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藤倉大の無限大∞

2019.02.27 更新

第1回

Akiko's Piano(明子のピアノ)を追いかけて藤倉大

僕は、中学の卒業式の1週間後、大阪からイギリスに一人で渡って、その26年後、41歳の今もロンドンに住んでいる作曲家です。

1977年大阪生まれ。作曲家。15歳で渡英し、D・ランズウィック、E・ロックスバラ、G・ベンジャミンに師事。国内外の作曲賞を多数、受賞(2019年は3回めの尾高賞を受賞)。数々の音楽祭、音楽団体から作品を委嘱され、いま「世界で最も演奏される現代音楽作曲家」と呼ばれる。2010年2月「情熱大陸」で特集され大反響。先日、映画「蜜蜂と遠雷」の中の課題曲「春と修羅」を作曲したことが発表されたばかり。
http://www.daifujikura.com

ときどき「現代音楽の作曲家」と言われてしまうこともありますが、いろんな国のオーケストラ、オペラハウス、演奏者たちに音楽を作ったり、時にはノルウェーの即興アーティストたちとコラボしたり、JAPANというロックバンドの元ヴォーカリストで坂本龍一さんとの共演でも有名なデヴィッド・シルヴィアンとコラボしたりもしています。

〈新しい音を赤ちゃんから大人まで〉をテーマにした東京芸術劇場での音楽祭「ボーン・クリエイティヴ・フェスティヴァル(ボンクリ・フェス)」の芸術監督もやってます。

さて。

僕は、2008年に「アンペール(Ampere)」というタイトルのピアノ協奏曲を作曲し終えた時、あまりに難産だったせいで、これを人生最初で最後のピアノ協奏曲にしようと思った。

なのに11年後の今、なぜかピアノ協奏曲4番「Akiko’s Piano(明子のピアノ)」に追われている。

先週は名古屋で名古屋フィルハーモニー交響楽団(名フィル)が「ソラリス組曲」という、僕のオペラ「ソラリス」をオーケストラ用に自分で編み直した曲を世界初演(2月22日23日)するのに立ち会ったし、そのあと広島に行って件(くだん)のピアノ協奏曲4番「Akiko’s Piano」の作曲の準備。世界初演を演奏するのは、なんと、マルタ・アルゲリッチさん(の予定)だ。

ゲネプロの様子。プログラム順で僕の「ソラリス」組曲から始まりました。この2月22日が世界初演。
名フィルでの公演(2019年2月22日、愛知芸術劇場)の様子。指揮はアントニ・ヴィットさん。
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僕が日頃、住んでいて作曲をする場所はロンドン。なのにどうして広島なのか? マルタさんに曲を書くのになぜ明子? 明子って誰? など不思議要素がいっぱいのこのプロジェクト。

その理由は、この作品が、いつもの僕の音楽と違って大変、悲しく重いストーリーを持っていることだ。

 

 

原爆から生き残ったアップライト・ピアノ、通称「被爆ピアノ」が広島にある。

マルタ・アルゲリッチさんは、ここ数年、広島の「Music for Peace (平和のための音楽)」というプロジェクトに関わっていて、その一環として、この被爆ピアノを演奏している。「この被爆ピアノを使ってマルタさんのためにピアノ協奏曲を書いて欲しい」と広島交響楽団から昨年、僕は依頼された。

広島には、これまで小学生の時の修学旅行でしか行ったことがない。覚えているのはもちろん原爆資料館、もみじ饅頭、消灯後枕投げ大会やって先生に怒られたことくらいで、もう30年近く前のこと。

僕の周囲の人々は最初、世界で一番有名なピアニストのために曲を書くのだ、と大変ワクワクしていたけど、僕はいつも人とは反対の発想をするみたいで、この作品の主役はマルタさんではなく、このピアノだ、と思った。このピアノが辿った人生を調べることから始めた。

このピアノを管理なさっている方と1日5通くらい長いメールを、時には毎日やりとりし、このピアノに関することを調べ教えてもらった。

このピアノは河本明子(かわもと・あきこ)さんという、19歳で亡くなった女子学生のもの。明子さんは大変優秀で聡明な子だったようで膨大な量の日記を書いていて、それが今でも残っている。

驚くのは、なんとピアノも河本明子さんもアメリカ生まれで、アメリカ育ちということだ。

明子さんとピアノに何が起こったのだろうか。

 

(続きは第2回へ)

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藤倉大の無限大∞

ロンドン在住、41歳、作曲家。これまで数々の著名な作曲賞を受賞してきた藤倉大の、アグレッシブな創作生活の風景。音の世界にどっぷり浸かる作曲家は、日々、何を見、何を感じるのか。

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藤倉大 作曲家

1977年大阪生まれ。作曲家。15歳で渡英し、D・ランズウィック、E・ロックスバラ、G・ベンジャミンに師事。国内外の作曲賞を多数、受賞(2019年は3回めの尾高賞を受賞)。数々の音楽祭、音楽団体から作品を委嘱され、いま「世界で最も演奏される現代音楽作曲家」と呼ばれる。2010年2月「情熱大陸」で特集され大反響。先日、映画「蜜蜂と遠雷」の中の課題曲「春と修羅」を作曲したことが発表されたばかり。http://www.daifujikura.com

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