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本屋の時間

2017.11.15 更新 ツイート

第25回

『365日のほん』が発売になります(3)「これでレイアウトは決まった」辻山良雄

 

原寸大の束見本。文庫本と同じサイズでハードカバー。「小さい本にしよう」というのは坂上さんのアイデアだが、出来上がってみるとこの小ささが全てのように思える。

「手にしていることがしみじみとうれしくなる、〈雑貨〉のような本にしたい」。これが『365日のほん』を作るにあたり、まず考えたことです。実際に店頭で見ていると、いま売れている本にはどこかかわいげがあるものが多いと、以前より感じていました。

 しかし、ただ本の紹介文を365冊並べただけでは途中で飽きてしまうことは明らかで、何か飽きさせない工夫が、本の設計として必要です。自分の書く文章は棚に上げ、「この本ではデザイナーさんの仕事が重要になりますね」と、打ち合わせのとき担当編集の坂上陽子さんに話しました。

「どなたか、希望のデザイナーさんはいますか」と坂上さんに聞かれて、まず思い浮かんだのが漆原悠一さんです。漆原さんは文筆家の甲斐みのりさんの本をはじめ、多くのブックデザインを手掛けられており、どの本を見ても実用的でありながらその本の特徴を活かしたレイアウトや文字組が魅力的だと思っていました。http://www.tento-design.jp 坂上さんから依頼して頂いたところ、漆原さんはブックデザインを引き受けてくださるとのこと。これは『365日のほん』にとって、幸先が良い話です。

 文章を書く前に、一ページに書く文字量の目安を知りたいと思い、漆原さんに幾つかレイアウトの試作をお願いしました。

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最初のレイアウト案①

 

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最初のレイアウト案②

 最初に挙がってきた案は、左詰めで一文ずつ改行している(1)です。詩のようにも見えますが、何かの格言のようで固い感じがします。一方で、改行をなくし通常の文にした(2)は自然ですが、あとでイラストは入れるにせよページの上部しか使っていない印象はぬぐえません。短かく言い切るような本の紹介文には、白い部分が目立ってさみしい感じがしました。

 これを見た坂上さんから、一つ提案が出ました。「文章を少しずつ上下にずらしながら、レイアウトしてみるのはどうでしょうか」

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レイアウトの修正案

 一週間後に送られてきたレイアウトの修正版を見ると、全体の流れに動きが出てくるのが感じられ、大きく印象が変わりました。文を上下にずらすことで、文量の少なさも気にならなくなり、見た目や読後感に、リズムが生まれるようになりました。ジャンルや月の表記を端にまとめ、ページを大きく使うとともに、アイコン表示も入れることで、ページに柔らかさも生まれます。「これでレイアウトは決まった」と、心のなかで密かにガッツポーズが出ました。

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本文の色校正。印刷で色を出しつつ、小さな文字でも読みやすいように色を調整していく

『365日のほん』では、季節ごとに違う文脈を作り、そのなかに選んだ本を当てはめています。季節を追うごとに、やわらかな本から次第に本格的な本へと向かうような流れですが、似たようなページが延々と続くのではなく、視覚的にも気持ちの切り替えどころを作りたいと思い、季節により紙の色を変えています。

 色のついた紙を使うことはそれだけコストがかかるので「ちょっと難しいですね……」と最初は言われており、諦めていました。しかしこれも漆原さんのアイデアで、印刷の工夫から色味を出していくことにより、理想のものに近づけることができました。プロのかたが出してくる発想には、ただただ驚くばかりです。

 

今回のおすすめ本

 辻山良雄『365日のほん』(河出書房新社)

 手に取りたくなるような本になりました。全国どこの新刊書店でもご注文、ご購入いただけますが、Titleでご予約、ご購入のお客さまには特典として「四季のカード」を差し上げます(4枚1セット。1枚はシークレットとして、ある写真家の作品が使われております)。現在、続々とご予約をいただき、ありがとうございます!

 

 

◯Titleからのお知らせ
6月1日(月)から、書店・カフェともに店頭での営業を行います。短縮営業です。詳細はこちらをご覧ください。

◯2020年7月9日(木)19時30分~ オンライントーク 参加費無料

本の世界をめぐる夜会
『学びのきほん 本の世界をめぐる冒険』刊行記念 オンライントーク

「学びのきほん」シリーズと連動するイベント、今回は『本の世界をめぐる冒険』の刊行記念。登壇者は、著者のナカムラクニオさん、この本の校正を担当した牟田都子さん、店主辻山良雄の3人。司会進行は「学びのきほん」編集担当の白川貴浩さん。各々が経験してきた「本をめぐる冒険」をざっくばらんに語り合います。オンラインのアドレス等、詳細はTitleホームページへ。

◯2020年7月2日(木)~ 2020年7月27日(月) Title2階ギャラリー

OTHERS
中山信一個展

コロナウィルスの影響により延期となった中山信一個展「OTHERS」を、7月2日より開催。新作『OTHERS』に収録されている原画30点を展示販売する他、Titleでの展示のために制作した、店主・辻山との合作短編小説「ねこのひかり」(文・辻山良雄 絵・中山信一)の原画も合わせて展示します。


 

◯朝日新聞(耕論)2020.6.18
自粛要請と自由 新型コロナ 辻山良雄さん、戸羽太さん、青井未帆さん

◯nippon.com インタビュー 2020.5.4
たたかう「ニッポンの書店」を探して
本を自分で紹介し、売ることに賭ける-東京荻窪「Title」


◯『本屋、はじめました』増補版がちくま文庫から発売、たちまち重版!!

文庫版のための一章「その後のTitle」(「五年目のTitle」「売上と利益のこと」「Titleがある街」「本屋ブーム(?)に思うこと」「ひとりのbooksellerとして」「後悔してますか?」などなど)を書きおろしました。解説は若松英輔さん。
 


 

 

◯辻山良雄・文/nakaban・絵『ことばの生まれる景色』ナナロク社

店主・辻山が選んだ古典名作から現代作品まで40冊の紹介文と、画家nakaban氏が本の魂をすくいとって描いた絵が同時に楽しめる新しいブックガイド。贅沢なオールカラー。

 

 ◯辻山良雄『365日のほん』河出書房新社

春、夏、秋、冬……日々に1冊の本を。書店「Title」の店主が紹介する、暮らしを彩るこれからのスタンダードな本365冊。

 

 ◯辻山良雄『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』苦楽堂 ※5刷、ロングセラー!! 単行本

「自分の店」をはじめるときに、大切なことはなんだろう?物件探し、店舗デザイン、カフェのメニュー、イベント、ウェブ、そして「棚づくり」の実際。

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東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

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辻山良雄

Title店主。神戸生まれ。書店勤務ののち独立し、2016年1月荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店 「Title」を開く。書評やブックセレクションの仕事も行う。著作に『本屋、はじめました』(苦楽堂)、『365日のほん』(河出書房新社)がある。

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