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地球外生命は存在する!宇宙と生命誕生の謎

2019.05.25 更新

地球外生命の存在が噂される土星の衛星「エンケラドス」とは縣秀彦

「人類が21世紀中に、地球以外の星で生命を見つける可能性は50%以上」。こう断言するのは、国立天文台の縣秀彦氏だ。地球外生命は人類のような生命体なのか? それともはるかに進化した生命体なのか? そもそも生命はどのように誕生するのか? 人類究極の謎に迫った縣氏の著書、『地球外生命は存在する!』の一部をご紹介します。

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断層から「間欠泉」が吹き上がる

いま研究者たちがもっとも心惹かれているのは、「エンケラドス」という無名の衛星です。

(写真:iStock.com/dottedhippo)

エンケラドスは、土星から24万キロメートル離れたところを33時間ほどで公転しています。直径は平均500キロメートル程度で、土星の衛星としては6番目に大きな衛星です。その成分は、約60%が岩石成分、残り40%は氷成分であろうと推定されています。

カッシーニの探査から、エンケラドスの北半分はクレーターに覆われており、よくある衛星の表情であることがわかりますが、南半球は一変してクレーターがありません。また、南極近くでは、平行に走る長さ130キロメートル、深さ数百メートルもの巨大な4本の裂け目が見つかりました。

研究者が注目しているのは、この断層から噴き上がる間欠泉です。まるで火山噴火のような活動は、木星の衛星イオや海王星の衛星トリトンでも見つかっていますが、それらと比べても、エンケラドスの噴き上がる氷の粒子は太陽系内でもっとも壮大な眺めと言えましょう。この氷の噴火は、土星の環のひとつであるEリングを形成していることが判明しました。

また、カッシーニからのデータを詳しく解析することにより、エンケラドス内部の比較的浅い場所に地下海が存在することが明らかになりました。さらに2015年に、東京大学の関根康人博士らの研究グループが間欠泉の氷粒子を分析した結果、エンケラドスの地下海には熱水が存在することを突き止めました。2017年4月には、NASAも別の手法で熱水の存在を確認しています。

氷粒子の中には、わずかですが有機化合物も見つかっています。また、ナトリウム塩も含まれているため、エンケラドスの海には液体の水だけでなくナトリウム鉱物なども溶け込んでおり、生命を育む環境が整っている可能性があるのです。

このように、エンケラドスにはアストロバイオロジー研究者を魅了する「液体の水、有機物、定常的なエネルギーの供給」の3点が揃っているとも考えられており、さらなる探査を期待する声が広がっています。

豊富な大気を持つ「タイタン」

太陽系の衛星の中で唯一豊富な大気を持つ土星の衛星タイタンに、生命活動を夢見る研究者も数多くいます。

(写真:iStock.com/manjik)

土星を小型望遠鏡で見たことのある人は、その環の見事さに心奪われたことと思いますが、よく観察すると、環の周りに明るい衛星をひとつ、簡単に見つけ出すことができます。これが、1655年にオランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスによって発見された衛星タイタンです。

土星には、現在60を超える衛星が見つかっていますが、その中でタイタンは惑星の水星よりも大きく、木星の衛星ガニメデに続いて太陽系で2番目のサイズの衛星です。

タイタンに大気が存在することは、1903年にはすでに地上の観測から示唆されていましたが、1944年に同じく地上観測から、大気中のメタンの存在が確認されました。

NASAのボイジャー1号は、1981年にタイタンに接近し、タイタンの大気の主成分は窒素であることや、その表面気圧は地上の1・5倍にも上る濃密な大気であることを測定しました。また、ボイジャー1号はタイタンの大気中からエタンやアセチレン、プロパンなど、多数の有機化合物を検出しています。

一方、2004年に土星に到達した探査機カッシーニも、タイタンを重点的に調査しました。「ホイヘンス」と名づけられたプローブ(観測機器を搭載した小型の着陸用探査機)をタイタンの大気中に下ろし、大気の成分や温度、気圧などの環境要素の測定に成功します。

タイタンの大気のおもな成分は窒素(97%)とメタン(2%)ですが、大気中では液体メタンの雨が降り、表面にはメタンやエタンの川や湖が存在することもわかりました。

メタンとエタンのどちらも簡単な構造ですが、炭素を含む有機化合物です。気温が低く化学反応があまり進まない環境とはいえ、タイタンに有機物生命体が存在する可能性は否定しきれません。

さらに興味深いことに、タイタンの表面は気温が低すぎて液体の水がそのまま存在できる環境ではない代わりに、タイタン内部に液体の水が存在する可能性が、ホイヘンスの測定により示されたのです。この表面下の海は、10%程度のアンモニアを含む水ではないかと推測されています。

太陽系においては、火星をはじめ、エウロパやエンケラドス、そしてタイタンが今後の生命探しの最重要ターゲットであると考えられるでしょう。

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地球外生命は存在する!宇宙と生命誕生の謎

果たして現在の科学は、どこまで地球外生命に迫っているのか?そもそも、地球外生命は存在するのか?

研究国立天文台天文情報センターの縣秀彦(あがたひでひこ)さんの新書『地球外生命は存在する!』からの短期集中連載です。

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縣秀彦

1961年生まれ。自然科学研究機構国立天文台准教授、天文情報センター普及室長。国際天文学連合国際普及室長。専門は天文教育と科学コミュニケーション。東京大学教育学部附属中学・高校教諭を経て現職。日本天文学会天文教材委員長、日本科学教育学会理事、日本サイエンスコミュニケーション協会副会長、天文教育普及研究会長などを歴任するほか、テレビやラジオ等でも活躍。「科学を文化に」「世界を元気に」を合言葉に世界中を飛び回っている。著書多数。

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