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胃腸を最速で強くする

2019.06.20 公開 ツイート

食物繊維、腹巻き……その胃腸健康法はマルかバツか? 奥田昌子

多くの現代人が悩む胃腸トラブルを、もっとも効果的に治す方法を説いた、奥田昌子さんの『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』(幻冬舎新書)が発売以来たちまち3刷と、反響をよんでいます。
本書を待ち望んでいたのが、胃腸に悩みをもつ幻冬舎営業担当チームの3人。
働き盛り世代の代表として奥田さんに直接相談する座談会を行ないました。
今回は「自己流の胃腸健康法」にまつわる悩みやギモンを、奥田さんにお答えいただきます。(構成/編集部)

*   *   *

黒田倫史(くろだ・のりふみ) 幻冬舎営業局書店営業担当チーム。42歳。「仕事柄、飲み会が多く、週4回、1回2合ぐらい飲んでいます」

時田有希子(ときた・ゆきこ) 幻冬舎営業局書店営業担当チーム。「夜中に腸が痛んで起きてしまうことがあります。病院で相談はしたんですが、胃腸の動きが悪いみたいです」

田村尚弘(たむら・なおひろ) 幻冬舎営業局書店営業担当チーム。52歳。「やせると聞いてバターコーヒーを飲み続けたのですが、胃もたれしただけでした」


食物繊維を「摂ってるつもり」の人が多い

時田:私はおなかの調子をよくするために食物繊維を摂るようにしているのですが、これは効果があるでしょうか?

奥田:それはすごくいいですね。でも、もしかしたら量が足りていないかもしれません
一般論としてですが、「便秘ぎみなので食物繊維を摂るようにしています」という方のおはなしを聞いてみると、量が少ないんですよ。
「ランチにひと皿、ゴボウのサラダをつけています」とかね。そんなものでは圧倒的に足りないんです。気休めなんですね、はっきり言うと。

ぜひ一度、山のように食べてみてください
たとえば鍋は、ふつうだったら白菜やおねぎを入れるけれども、ぜんぶワカメにしてみる。ビニールひと袋をぜんぶ入れるぐらいの勢いです。
きのこだったら家族みんなで1パック、2パック……ではなく、1人で4パック入れるようなつもりで食べてみるんです。

時田:すごい、キノコ4パックは一気に食べたことないです。キノコ鍋にするといいのかな。

キノコ4パックを煮てみるとこんな感じに。

奥田:煮ると、かさが減るからけっこう食べられますよ。
すると翌日、「あ、これぐらい摂らなきゃダメなんだ」ということがわかると思います。スッキリすると思います。毎日やる必要はないので、1度だけやってみてください。

ただ、ストレスも絡んでいる方だと、あまり急激にどっと入れるとお腹の痛みが出てしまうことがあります。
だから強い症状のある方は危険だからおすすめしませんが、そうでない方は思い切って食物繊維を摂る量を増やしてもいいのかな、という気がいたします。

時田:やってみよう! たくさん食べてもキノコやワカメだったらカロリーがないし。

田村:あ、カロリーないんだ。

奥田:私が最近刊行したレシピ本では、料理研究家の先生が食物繊維のたくさん入った料理を作ってくださったんです。
野菜は皮つきのまま、切り方はすごく大きくて、ズッキーニやきゅうりだと2つ3つにぽんぽんと切るだけ。そんな野菜が山のように出てくる。
それを食べると、量はたいしたことないのに、痛いぐらいお腹いっぱいに感じるんですよ。翌日はお通じもたいへんいいです。

ポイントは大きく切ることと、かために調理することです。するとよくかむので、満腹中枢を刺激できて満腹感が得られやすいんですよ。
胃腸を整えるのにも、内臓脂肪を落とすのにもおすすめです。

 

ブロッコリーやカリフラワーは胃がん予防に効果的

奥田:野菜は全般に胃がん予防にいいです。でも、これもちょっとじゃなくて、しっかり食べる。
「研究で○○が体にいいことがわかった」と、よくニュースになりますよね。そうした研究は動物実験などで、ものすごい量を食べさせていることがほとんどです。
それでようやく「効果がある」というのだから、人間にあてはめると、「ブロッコリーをちょっとトッピング」ではぜんぜん足りないです。
1株ぜんぶレンチンして、硬いままゴリゴリ食べる

一同:えー!(笑)

ブロッコリー1株、硬いまま……に驚く一同。

奥田:イメージとしてですけれどね。
これは日本人を対象におこなわれた研究で、野菜を何グラム食べているかでグループ分けして、その後10年間に胃がんになった人の割合を比較したものがあります。

すると、野菜をしっかり食べている人は、あまり食べない人とくらべて胃がんによる死亡率が25%も低かったのです。
なかでもアブラナ科のキャベツとかブロッコリーとかカリフラワーというのは、がん化の過程が起きにくくなるという欧米の研究データがあります。

がんはいきなりできるわけではなくて、何段階かでずるずると、何度も遺伝子の変化が起きてがんになっていくのですが、アブラナ科の野菜を摂るとがん化の過程が進みにくくなるわけです。
ぜひ、野菜をたくさん食べてください。

 

お腹を出して寝ても寝冷えすることはない!?

編集部:事前アンケートによると、田村さんは胃腸の調子が悪いときには温めるというのが、自己流の対処法なんですね。胃もたれするときに胃を温めるんですか?

田村:胃もそうだし、あと足かな。足が温まると体全体の循環がよくなっているなというのは、すごく感じるんですね。

奥田:おっしゃるとおりです。いいと思います。
粘膜の血流がよくなると抵抗力が強くなりますし、回復も速まるので、温めていただくのはいいと思います。
体のなかで一番冷えやすい足を温めて〈頭寒足熱〉すると、体全体に温かい血液を流すことができます。全身の血流を整える効果とかリラックス効果もあります。

編集部:ただ、『胃腸を最速で強くする』で奥田先生が教えてくださっているトピックに、「腹巻きは直接的にはそんなに意味がない」というおはなしがありましたね。

奥田:ええ、そうですね。お腹だけ温めるというのは、それほど意味はない。安心感とか心理的な効果のほうがある気がしますね。やってはいけないということはぜんぜんないですが。

時田:ええー、そうなんですね! すると「お腹が冷える」というのはまちがった表現ということですか。「お腹を出して寝たから寝冷えした」とか。

奥田:よっぽど寒い極限状態はべつとして、ちょっと寒いぐらいだったら、お腹というのは温度が保たれるんですよ。
手足が冷えても、お腹と胸と脳は体温が守られるようになっている。手足の血液までぜんぶ胴体に集中させてでも、守るしくみというのがそなわっているわけです。
だから、寝ているあいだにちょっとお腹が出ちゃったぐらいで壊すということは考えにくいですね。

腹巻きで温めるより効果があるのは、温かいものを口から入れて、胃腸を直接温めることです。そうやってじんわりお腹の内側から温めてしまうことがもっとも速いです。

奥田さん「腹巻きより、温かいものを口から入れるほうがお腹を温めることができます」


飲酒前に牛乳を飲んでも悪酔いは防げない

時田:胃腸を最速で強くする』に書いてあった、「牛乳を飲んでも胃はアルコールから守られない」というのは驚きました。

奥田:そうなんですよ、アルコールの粒子は細いから。

黒田:不思議です。牛乳は温めると表面に膜ができるし、口元にも白くついたりして、膜を作ってくれそうなのに、意外なことに胃では膜になっていないんですね。

奥田:アルコールは粒子がとても小さいので、牛乳の膜があってもすりぬけて、すぐに吸収されてしまいます。
急性アルコール中毒で運ばれてくる患者さんは、ほかのものを飲み込んだ場合なら吐かせることができるけれど、アルコールの場合はもう吸収されてしまっている。
だから点滴するなどで、体内にすでに入ったものを薄めたり、早く出したりするための手当てをしないと間にあわない、それぐらい速いんですよ。
牛乳でもなんでも、アルコールの吸収を防ぐために使うというのは無理なんです

黒田:そうですか、残念です……。

時田:胃が荒れるほど飲まなきゃいいんじゃない?(笑)

 

 

関連書籍

奥田昌子『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』

口、喉、食道、胃、小腸、大腸、肛門。私たちの体は巨大な一本の管=消化管でできている。食べたものを運び、消化し、吸収する消化管は生命活動に欠かせない高度な機能を担うが、繊細で不調をきたすことも多く、消化管の病気を抱える日本人は1010万人にのぼる。最も多いがんも消化管のがんだ。ところが軽い胃もたれや下痢は「そのうちよくなるだろう」と見過ごされ、その陰でがんをはじめ重大な病気が進行する。最新の研究をもとに、強い消化管をつくるために欠かせない食事や生活習慣、ストレス対処法を解説。「管」のすべてが腑に落ちる。

奥田昌子『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法』

肉中心の食生活をしてきた欧米人と比べ、魚と穀物中心だった日本人は摂取した脂肪を「皮下脂肪」としてたくわえる能力が低く、より危険な「内臓脂肪」の形で蓄積しやすい。放置すれば高血圧や糖尿病など生活習慣病はもちろん、各種がんや認知症の原因になることもわかってきた。 だが、体質だからと諦めるのは早い。内臓脂肪は皮下脂肪よりも落ちやすく、普段の食事や生活習慣の改善が減量に直結するのだ。 肉や炭水化物の正しい摂り方、脂肪に効く食材、効果抜群の有酸素運動などを、最新の論文をもとに解説。読むほどやせる内臓脂肪の新常識。

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胃腸を最速で強くする

奥田昌子氏著『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』の最新情報をお知らせします。

『胃腸を最速で強くする 体内の管から考える日本人の健康』とは……

口、喉、食道、胃、小腸、大腸、肛門。私たちの体は巨大な一本の管=消化管でできている。食べたものを運び、消化し、吸収する消化管は生命活動に欠かせない高度な機能を担うが、繊細で不調をきたすことも多く、消化管の病気を抱える日本人は1010万人にのぼる。最も多いがんも消化管のがんだ。ところが軽い胃もたれや下痢は「そのうちよくなるだろう」と見過ごされ、その陰でがんをはじめ重大な病気が進行する。最新の研究をもとに、強い消化管をつくるために欠かせない食事や生活習慣、ストレス対処法を解説。「管」のすべてが腑に落ちる。

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奥田昌子

京都大学大学院医学研究科修了。内科医。京都大学博士(医学)。愛知県出身。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何かを考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で30万人近くの診察にあたる。航空会社産業医を兼務。著書に最新刊『血圧を最速で下げる』のほか、10万部を突破した『内臓脂肪を最速で落とす』や、胃腸を最速で強くする欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』『日本人の病気と食の歴史などがある。

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