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脳が冴え続ける最強メソッド

2018.06.14 更新

脳は、寂しさにめっぽう弱い。会話や交流が認知症予防に効く意外な理由寒竹泉美(サイエンス・ライター)

世界のビジネスエリートたちは、肉体をメンテナンスするのと同じように、脳のケアにも投資を始めています。日本でも昨年、認知症を予防するための脳トレーニングジム「ブレインフィットネス®」の誕生が話題に。5月にはこの脳トレーニングジムのプロデューサー髙山雅行氏と脳科学者の杉浦理砂氏の共著『ブレインフィットネスバイブル 脳が冴え続ける最強メソッド』も刊行されます。
 今回は認知症と孤独の関連性について。書籍の内容の一端をご紹介するコラムシリーズです。

孤独が脳に悪い理由

 孤独が認知症のリスクを高めると聞いて、意外に思う人は少ないかもしれません。ひとりでいると食事に気を配らなくなったり、生活が不規則になったり、気持ちの落ち込みなどが起こったりして、健康状態を悪化させる可能性が高いからです。
 でも、実は、孤独は体の健康状態に影響するだけではありません。社会交流が少なくなると、脳は衰えやすくなるのです。

 脳は部位によって独自の機能を担っています。会社にたとえれば、業務の内容によって担当部署がわかれているようなものです。
 社会交流というのは、複数の部署が協力して働かないとこなせない複雑なミッションです。日ごろ何気なくやっている動作を少し思い出してみてください。面と向かって話しているときにわたしたちがしていることは、話の内容を理解するだけではありません。相手の仕草や表情や声の感じから「本当のところ、どう感じているのか」と感情を想像したり、相手の言うことに応えて自分の考えを言葉で表現したり、さまざまな条件に照らし合わせながら臨機応変に意思決定を行なったりと、脳はかなり忙しく活動しているのです。
パーティーや交流会などで大勢の初対面の人としゃべって、どっと疲れたという経験がある人も多いでしょう。これは、脳が複数の部署を総動員してフル活動で働いていた証拠です。疲れて当然だったのです。

 一方、誰とも交流をせず、ひとりきりで過ごしていると、相手の表情を読み取ったり、機転を利かせて発言したりする必要はありません。いつもの慣れた動作を行っていれば、予想外のことも起こりにくくなります。これは、脳にとっては刺激が少ない生活です。運動せずにゴロゴロ寝転がってばかりいると筋肉が衰えてしまうように、脳も使わないと衰えてしまいます。

認知症になりにくい職業、なりやすい職業 

 「社会交流がない」と言うと、ひとり暮らしの高齢者ばかりを思い浮かべがちですが、職業によっても社会交流の機会は大きく変わってきます。

 書籍『ブレインフィットネスバイブル 脳が冴え続ける最強メソッド』には、職種と認知機能について調べた研究が紹介されています。
2016年7月にカナダのトロントで開催された第31回国際アルツハイマー型認知症協会国際会議で、米国ウィスコンシン大学アルツハイマー型認知症研究センターの研究チームが報告した研究成果です。

 両親のいずれかがアルツハイマー型認知症で、本人は正常な認知機能をもつ284人(平均年齢60歳)を対象に調査を行ったところ、人との交流が多い職業に就いている人は、脳の血管に障害があっても、記憶力や問題解決能力が低下しておらず、認知機能の衰えが少ないことが判明しました。

 この研究では、人との交流が多い複雑な仕事として、医師、ソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、心理学者、教師、弁護士、牧師などが挙げられています。
逆に、人から指示を受けて単純な労働をする職業の人は認知症になりやすいことも、同研究で示されました。

 なぜ、このような差が現れるのでしょうか。人とあまり話さない職業に就いている人はどうすればいいのでしょうか。

社会交流と脳の関係を知れば対策可能

 私たちの体を形作っている「細胞」には寿命があります。場所によって違いはありますが、細胞の多くはわたしたち自身よりも寿命が短く、生涯の途中で死んでしまいます。次々と細胞が死ぬ場所では、一定の周期で新しく細胞が生まれ、死んだ細胞の代わりを務めています。

 ところが、脳で情報の伝達を担当している「神経細胞」は新しい細胞はほとんど生まれてこないことで知られています。神経細胞の寿命は他の細胞よりもずいぶん長いのですが、やはり加齢とともに衰え死んでしまいます。また、脳の血管の一部が詰まったり血液の流れが悪くて栄養や酸素が届かなくなったりしても、死んでしまいます。さらに、長期間刺激がなく使われない細胞も衰えて死んでいきます。

 神経細胞が死んでしまうと、新しい細胞が代わりを務めることはないために、欠番状態になります。たくさんの神経細胞がごっそり死んでしまうと、当然、脳の機能に支障が出ます。人数の足りなくなった部署は機能不全に陥るのです。

 このことから、脳を衰えさせないためには、健康的な生活をして、脳の細胞をなるべく減らさないようにすることが大切だということがわかると思います。それと同時に、どこかの細胞が欠けたときにフォローできる「補欠の細胞」を育てることも大切です。

『ブレインフィットネスバイブル』によると、普段から複数の脳の部署を働かせて複雑な活動を行なっていると、このような補欠の細胞を育てることができるといいます。いつも同じ脳の場所を使う決まりきった生活をしていると、そのほかの使われない神経細胞は衰えてなくなってしまいますが、普段から複数の脳の場所を使っていれば、ある領域の細胞が衰えて死滅した場合に、その部分のバックアップとして働く細胞をたくさん育てておくことができます。そのような細胞は、待機状態で「ベンチ」に座っているようなものです。脳の血管に障害が起きて、一部の細胞が死んでしまったら、その補欠の細胞がフォローすることができ、脳の機能を衰えさせず、認知症を発症せずにもちこたえることが可能なのです。

 新たな世界に飛び込んだり、やったことのない遊びや仕事に挑戦したり、自分とは違う考えの人たちと交流したりすることで、脳は鍛えられます。特に、好奇心をもってわくわくしているときは、脳内に「ドーパミン」が放出され、意欲を向上させ、神経細胞のネットワーク作りを後押しします。

 いつもどおりの慣れた行動から離れて、新しいチャレンジをし、いつも使っている脳の場所とは別の場所を刺激して、神経細胞の補欠メンバーを増やしてみませんか?
社会交流と脳の関係について、もっと詳しく知りたい方は『ブレインフィットネスバイブル』(幻冬舎)をご覧ください。

関連書籍

高山雅行/杉浦理砂『ブレインフィットネスバイブル 脳が冴え続ける最強メソッド』

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