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豆柴センパイはおばあちゃん ヨロリゆるゆる、今日もごきげん

2020.07.02 更新 ツイート

センパイ、これは老化現象?石黒由紀子

センパイ近影。部屋の中を歩き回り、意外な場所から顔を出します

いま、私の右の頬には小さな擦りキズ……。昨日の早朝、寝ているところをセンパイに踏みつけられました。「いたっ!」と目覚めたけれど、眠たさが勝り、そのまま寝入り忘却。今日になったらふんわりと腫れて目立つようになってしまった。人と会う約束もないので放っておくことにします。

センパイは、腹時計が夜明けをお知らせすると「ごはん、ごはん、朝ごは~ん!」、家人を起こそうとベッドの上を歩き回ります。その際に、わざとか誤ってか私の顔を踏んだのです。猫のコウハイは、ずっと前から私の顔や身体を通り道にしていますが、センパイが私を踏むようになったのはここ数ヶ月ほど……。

犬の平均寿命は超小型犬で15.01歳、中型犬・小型犬は13.36歳、全体的な平均寿命は14.29歳(一般社団法人ペットフード協会が2019年に行った「全国犬猫飼育実態調査」より)。我が家の愛犬、豆柴のメス・センパイは14歳。ありがたいことに、健康で順調に年齢を重ねてきましたが、ここ1年くらい、心身の変化がありました。
年齢からみて、これは単なる老化? それとも病気? 病気だとしたら治療をすれば治る? 異変があるたびに、いちいち心をざわつかせ神経質になっていましたが、あるとき、ふと思ったのです。
「わたし、毎日を楽しめていないのでは?」
14年もの日々を共に過ごした、かけがえのない愛犬がここにいるのに、何をするにも先回りして予防しようと考えたり、これまでの生活を思い返して反省したり……。過去と未来に振り回されて、今を生きていない。

気づきは、愛犬を見送った友人や知人からの言葉からでした。「おしっことかうんちの始末ばかりでうんざりしていたけれど、今、ここにあの子が戻ってきたら、喜んでうんちを拾うよ。何回でも拾いたいよ!」「思い通りにいかないつらいことも、そのうち懐かしく思えるときが来るわよ」「センパイとの時間を大切にしてね!」

周囲には、困っていることを投げかけると、一緒に考えてくれる犬飼いの先輩たちがたくさんいます。みんな愛犬愛猫と濃密な時間を過ごし、旅立ちを見送り、寂しさと併走。その経験を心の宝箱に持っている。それを惜しまず私に伝えてくれるのです。

センパイは2005年の9月12日生まれ。生後4ヶ月で我が家にやって来て、その頃から、私はセンパイに「少なくても15歳までは元気でいようね」と言ってきました。東京オリンピックの開催が決まってからは「オリンピックを一緒に観るよ」が目標に。今年、オリンピックは無くなりましたが、センパイは15歳を迎えます。小さくてくちゃくちゃだった猫のコウハイも10歳です。

みなさんにかわいがっていただいた書籍『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』から約10年、すっかりおばあちゃんになったセンパイのこと、センパイをまなぬるく見守り支えるコウハイのことを、ここに綴らせてもらうことになりました。どうぞよろしくお願いします。

まずは、センパイの子犬時代を駆け足でたどります。
出会いは、2005年の10月。仕事で訪れた、当時、伊豆高原にあったドッグフォレストという施設。そこで、ムクムクとうごめぐ毛玉、生後2週間の柴犬の赤ちゃんに会いました。生体販売をしているけれど、ここは犬たちの心身を考慮し、生後3ヶ月までは母子共に過ごさせる方針とのこと。

いつかは、犬と暮らしたいと思っていたのです。保護犬とか知人の家で生まれた犬、どこかに縁がある子がきっと現れるだろう、くらいの気持ちでいました。今日、犬を飼う(買う)ことになるなんて、夢にも思っていなかったのに、連れてこられた犬たち2匹(オスとメス)を見た瞬間、運命が動き出し(少し大げさ)、「今、決めても、うちに来るのは2ヶ月以上先。その間に、準備をすれば大丈夫かな」というのが心の保険となり、身体が小さいメスを迎えることに決めたのです。

おっとり、というか、どこかテンポがズレる、ぼんやりした犬でした。子犬らしいエネルギーを漲らせ、何事にも果敢に挑む無邪気さや好奇心はありましたが、吠えて困るとかモノを壊すということはなく、どちらかというと、臆病でおとなしい育てやすい犬でした。聞き分けがよくマイペースな性質は生まれつき。

「食いしん坊ですよ」と言われてはいましたが、まさに! 日に2回の食餌は最大のメインイベント。食餌の前には、一応おすわりをさせて「待て」。私の「はい、どうぞ!」が食べる合図としつけたけれど、フライングすることはしょっちゅう。食べはじめると、あっという間に平らげ、フードボウルは何も入っていなかったかのようにピカピカに舐め上げられました。私の実家にも犬がいたので、犬の食餌風景は見て知っているつもりでしたが、こんなにも秒殺だった?
食べ終わると、すぐ「次はいつ食べられるの?」と私を見上げ、そのかわいらしさに心を掴まれましたが、底知れぬ食い意地が末恐ろしくもありました。

「センパイ」という名前になったのは、友人が来たときに、子犬に向かって「お願いしますよ、センパ~イ!」なんて言って遊んでいたら、「センパイ」で振り向くようになってしまったことから。「センパイ」という名前の犬、響きもいいし、おもしろくてかわいいかも! と、正式に名付けることに。

我が家に来て数週間後に、うちから一番近い動物病院を受診。ワクチンを打ち、監札を交付してもらい、区に登録。正式に町の住犬となりました。

センパイが散歩をはじめた頃に、よく会う小柄なヨークシャテリアがいました。子犬のようにも見えるあどけなさにして、21歳。何度かお会いするうちに飼い主の紳士とも少しはなしをするようになりました。その方曰く「長生きの秘訣は、脚腰と口内ケアです」。とにかく、子犬の頃からよく歩かせていたそうです。口内ケアは「老犬になってくると口内のトラブルが原因で体調を壊すことがありますから。子犬の頃から歯みがきの習慣をつけておくといいですよ」。これを聞き、家に戻った私は忘れないようにと、お気に入りのノートに大きな字で書き留めました。

1歳1ヶ月で不妊手術を受け、術後も順調に回復。以後、夏には皮膚に痒みが出たりしたものの、健康そのもので過ごし、「狂犬病とワクチンの注射をするときにしか、動物病院には用がない」という健康優良犬として何年も過ごしました。

我が家にやってきて1ヶ月くらいの頃
不妊手術は1歳1ヶ月のときに。痩せ気味でキツネのよう

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石黒由紀子

エッセイスト。栃木県生まれ。日々の暮らしの中にある小さなしあわせを綴るほか、女性誌や愛犬誌、webに、犬猫グッズ、本のリコメンドを執筆。楽しみは、散歩、旅、おいしいお酒とごはん、音楽。著書に『GOOD DOG BOOK ~ゆるゆる犬暮らし』(文藝春秋)、『なにせ好きなものですから』(学研)、『さんぽ、しあわせ。』(マイナビ)など。『豆柴センパイと捨て猫コウハイ』、『犬猫姉弟センパイとコウハイ』(ともに小社刊)は、幅広い支持を受け、ロングテールで人気。

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