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奄美の研修医

2020.10.15 更新 ツイート

小児科での研修が始まりました 熊原悠生実

奄美に来て、1年半が過ぎました。研修生活も3/4が終わってしまったと思うと、信じられないくらい時の流れは早いですね。専門に進む前のラストスパートをかける時期に入ってきたな……という感じで、改めて身が引き締まります。

 

今年の奄美は秋の訪れがずいぶん早そうです。昨年の今頃は、何の抵抗もなくダイビングライセンスを取りに行けるほど暑かったのですが、大型の台風10号を皮切りに涼しさが増して行きました。台風がひとつ過ぎていくごとに暑さが和らぎ、やっと夜はエアコンなしでも過ごせそうな気候になってきました。

そこかしこで9月から貼りっぱなしになっている窓ガラスの目張りも、そろそろ外されていくのでしょうか。これからは海に行く時間が減る分、積読を消化する時間を増やしていきたいと思います。

さて、2カ月回った麻酔科の次は、小児科で研修しています。私が働いている病院は離島という医療資源が限られた環境で、多くの救急患者を受け入れています。ここでは、都会のように病院ごとに専門性が分かれているわけではないので、普段から子供からお年寄りまで幅広い年齢層の患者さんを診ています。早いうちに小児科をローテーションすると、救急外来で小児の患者さんに対応するスキルが身につけられて、自分で対応できる幅がグッと広がります。

今年度から全国の研修医が、2年間のうちどこかで必ず小児科を回るように改訂されました。初期研修修了後の進路は様々ですが、ほとんどどの専門科に進んでも小さな患者さんたちと関わります。成長発達段階にある子供は、大人の体の仕組みとはまた別で考えなくてはなりません。私は外科系志望ですが、今後小児を専門に診る機会が少ないと分かっているなら尚更、研修医のうちに小児科医療を経験しておくことが重要だと思っています。

小児科ローテーションを開始して早々、目先の悩みは子供との距離感でした。私は一人っ子で、いとこの中でもダントツで最年少だったので、今までに子供と関わる機会はかなり少ない方だったと思います。小さい頃、小児喘息でかなり小児科の先生方にお世話になったくせに、子供たちにぎこちない対応をしてしまっている気がしてなりませんでした。

参考にしようと指導医の様子を伺っていると、友達のような雰囲気でスッと子供との距離を縮めるのが得意な先生、お兄さんのようにきちんとお話しする先生、お母さんのように優しい雰囲気で包む先生など、子供に対する姿勢は本当に千差万別であることに気づきます。「これが正解」というのはないのかな……と思うと、だいぶ気が楽になりました。

入院している子供たちに毎日会いに行くと、だんだん個性が見えてきます。私の顔を見るとすぐに服を上げて聴診の体勢になってくれる子、診察が終わって見えなくなってからバイバイしてくれている子、最初は嫌だった吸入も頑張れるようになった子。ひとりひとりと接する時間が増えるとどんな風に関わっていけばいいかが見えてきて、どんどん可愛くなってきます。

ぐったりしていた子が、退院する頃には元気いっぱいな姿を見ると、本当にホッとします。意外に思われるかもしれませんが、子供を診る時に最初に意識しなければならないのが、「パッと見」の様子です。元気がありそうか、息は荒くないか、皮膚は青白くなっていないか……などの情報を、「パッと見」の数秒で判断します。

外来の診察であれば、患者さんを診察室に呼んで、入ってくるまでの間の数秒です。この時に、親にもたれかかってジッとしているような場合は「おっと。元気はなさそうだな」と思います。もちろんこの後に脈拍数や呼吸数などもっと詳細な指標を用いた重症度分類を行いますが、第一印象を利用して、短時間で重症の子を拾い上げることはとても重要です。

また、保護者が「なんとなくいつもと違う感じがする」という場合も要注意です。特に小さい子は、自分で症状の説明ができません。病気で気分が優れず、不機嫌になっている時に、「ちょっといつものグズりじゃないな……」と思う保護者の勘は、医師にとって重要な指標になります。

小児科の大きな特徴の一つとして、患児本人意外にも、保護者との関係性が非常に大切であることが挙げられます。私の指導医は、いつも「保護者には、よくわからないことがあればいつでも小児科医に相談して欲しいと思っている」と言います。小児科外来の様子を見ていると、小児科医はもちろん、看護師さんや事務の方も親子と顔馴染みになっていて、保護者から見て相談しやすい雰囲気が出来上がっているように感じます。

台風シーズンも終わりが近づくと、季節の変わり目で体調を崩しやすくなってくると思います。COVID―19の拡大と共に感染対策が浸透し、今年はその他の感染症が全国的に非常に少なかったと報道されました。大人も子供も、この調子で風邪・インフルエンザの季節を乗り越えられると良いですね。

関連書籍

中山祐次郎『泣くな研修医』

なんでこんなに 無力なんだ、俺。 雨野隆治は25歳、大学を卒業したばかりの研修医だ。 新人医師の毎日は、何もできず何もわからず、 上司や先輩に怒られることばかり。 だが、患者さんは待ったなしで押し寄せる。 初めての救急当直、初めての手術、初めてのお看取り。 自分の無力さに打ちのめされながら、 がむしゃらに命と向き合い、成長していく姿を 現役外科医が圧倒的なリアリティで描いた、感動の医療ドラマ。

中山祐次郎『逃げるな新人外科医 泣くな研修医2』

俺、こんなに下手クソなのに メスを握っている。命を託されている。 研修医・雨野の物語、待望の続編。 文庫書き下ろし! 雨野隆治は27歳、研修医生活を終えたばかりの新人外科医。 二人のがん患者の主治医となり、奔放な後輩に振り回され、 食事をする間もない。 責任ある仕事を任されるようになった分だけ、 自分の「できなさ」も身に染みる。 そんなある日、鹿児島の実家から父が緊急入院したという電話が……。 現役外科医が、生と死が交錯する医療現場をリアルに描く、 人気シリーズ第二弾。

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コメント

KOGITA JUNKO/小木田順子  〈今年度から全国の研修医が、2年間のうちどこかで必ず小児科を回るように改訂されました。〉 麻酔科での研修を終えた熊原さん、小児科の研修中です。 |奄美の研修医|熊原悠生実 - 幻冬舎plus https://t.co/7N1XwMFLKF 5日前 replyretweetfavorite

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林けいこ  小児科での研修が始まりました|奄美の研修医|熊原悠生実 - 幻冬舎plus https://t.co/x0bFNEX94Y 6日前 replyretweetfavorite

幻冬舎plus  小児科での研修が始まった熊原さん。 子どもを診るときにまず大切なのは「パッと見」の様子。診察室に入ってくる「数秒」が勝負なんだそうです。そんなときからもう診察が始まっているんですね。(小) |奄美の研修医|熊原悠生実 - 幻冬舎… https://t.co/HP8k88vBMu 6日前 replyretweetfavorite

幻冬舎plus  [公開] 小児科での研修が始まりました|奄美の研修医|熊原悠生実 https://t.co/EVFZ7GEPzK 6日前 replyretweetfavorite

奄美の研修医

研修医ってどんなふうに働いているの? 離島の医療事情はどうなっているの? 25歳のドクターからが生き生きと綴る奄美大島だより。  

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熊原悠生実

千葉県市原市出身。25歳。両親は鹿児島県出身。高校までは千葉、大学は鹿児島大学へ進学。在学中はウミガメ研究会に所属し、吹上浜・屋久島を中心に産卵・孵化調査に参加。卒業後は鹿児島県奄美市の病院に採用され来島。在住2年目。今のところ外科系志望。

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