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胃腸を最速で強くする

2019.06.17 公開 ツイート

痔の人はとくに注意!便潜血検査の陽性を甘く見てはいけない 奥田昌子

多くの現代人が悩む胃腸トラブルを、もっとも効果的に治す方法を説いた、奥田昌子さんの『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』(幻冬舎新書)が発売以来たちまち3刷と、反響をよんでいます。
本書を待ち望んでいたのが、胃腸に悩みをもつ幻冬舎営業担当チームの3人。
働き盛り世代の代表として奥田さんに直接相談する座談会を行ないました。
今回は「胃腸のがん検診」にまつわる悩みやギモンを、奥田さんにお答えいただきます。(構成/編集部)

*   *   *

黒田倫史(くろだ・のりふみ) 幻冬舎営業局書店営業担当チーム。42歳。「週末はランニングをしています。これで平日の飲み会での暴飲暴食がチャラになるといいのですが……」

時田有希子(ときた・ゆきこ) 幻冬舎営業局書店営業担当チーム。「しょっちゅうお腹を壊すので、どの駅のどこにトイレがあるかを熟知してます」

田村尚弘(たむら・なおひろ) 幻冬舎営業局書店営業担当チーム。52歳。「遅くに食べる習慣のせいか、1年ほど前に逆流性食道炎になりました」


検査で提出した便からなにがわかるのか?

時田:よく下痢になる人は、大腸がんの可能性があるのでしょうか?

奥田:がんで下痢になることもあるでしょうけれど、どちらかというとがんが大きくふくれてくると、通り道がふさがって便秘になったり、通路がせまくなってお通じが細いものしか出なくなったりしがちです。
便が細くなったのを下痢と勘違いする人もいます。
そういう状態はもう、がんがだいぶ大きくなったときですけれどね。

そうなる前に大腸がんを見つけましょうというのが便の検査の目的です。
大腸がんがあると出血する場合が多いから、それを手がかりに発見しようとするものです。

時田:便潜血検査は、血があるかないかだけを検査しているんですか?

奥田:便潜血検査は血だけですね。望ましいのは2回法といって、2日間ちがう日に便を採取して、2回分を提出するものです。
というのは、仮にがんやポリープができていても、常に出血するとはかぎらないわけです。
あまり出血しないタイプのがんもあるし、採った場所にはたまたま血が混じっていないこともあります。
だから1回だけよりは2回のほうが、見つけられる可能性が高まるということなんですよ。

奥田さん「便潜血検査は1度でも陽性が出たらぜひ詳しく検査してもらってください」

時田:そうなんですね。腸内細菌がどれぐらいあるのか、という検査は健康診断のときにしてくれないんですか?

奥田:健康診断ではまったくやらないです。
簡単な検査でわかればよいのですが、実際は寒天に塗ってどういう菌が育ってくるか調べたり、菌の遺伝子を取り出して解析したり、それぐらい手をかけないとわからないです。
専門の病院ならやっているところはあると思いますよ。

田村:便潜血なのか、痔(じ)なのか、区別はつくんですか。

奥田:それはちょっと難しいですね。ぜんぶ自分の血ですから。

時田:だから、再検査になったら「自分は痔だから」と自己判断しないで、内視鏡をやるべきということですよね。

奥田:そうです。1回でも陽性になるというのは大きなことなので、内視鏡をやるなり、詳しい問診を受けるなり、次の検査に進むことを強くおすすめします。


絶食しなくてもできる胃がん検査とは

奥田:事前アンケートによると、黒田さまは、「健康診断の前日は夕飯を早い時間に食べ、朝食も摂れないので体重が2キロ近く落ちてしまいます。胃をからっぽにする以外の検査方法はないものでしょうか」というご相談ですね。

黒田:ほんとうに憂鬱(ゆううつ)です。3食ちゃんと食べて、規則正しく生活したいので、健康診断のせいで不健康になるんじゃないかと、いつも思います。
あるていど以上食べないと僕は体重がどんどん落ちちゃって。

時田:代謝がいいんだ。

驚くほど代謝のいい黒田さん。

奥田:黒田さまは週4の筋トレ、週2のランニングと、よく運動していらっしゃるのも代謝のよさにつながっているのでしょうね。
胃の検査、腸の検査というのは、やはり絶食して中をからっぽにしないと、壁の状態を正確に見るのがむずかしいです。

絶食しなくてもいい検査というと、あくまでも補助的な検査ですが、ABC検査というものがあります。
食事の影響はまったく受けないから、いつもの生活を送ってもらって大丈夫です。
これは「将来胃がんになる危険性」を判定・推測する血液検査です。

一同:へぇ~!

奥田:「ピロリ菌の感染があるか」と、「萎縮(いしゅく)性胃炎があるか」、この2つを調べることで、その組み合わせで胃がんの危険性を判定・推測する検査です。

なぜ萎縮性胃炎について調べるかというと、胃がんというのはまず萎縮性胃炎になって、そこから起きる場合が多いからです。
だから、もし萎縮性胃炎があるなら、一歩胃がんに近づいている。
すぐ胃がんになるわけではないにしても、ちょっと地ならしがすんだ状態だな、ということになります。

「ピロリ菌の感染がなくて萎縮性胃炎もない」、この状態がいちばんいいわけですよね。
いちばん困るのは「ピロリ菌に感染していて萎縮性胃炎もある」方。
この2つをくらべると、胃がんのなりやすさは70倍ぐらいちがうと言われているんですね。

一同:ええー!

奥田:ただ、ピロリ菌を除菌した方は正確な判定ができないから、ABC検査は参考ていどにしかならないと言われています。

 

バリウムの検査と胃カメラ、どっちがいいか

奥田:時田さまは、バリウム検査をやめているんですね。それはバリウムを飲むと便秘になりがちだとか、そういう理由からですか?

時田:いえ、バリウムが飲めなかったんです(笑)。発泡剤を技師さんに向かって、ぶわーって吐き出してしまった。
それ以来バリウム検査はやめて、そのかわり胃カメラと、一緒に大腸内視鏡を5年に1回やることにしています。
とくに胃の痛みもないからそれでよいかなと思っているんですけど、胃の痛みがなくて胃に異常があるということはあるんですか。

奥田:あります。胃がんの初期症状は、ほとんど自覚できないです。

時田:あっ、あるんですか? さっき教えてくださった萎縮性胃炎も、自覚症状はないんですか?

胃がんの初期症状はほとんど自覚できないと知って驚く田村さん(左)と時田さん。

奥田:胃もたれとか食欲低下くらいで、はっきりした症状はないです。

がんの早期というのは基本的に自覚症状が出ないので、その段階で見つけようと思うと検査しかないですね。
胃カメラは、できれば3年に1度受けていただくとより効果的です。

田村:僕は胃カメラはやったことがなくて、どんなものかさっぱり分からないです。

奥田:田村さまはバリウム検査はやっていらっしゃるんですよね。それだけでもだいぶいいです。

「バリウムの検査と胃カメラ、どっちがいいか」というはなしを本に載せましたが、それぞれ一長一短あります。
一般的に、がんを発見できる確率というのは、バリウムだと80~90%ぐらい、あいだを取って85%とします。いっぽう、胃カメラは先生の技量によって差は出てしまうのですが、平均すると95%。

だけど、胃カメラで発見できる95%の中に、バリウムで発見できる85%がぜんぶ入っているわけではないんです。それぞれの検査方法に得意不得意があるから、ちょっとずれているということなんですよね。

どちらでもいいので受けていただくのはすごく大事。さらに、両方受けたとしたら、発見率がほとんど100に近くなるかもしれないです。

黒田:大腸の内視鏡検査は、5年に1回ぐらいでいいんでしょうか。大腸がんのほうが進行が遅いということはあるんですか。

奥田:そうですね、大腸がんはたしかにがんの中ではゆっくりめに進行するというはなしは聞きます。10年ぐらいかけて徐々に、何段階か変化を起こしながら、がんになっていくようです。
だから前回の大腸内視鏡検査で異常がなければ、3年から5年に1回でもいいかなと思います。

ただ前回ポリープなどが見つかった方は、またぽこぽこ出てくるおそれがあるから、もうちょっと頻繁に検査したほうがいいです。
内視鏡を受けない期間は便潜血検査をやっていただくと、より安心ですね。
検査をしていれば、ひどくなる前に発見できるので、ぜひ受けてください。

 

 

関連書籍

奥田昌子『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』

口、喉、食道、胃、小腸、大腸、肛門。私たちの体は巨大な一本の管=消化管でできている。食べたものを運び、消化し、吸収する消化管は生命活動に欠かせない高度な機能を担うが、繊細で不調をきたすことも多く、消化管の病気を抱える日本人は1010万人にのぼる。最も多いがんも消化管のがんだ。ところが軽い胃もたれや下痢は「そのうちよくなるだろう」と見過ごされ、その陰でがんをはじめ重大な病気が進行する。最新の研究をもとに、強い消化管をつくるために欠かせない食事や生活習慣、ストレス対処法を解説。「管」のすべてが腑に落ちる。

奥田昌子『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法』

肉中心の食生活をしてきた欧米人と比べ、魚と穀物中心だった日本人は摂取した脂肪を「皮下脂肪」としてたくわえる能力が低く、より危険な「内臓脂肪」の形で蓄積しやすい。放置すれば高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、各種がんや認知症の原因になることもわかってきた。 だが、体質だからと諦めるのは早い。内臓脂肪は皮下脂肪よりも落ちやすく、普段の食事や生活習慣の改善が減量に直結するのだ。 肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを、最新の論文をもとに解説。読むほどやせる内臓脂肪の新常識。

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胃腸を最速で強くする

奥田昌子氏著『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』の最新情報をお知らせします。

『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』とは……

口、喉、食道、胃、小腸、大腸、肛門。私たちの体は巨大な一本の管=消化管でできている。食べたものを運び、消化し、吸収する消化管は生命活動に欠かせない高度な機能を担うが、繊細で不調をきたすことも多く、消化管の病気を抱える日本人は1010万人にのぼる。最も多いがんも消化管のがんだ。ところが軽い胃もたれや下痢は「そのうちよくなるだろう」と見過ごされ、その陰でがんをはじめ重大な病気が進行する。最新の研究をもとに、強い消化管をつくるために欠かせない食事や生活習慣、ストレス対処法を解説。「管」のすべてが腑に落ちる。

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奥田昌子

京都大学大学院医学研究科修了。内科医。京都大学博士(医学)。愛知県出身。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何かを考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で30万人近くの診察にあたる。航空会社産業医を兼務。著書に最新刊『血圧を最速で下げる』のほか、10万部を突破した『内臓脂肪を最速で落とす』や、胃腸を最速で強くする欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』『日本人の病気と食の歴史などがある。

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