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2020.08.02 更新 ツイート

センパイ、7歳の手術で厄落とし?石黒由紀子

最近のセンパイとコウハイ。くっついて寝るのは9年前と変わらない

保管してあった動物病院の診療費明細書の束を見ていたら、2009年の春に「書類作成料」とありました。「これ、何のことだっけ?」
おぉ、そういえば。この時期、4歳になったセンパイはアニマルセラピー犬として活動していたのです。飼い主と一緒に老人保健施設などを慰問するボランティア。書類とは、その本部に提出しなければならないものでした。血液検査と健康診断をしてもらい、「ワクチンや狂犬病の予防注射など、やるべきことはやっている」こと、既往の診療など詳細を記入し「この犬の健康を証明します」というもの。

 

月に1度か2度、3時間くらいの活動でしたが、お年寄りにセンパイたち犬や猫を見てもらい、ときには撫でてもらったり、一緒に歌を歌ったり。施設に入所しているお年寄り、デイサービスに通ってくる人々にとって、動物たちとふれあうことは精神的によい刺激となるそうです。みなさんが喜んでくれるので、こちらとしても楽しい活動でした。センパイもユニフォームであるピンクのバンダナを付けるとキリッ、それなりにやり甲斐を感じていた様子。もしかしたら、私がやりたかったことに付き合ってくれていただけなのかもしれないけれど。

その頃には成長期も一段落、すっかり成犬となり、心身ともに落ち着いてきました。多少、甘えん坊で分離不安症の傾向があったものの、ひとりでの留守番も問題なし。体力もあり、時間があるときは散歩も遠征。公園のドッグランやドッグカフェに行き、ドライブや電車での旅を経験したのもこの頃。もともと外出好き、外面がいいのも功を奏し、社会性も身につきました(犬見知りではあったけれど)。犬に恵まれていたと、あらためて思います。

5歳になったセンパイは、のんびりを超えてぼんやりした犬となりました。まぁ、元からその傾向はあったけれど、なんだかすっかりご隠居さんの風情。食べることだけが楽しみで、食欲は底なし。ごはんやおやつを「もっと! もっと!」と、催促する時だけ活気づき、あとはほとんど置物のようになって惰眠を貪る。「これでは早々にボケてしまうのでは? 健康にもよくない!」と、心配しました。そこで、センパイのボケ防止に犬をもう1匹……?

我ながらいい思いつきでしたが、具体的なことをあれこれイメージしてみると、犬を2匹飼うことに自信が持てない。そこで動物愛護団体を主宰している友人に相談したのです。

「じゃぁ、猫にしたら?」彼女は即答しました。我が家の暮らし方やセンパイの性格も把握している彼女の言うことです。きっと正解。しかし、私は猫と暮らしたことがありません。大丈夫かニャ? 私の不安を察知し彼女は言いました「センパイはメスでおっとりしているから、オスの子猫だったらうまくいくんじゃないかな」。「そんなもの?」「うん」(きっぱり)。

そして「この子、どう?」と推薦されたのがコウハイです。彼女の野生の勘は大当たり。センパイははじめは戸惑ったものの、次第に育児に励み、子猫は5キロを超える大猫に。センパイは少しずつ縮んできているので、今ではコウハイのほうが大きく見えます。

「犬も7歳を過ぎると、不思議なくらいにあちこちガタが来るのよね……」。犬を飼っている友人たちからよく聞いていましたが、私には実感がなく「へぇ、そんなものなのかな~」と、軽く聞き流していました。

しかし、センパイが7歳を迎えたばかりのある日、日課のブラッシングをして、手で腹部を撫でているとポツッと、何かが手に当たる感触が。どきっとして、もう一度慎重に触れてみると、センパイの腹部の右脇あたりに確かに何かがありました。目を凝らしてみると、赤みなどはなく、ただふんわりと腫れています。

急いで受診したところ「痛がる様子もないし、今はまだ判断ができないので、少し様子を見ましょう」と先生。腫れがこのまま自然にひっこむ場合があるし、逆に大きく育つ可能性もあるそうです。5日後に診察の予約をして帰宅。ドキドキしながら過ごしていましたが、幸いなことにセンパイの腹部の謎なふくらみは、少しずつ小さくなって、消えて行きました。

これがセンパイのイボ歴史のはじまりでした。その後もブラッシング中に指に引っかかるものに気づいたり、散歩の途中、夕日に照らされた顔に見慣れぬ影を見つけたり。なにこの雨後のたけのこ感。「7歳になったらあれこれある」とはこのことか。あぁ、そして。今度は右目の下あたり。私は慣れて図太くなり「またすぐなくなるよね」と高をくくっていたのです。しかし思惑ははずれ、ポチッはどんどん大きく育っていきました。

「良性か悪性かの検査をする場合、目の周辺でデリケートな場所なので麻酔をします。そしてもし悪性だった場合、もう一度麻酔して切除となります。なので、はじめから切除手術をしてしまったほうが、センパイちゃんへの負担は少なくて済むのですが……」獣医師の言葉に、私は手術を決めました。センパイ、不妊手術以来、2回目の手術。
1泊2日の入院で手術は無事に終わり、術後も順調。剃毛跡とエリザベスカラー姿が痛々しいものの、コウハイの熱心な寄り添い看護の甲斐もあり、数ヶ月後には被毛もはえ揃い、めでたく完治。

犬の7歳は人では40代前半。犬も人と同じですね。健康の大きな崩れはないとしても、ちょいちょいと心配なことが出る厄年あたり。「疲れが抜けないなぁ」とか「傷の治りが遅くなったな」なんて思うようになり、「揚げ物を食べすぎると胃がもたれて」なんて会話をするようになる(私の場合)。体調の小さなトラブルも増えて、良好な健康状態を保つのに多少の努力が必要となってきます。

センパイの手術も「厄落とし」と考え、これからも健康で長生きができるよう、気持ちの緒を締め直しました。

アニマルセラピーのユニフォームで。犬も人も若かった
コウハイが来て2ヶ月過ぎた頃。センパイかあさん、がんばった

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石黒由紀子

エッセイスト。栃木県生まれ。日々の暮らしの中にある小さなしあわせを綴るほか、女性誌や愛犬誌、webに、犬猫グッズ、本のリコメンドを執筆。楽しみは、散歩、旅、おいしいお酒とごはん、音楽。著書に『GOOD DOG BOOK ~ゆるゆる犬暮らし』(文藝春秋)、『なにせ好きなものですから』(学研)、『さんぽ、しあわせ。』(マイナビ)など。『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』、『犬猫姉弟センパイとコウハイ』(ともに小社刊)は、幅広い支持を受け、ロングテールで人気。

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