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日本最古の歴史書「古事記」。
神様たちのトンデモナイお話が満載です。
この奇天烈きわまりない神様の物語を、落語家・桂竹千代さんがおもしろ解説してくれる人気連載。
今回は、「乙姫様」のモデルになったという女神トヨタマヒメの出産。
ここで明らかになる、トヨタマヒメの本当の姿――。

*   *   *

(写真:iStock.com/MR1805)

第28話「絶対見ちゃダメ!」

ヤマサチがウミサチに勝利して従えました。釣り針を失くした時とは形勢逆転しました。釣りだけに浮き沈みある人生ですね(うまいなぁ~!)。ハリのある生活が戻ります(うまいなぁ~2!)。
そんなある日のこと、トヨタマが海からやってきます。

ヤマサチ「おぉ~! トヨタマ元気か? 海の中からはるばるよく来たな! 釣り針クソ野郎はこらしめてやったぜ! (元はお前が悪いだろ!)……どうした? 何か言いたげな顔だね?」
トヨタマ「ねえ、あなた……アタシ……できちゃったみたいなの」
ヤマサチ「……そっか、まあ3年いたからな……そらできるか。ウチのオヤジ(ニニギ)は一晩で3つ子できちゃったけどな」
トヨタマ「あなたの子を海の中で産むわけにはいかないじゃない? 海の中じゃ溺れちゃうじゃない?」
ヤマサチ「そうだよな。おれ3年いたけどよく溺れなかったなよな。やっぱおれ神なんだなって実感したわ」
トヨタマ「だから地上で産もうと思ってきたのよ……ううっ! ああっ!! 産まれるー!!」
ヤマサチ「ええっ!? いきなり臨月!? ちょっと救急車~! ってか今、産屋を作るからまだ出さないでー!!」

ヤマサチは、急いで海辺に、赤子を産む場所である産屋を作り始める(そんな場合か! )。

トヨタマ「あなたっ! うっ……! 産まれるー!!」
ヤマサチ「頼む! もうちょいガマンして~!」

そしてヤマサチは、鵜の羽根を葺き始める(やってる場合か!)。

トヨタマ「あなたっ! ……はぁはぁもうダメ……ひーひーふー、ひーひーふー、うっ! もう出るー!!」
ヤマサチ「えー! ちょっと待って待って! まだ鵜の羽根葺き終わってないけど……産むとこ見たいからー!!」

ヤマサチが慌てて産屋の中へ入ろうとすると

トヨタマ「待ってあなた! 中に入っちゃだめ!」

 

ヤマサチ「何でだよ!? いいだろ? おれの子なんだ!」
トヨタマ「違うの! ……はぁ、はぁ……アタシ、今から元の姿に戻って産むから……だからダメ!」
ヤマサチ「元の姿ってどゆことだよ?! フリーザ? シンゴジラ? 今第何形態?」
トヨタマ「とにかく産むとこは見ちゃダメなのお! はぁ、はぁ……ねぇ? わかった? 約束して!」
ヤマサチ「……オマエがそこまで言うならわかったよ。見ないよ、元気な子を産んでくれよ」
トヨタマ「ありがとう、言うこと聞いてくれて。ね? 絶対に! 見ちゃダメだからね!」
ヤマサチ「わかった! 頑張ってくれ!」
トヨサチ「うんありがと、絶対に、ぜぇ~ったいに! 見ちゃダメだから!」
ヤマサチ「……わかったよ」
トヨタマ「絶対に! 絶対によ!」
ヤマサチ「……見ろってこと?」

 

ヤマサチは「こいつ、ダチョウ倶楽部好きなのかな?」と感じたのか、「絶対見るな!」と言われたのを前フリだと思って戸をオープン!!
すると産屋の中にいたのは……大きなサメでした。サメがうねりながら苦しんでいたのです。

トヨタマ「あなた! あれほど見ちゃダメって言ったのに! とうとうこの姿を見てしまったわね……」
ヤマサチ「うっ……うわー!! サメがしゃべった!!」
トヨタマ「まずそこ?! 今までウサギとかネズミとかしゃべってたでしょ! あたしの本当の姿は……これなのよ」
ヤマサチ「えー!! ……お前、サメだったのかよー!!」

ヤマサチは、トヨタマの正体がサメだと知って、彼女に対する恋もサメたそうです(いいね!)。
トヨタマは夫に本当の姿を見られてしまい、サメザメ泣いたそうです(いいよ!)。

トヨタマ「見ないでって言ったのに! ……バカー!!」

ヤマサチはこんなことを言われてさぞ、シャークに触ったことでしょう(もういっちょ!)。
トヨタマに見つからないように、もっとジョーズに見ればよかったですね(もうええわ!)。
人魚ならよかったんでしょうけど、100%混じりっ気なしのサメだったわけですね。
さて、妻の正体を見てしまったヤマサチさん。
どーなるどーなる!

 

※続きは、書籍『落語DE古事記』にてお楽しみください!

関連書籍

桂竹千代『落語DE古事記』

日本の神様は、奔放で愉快でミステリアス! 海をかき混ぜて日本を作ったかと思えば、一目惚れしたり、嘘ついたり、嫉妬に燃えたり。女の取り合いで大蛇と喧嘩する神様も、娘の恋人をイタズラでいじめ抜く神様もいる。さらに神同士の殺し合いも度々勃発。壮大すぎて難解と言われる日本最古の歴史書を、落語家が爆笑解説でスラスラ読ませる。

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落語DE古事記

神社に行けば、私たちは神様にありとあらゆることをお願いしますよね。商売繁盛に合格祈願に延命長寿に縁結びに厄除けに……。
でもちょっと待って。こんなに頼りにしてる「神様」のこと、ちゃんと知ってますか?
神様について書いてあるのが「古事記」です。歴史の教科書でも最初の方に出てくるので、「古事記」について聞いたことのない人はいないと思いますが、でも何が書かれているかまで説明できる人って、少ないんじゃないでしょうか。
そこで、大学院まで古代史を専攻していた落語家の桂竹千代さんに、「古事記」を楽しく解説していただくことにしました。
爆笑注意ですから、静かな場所では読まないようにしてくださいね! 

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桂竹千代 落語家

 

落語家。千葉県旭市出身。1987年3月17日生まれ。2005年千葉県立匝瑳高校卒業。2009年明治大学文学部史学地理学科考古学専攻卒業。2011年明治大学大学院文学研究科古代日本文学専攻修士課程修了。元ニュースタッフエージェンシー所属漫才師、ゴーギャン職人。2011年7月、桂竹丸に入門、前座「竹のこ」。2015年9月、二ツ目昇進、「竹千代」。2019年3月、第18回さがみはら若手落語家選手権優勝。
新宿末広亭や浅草演芸ホールなどの寄席を中心に、全国各地で落語会に出演。その他、イベント・結婚式司会、温泉ツアーガイド、古代史講座、大学講師、社会教育講演など幅広く活躍。旭市観光大使も務める。
エンタの神様(日本テレビ)、爆笑オンエアバトル(NHK)、メレンゲの気持ち(日本テレビ)、グリコポッキーCM、どうする東京(MXTV)、50ボイス(NHK)、BS笑点特大号(BS日本テレビ)、ミッドナイト寄席ゴールデン(BS12)、夕やけミッドナイト寄席(BS12)SHARP・アクオス落語(全国の家電量販店にて放映)、日曜バラエティー・レギュラー出演(NHKラジオ第一)2018年4月~2019年3月、桂竹千代のJAGARAKU(FM帯広)2018年4月~2019年3月、OH! HAPPY MORNING「Today’s Focus」(JFN)※古代史専門家としてニュースコメント、春風亭昇太のピローな噺(dtvチャンネル)、竹千代の風土記(CS寄席チャンネル)などに出演。

 

 

 

 

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