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「暮らしのおへそ」「大人になったら、着たい服」の編集ディレクターであり、『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』などの著者である一田憲子さんの最新作が『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』です。

コロナウイルスの影響でたくさんの商業施設が休館となり、働き方も変わり、1日の大半を自宅で過ごすという人も増えている中、家事や掃除のやり方について改めて考えている方も多いのではないでしょうか。
また、移動がほとんどない毎日の中で、どう生活にリズムを付ければいいか、悩んでいる方もいるのではないかと思います。

本書では、数多の暮らし上手な人を取材し続けてきた一田さんが実践している、生活をリセットしていく小さな習慣をたくさんご紹介しています。

未曽有の状況で不安や焦りを抱える毎日ですが、本書で自宅時間を少しでも発見のあるものにして頂けたら幸いです。
 

ホコリを払い、掃除機をかけ、拭き掃除を終えて、さっぱりと整った部屋を見るたびに、「あ~、スッキリした!」と気持ちが清々します。そして、掃除をするということは、部屋をきれいにするだけが目的じゃないよなあといつも思うのです。

掃除に取り掛かる前には、まず、テーブルの上に散らかったDMや、床に散乱している靴下、カバンなどを片付け、所定の位置に戻します。掃除と片付けはセットになっているので、掃除をしない、ということは片付けをしないということ。するとどんどん部屋が荒れていくことになります。この状態を「元に戻す」ということが、暮らしの中では、とても大切だなあと思うのです。

日々やらなくてはいけないことがてんこ盛りで、ものごとは絶えず変化を繰り返し、時間は、どんどん先へと流れていきます。効率だけを考えていると、流れに乗って、先へ先へと進んでいった方がいいように思うけれど、絶えず動き続けていると、いったい今、私は何をしているんだったっけ? と自分が見えなくなってしまいます。

仕事でも暮らしでも、何かを始める時には、「こうなったらいいな」というビジョンを持つものです。「ビジョン」と言葉にできるほど明確に考えていなくても、「今度の新居では、家族でご飯を食べる時間を大事にしたいな」とか、「次の企画では、誰かが困っていることをひとつでも解決してあげられたらいいな」など、まっさらな気持ちの中に「だったらいいな」という旗を立てます。

ところが……。いざいつもの日常が始まったり、企画が進み出したりすると、今度は「つつがなく進行できること」が最優先になります。いつの間にか、生活はルーティンになり、仕事の目的は雑務をスピーディにこなすことに。

どうやら、「ビジョン」とは、ものごとをスムーズに進めるには妨げになるようです。たぶん「ビジョン」を形にすることは、とても面倒くさいことなのです。共働き夫婦なら、勝手に買ってきたお弁当をそれぞれで食べた方がずっとお手軽。でも、そこで「一緒に作って食べること」を大事にしたい、と思ったなら、やっぱり努力が必要になります。

忙しい毎日の中では、こうやってラクな方へ流れることで、本来描いていた「大切にしたいこと」が知らないうちに消え去っていた、ということが多々あります。それを思い出すために、有効な方法が、すべてをリセットして「元の状態に戻す」ということ。掃除なら、片付ければ部屋をリセットできるから簡単ですが、現在進行中の仕事の企画をリセットするとなると、結構大変です。

私の場合なら、1冊の雑誌作りのために取材先を決め、本の台割りを組み、スタッフを決めて、撮影コンテを描く……。ここまで進んだ時に、「はて? 最初のビジョンから少しずれているんじゃない?」と言い出すことは、とても勇気がいります。でも、ここでしっかり最初に立ち戻り、考えなければ、「なんのためにこの本を作るんだっけ?」という根本がわからなくなってしまいます。

だからこそ、たくさん進んでしまう前に、暮らしの中に「元に戻る」というしかけを作っておくのが有効かなあと思うのです。掃除で部屋をリセットすると、気持ちまで白紙に戻ったようで、さっぱりとします。雑巾を手に体を動かすことで、「手のスピード」でしかできないことを思い出します。すると、何かをすっ飛ばして急いでいた自分にちょっとブレーキをかけることができる……。

時計を巻き戻すことは非効率です。でも、大事なことは、木の実が熟してぽとりと落ちるように、時間がかかるもの……と思い出すことはとても大事だなあと思うのです。部屋は掃除さえすれば、何度でも元の状態に戻ってくれます。そんな「暮らしのゼロ地点」を決めておくと、つい走り出してしまう心を、少し平穏に保つことができる気がします。

関連書籍

一田憲子『暮らしの中に終わりと始まりをつくる』

1日、月ごと、年ごと。自分をリセットしていく人生の習慣41。暮らしも人生も、「一段落」を取り入れると、みずみずしく動き始めていきます。

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暮らしの中に終わりと始まりをつくる

『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』著者・一田憲子さん最新作! 自分をリセットしてくれる「人生の習慣」41。

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一田憲子 編集者・ライター

OLを経て編集プロダクションに転職後、フリーライターとして女性誌、単行本の執筆などを行う。2006年、企画から編集、執筆までを手がける「暮らしのおへそ」、2011年に「大人になったら、着たい服」(共に主婦と生活社)を立ち上げる。自身のウェブサイト「外の音、内の香」(http://ichidanoriko.com/)も運営。著書に『丁寧に暮らしている暇はないけれど。』『面倒くさい日も、おいしく食べたい!』『大人になってやめたこと』『おしゃれの制服化』などがある。

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