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地球外生命は存在する!宇宙と生命誕生の謎

2019.05.23 公開 ツイート

火星に刻まれた「水の痕跡」…かつて生命体が存在していた? 縣秀彦

「人類が21世紀中に、地球以外の星で生命を見つける可能性は50%以上」。こう断言するのは、国立天文台の縣秀彦氏だ。地球外生命は人類のような生命体なのか? それともはるかに進化した生命体なのか? そもそも生命はどのように誕生するのか? 人類究極の謎に迫った縣氏の著書、『地球外生命は存在する!』の一部をご紹介します。

*   *   *

太陽系内の「地球型惑星」

さて、太陽系の惑星のうち、固い表面を持つ岩石惑星は水星・金星・地球・火星の4つで、これらを地球型惑星と言います。

(写真:iStock.com/AlexLMX)

木星と土星は水素とヘリウムが主成分の巨大なガス惑星で、固い表面を持ちません。この2つの惑星は、木星型惑星または巨大ガス惑星と呼ばれます。また、天王星と海王星は表面がガス惑星に似ていますが、内部はほとんどが氷なので巨大氷惑星として区別されています。

いずれにせよ、木星から海王星はその表面も惑星内部も水が液体の状態で存在できる環境ではないため、有機物生命体の存在は考えにくいでしょう。地球上の生命体とは異なる構造の生物が、宇宙に存在する可能性は全く否定できませんが、少なくとも知的生命体が存在する可能性は皆無と言ってよいでしょう。

したがって、地球生命と同様の有機物生命体が宿る可能性のある天体は、ハビタブルゾーンに存在する地球型惑星、あるいは木星や土星の周りを回る大型の衛星たちだと考えられています。

衛星は惑星よりも小型で、氷か岩石でできているものがほとんどです。恒星からの光によって熱を受け取るだけでなく、惑星との関係で何らかの熱源を持つことができれば衛星上でも生命が誕生するかもしれません。

また、太陽系には準惑星や小惑星、彗星なども存在していますが、サイズが小さいため、大気を維持することや液体の水をその内部に大量に保つことは難しく、やはり有機物生命体が繁栄していることは期待できないでしょう。

一方、地球型惑星の中でも水星はサイズが小さく、地球の衛星である月と同様に大気を保つことができません。仮に大きかったとしても太陽からの距離が近すぎるため、水が水蒸気となってしまいます。

地球のお隣の惑星、金星はどうでしょうか。

金星は地球とほぼ同じサイズで、生命が宿るには最適な大きさです。しかし、地球よりやや太陽に近かったため、46億年前に惑星が形成された際、大量の二酸化炭素の大気による温室効果で表面温度が460℃、90気圧もの過酷な環境となりました。

また、ハビタブルゾーンのやや内側に位置しているので、地球で起きたような、原始大気に含まれていた水蒸気が冷えて海をつくるとともに、大気中の二酸化炭素のほとんどを水が溶かして海中に運ぶというメカニズムも発生しませんでした。

このため、原始金星の大気中に含まれていた水蒸気は、次第に太陽からの紫外線によって水素と酸素に分離し、大気外へと運ばれていってしまったのです。

こうして私たちに一番近い惑星である金星は、残念ながら生命が宿るには過酷な環境のまま、現在を迎えていると考えられています。

「火星」がもっとも期待できる 

では、火星はどうでしょうか? 

(写真:iStock.com/MR1805)

火星は、その質量が地球の10分の1しかありません。重力によって保つことのできる大気の量が地球よりも少ないため、その分温室効果が低く、現段階で大気や火星表面を十分に保温できる状態にはなっていません。

しかし、かつて火星の表面には大量の液体の水が存在していたことがほぼ確実視されており、そのときに生命が誕生したかどうかが太陽系内の生命探しにおいて興味の尽きない点です。

火星は地球のすぐ外側を公転している太陽系の第4惑星で、地球から観察すると、2年2カ月ごとに地球に接近していることがわかります。まずは、火星がどんな惑星なのか詳しく見ていきましょう。

火星は地軸が25度傾いているため、地球と同じように四季の変化が起こります。しかし、時期と場所により気温は20℃~マイナス140℃まで幅があり、平均気温はマイナス63℃と低温。大気はほとんどが二酸化炭素ですが、重力は地球の約3分の1、気圧は地球のおよそ0・6%しかありません。

火星が赤く見えるのは、その表面が鉄さび、すなわち酸化鉄を含む砂で覆われているからです。表面は起伏に富んでおり、太陽系の中でもっとも高い火山、オリンポス山は高さ約2万5000メートル、また、マリネリス峡谷は長さ約4000キロメートル、深さ5~10キロメートルにも及ぶ巨大な峡谷です。表面を覆い尽くすような、大規模な砂嵐が周期的に発生するのも火星の特徴です。

火星の北極・南極には、ドライアイスと氷からできた極冠があり、その地下には永久凍土の形で多量の水が存在するのではないかと考えられています。

太陽系のハビタブルゾーンの端に位置する火星ですが、その質量は地球の10分の1と小型の地球型惑星です。その分、地球よりも早く進化したと考えられ、かつては大量の水がその表面を覆っていたというのです。

水の痕跡が示すように、果たして火星の地下に生命は存在しているのでしょうか。

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地球外生命は存在する!宇宙と生命誕生の謎

果たして現在の科学は、どこまで地球外生命に迫っているのか?そもそも、地球外生命は存在するのか?

研究国立天文台天文情報センターの縣秀彦(あがたひでひこ)さんの新書『地球外生命は存在する!』からの短期集中連載です。

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縣秀彦

1961年生まれ。自然科学研究機構国立天文台准教授、天文情報センター普及室長。国際天文学連合国際普及室長。専門は天文教育と科学コミュニケーション。東京大学教育学部附属中学・高校教諭を経て現職。日本天文学会天文教材委員長、日本科学教育学会理事、日本サイエンスコミュニケーション協会副会長、天文教育普及研究会長などを歴任するほか、テレビやラジオ等でも活躍。「科学を文化に」「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。著書多数。

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