくだから見ていこう♪」と駅ビルに吸い込まれたら最後。久しぶりに化粧品や洋服がズラリと並んでいるのを見ると、キラキラした雰囲気に飲まれて、あれも欲しい、これも欲しい……と隠れていた物欲が目を覚まします。

新型コロナウイルスが流行する以前の、研修医1年目の頃、勉強熱心な同期に誘われて大阪まで勉強会に行くことが何回かありました。初めて奄美から行った時は、島に来て3カ月ほど経った頃でした。お昼ご飯に何を食べるかはノープランで行きましたが、結局は大阪名物のお好み焼きでもちょっと背伸びしたリッチなランチでもなく、会場の近くで見つけたロッテリアでした。「見て……ロッテリアがあるよ! 絶品チーズバーガー食べれるよ!!」と、懐かしいチェーン店で過ごしたひと時がとっても楽しかったです。

普段、島暮らしでneedsは十分満たされているけど、本土に来たら忘れていたwantsの部分も満たしたくなる……といったところでしょうか。特に衣食住のうち衣に関して、島には20代をターゲットとしたファッションの大手企業のお店はありません。私の周りではネット通販を利用する人が多いです。

そもそも平日は5分もかからない出勤とスーパーへの買い物くらいにしか出かけないので、適当な格好しかしないのが現状です。私は洋服を買う時には試着したい派なので、都市部に行って目の前に商品があると、ちょうど都合よく物欲が戻ってくるのでしょう。大阪では、きれい目の水色のワンピースを買いました。

しかし、出張の機会は沢山あったにもかかわらず、1年目の間に買った洋服は、全部でたったの3着でした。というのも、出張で行くと結局は疲れてしまったり、あまり時間がなくて、これだ! と思える服に巡り会えなかったりで、物欲を刺激されても購入まで至らないことが多かったからです。

出張の内容として、勉強会に行くこともあると書きました。具体的にどんなことを学びに行くかというと、例えば診断までの思考プロセスや、臓器別の専門家が教える最新の動向についての講義などです。

普段から院内でも先生方が講義してくださったり、研修医同士で学んだことを共有したりしています。しかし、学生の頃と違ってほとんどがon the job trainingなので、自分で勉強する機会を設けるのも大事と思い、外部の勉強会に参加しています。実際には自主的に勉強する姿勢が身についているというよりは、一緒に勉強しようとお尻を叩いてくれる同期のおかげでモチベーションを保っているのが大きい気がしますが……。今はオンラインでも講義が行われるようになりましたが、観光も兼ねていろんなところに行くのは楽しかったですね。

他にも、心臓のエコー(超音波検査)の手技や、外科系の診療科が研修医を対象に開くハンズオンセミナー(体験型のセミナー)などに参加する同期もいました。ちなみに、昨年は台風が直撃して飛行機が飛ばず、私は申し込んでいたのですが参加できませんでした。これも小型飛行機が多い島ならではかもしれませんね。

救急対応のコース受講中

さらには、救急系の資格をとりに行く場合もあります。BLS、ACLS、ICLSという、突然の心停止に対応する方法を1日もしくは2日で学ぶコースがあって、多くの研修医をはじめ、看護師や救急救命士も取得する資格です。他に外傷に特化したコースなどもあります。奄美の私が勤める病院でも年に数回開催されていますが、どうしても都合が合わない場合には別の日に他院で受ける場合もあります。

また、産婦人科をローテーションした後に、妊婦さんに関わる救急対応を身につけるコースも必要だと感じたので、受講しに行ったことがあります。産婦人科の専門医でなくても、効果的に妊婦さんの救命に関われるようにするのが目標です。産科に特化する救急となると専門的な知識が必要なので、前日まで予習予習で全く余裕がなく、2日目の最後の試験に備えてヘトヘトになりました。こうなるとショッピングどころではなくなってしまします。

普段の診療ではまだまだ自分の無力さを味わってばかりで、ちっぽけに感じることが多いですが、振り返ってみるとなんだかんだで少しは勉強したのかな……と思います。これからも学びにも遊びにも貪欲であり続けたいと思います。

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中山祐次郎『逃げるな新人外科医 泣くな研修医2』

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奄美の研修医

研修医ってどんなふうに働いているの? 離島の医療事情はどうなっているの? 25歳のドクターからが生き生きと綴る奄美大島だより。  

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熊原悠生実

千葉県市原市出身。25歳。両親は鹿児島県出身。高校までは千葉、大学は鹿児島大学へ進学。在学中はウミガメ研究会に所属し、吹上浜・屋久島を中心に産卵・孵化調査に参加。卒業後は鹿児島県奄美市の病院に採用され来島。在住2年目。今のところ外科系志望。

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