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本屋の時間

2017.05.01 更新 ツイート

第11回

その昔〈客注〉をとるのが嫌でした辻山良雄

 Titleは小さな本屋ですので、当然世の中に出ている本のすべてを置いている訳ではありません。しかしどんなに大きな店やネット書店でも、その時たまたま売り切れていたり、様々な理由から取り扱いができない出版社の本も多いので、すべての本を揃えるということは〈夢〉に近い話だとも言えます(限りがある店頭だからこそ、そこに何を置くかという面白味が生まれてきます)。

 

「この本の在庫はありますか」と聞かれた時、ない場合はそれで終わらせてはいけません。問屋の在庫を調べ、問屋に在庫がある本に関しては到着予定の日付もわかりますので、「ご注文頂ければ、明後日入る予定です」と入荷の日付までお伝えするようにしています。日付がわかれば安心するのか、急いでいたり遠くから来ている人以外は、大概注文してくれます。「読みたい」という気持ちを損なわなければ、そこまですぐでなくても構わないという方は、案外多いのではないでしょうか。

 以前、書店チェーンに勤めていた頃は、この〈客注(きゃくちゅう)〉を取るのが嫌でした。当時は途中の流通の段階で、事故があり本の入荷が遅れたり、汚れた本が入ってきたりしてトラブルになることも多かったからです。人は無意識に〈厄介なこと〉を避けようとしますから、なるべく注文は受けないように、及び腰になる書店員の姿も多く見かけました(もちろんどこのチェーンでも、売上に繋がる注文は積極的に取るように、会社からは言われております)。

 しかし〈客注〉は同時に、店の固定客作りにも繋がります。一度注文をしてくれたお客さまは、その後店を何度もご利用することが多いですし、先ほど書いたような事故が起こったとしても、それを前もってきちんとお伝えすれば、納得される方がほとんどです。

 そうしたコミュニケーションをお客さまと繰り返すうちに、その方のことをだんだんと理解するようになります。例えばある本が発売になり、それを喜びそうな人の顔が思い浮かぶと、言われなくてもその本を注文しておくようになります。雑談から、店にないけれども必要な本を教えてもらうこともあるでしょう。そうした関りがいくつも増えてくるのが、店をやっている醍醐味とも言えます。

 

 今回のおすすめ本

『月刊ドライブイン vol.1』取材・写真・文橋本倫史(HB編集部)

 前回はリトルプレスの話をしましたが、これはいまTitleで一番人気のリトルプレス。高度経済成長と共に、全国の国道沿いや観光地に増えていったドライブイン。その現状とそこで働く人を見つめたレポート。

「いま取材しないと、何年かすればなくなってしまう」という危機感にかられ、制作を急いだ橋本氏。その切迫感は、静かな筆致からも伝わってくる。

 

◯Titleからのお知らせ
6月1日(月)から、書店・カフェともに店頭での営業を行います。短縮営業です。詳細はこちらをご覧ください。

◯2020年7月9日(木)19時30分~ オンライントーク 参加費無料

本の世界をめぐる夜会
『学びのきほん 本の世界をめぐる冒険』刊行記念 オンライントーク

「学びのきほん」シリーズと連動するイベント、今回は『本の世界をめぐる冒険』の刊行記念。登壇者は、著者のナカムラクニオさん、この本の校正を担当した牟田都子さん、店主辻山良雄の3人。司会進行は「学びのきほん」編集担当の白川貴浩さん。各々が経験してきた「本をめぐる冒険」をざっくばらんに語り合います。オンラインのアドレス等、詳細はTitleホームページへ。

◯2020年7月2日(木)~ 2020年7月27日(月) Title2階ギャラリー

OTHERS
中山信一個展

コロナウィルスの影響により延期となった中山信一個展「OTHERS」を、7月2日より開催。新作『OTHERS』に収録されている原画30点を展示販売する他、Titleでの展示のために制作した、店主・辻山との合作短編小説「ねこのひかり」(文・辻山良雄 絵・中山信一)の原画も合わせて展示します。


 

◯朝日新聞(耕論)2020.6.18
自粛要請と自由 新型コロナ 辻山良雄さん、戸羽太さん、青井未帆さん

◯nippon.com インタビュー 2020.5.4
たたかう「ニッポンの書店」を探して
本を自分で紹介し、売ることに賭ける-東京荻窪「Title」


◯『本屋、はじめました』増補版がちくま文庫から発売、たちまち重版!!

文庫版のための一章「その後のTitle」(「五年目のTitle」「売上と利益のこと」「Titleがある街」「本屋ブーム(?)に思うこと」「ひとりのbooksellerとして」「後悔してますか?」などなど)を書きおろしました。解説は若松英輔さん。
 


 

 

◯辻山良雄・文/nakaban・絵『ことばの生まれる景色』ナナロク社

店主・辻山が選んだ古典名作から現代作品まで40冊の紹介文と、画家nakaban氏が本の魂をすくいとって描いた絵が同時に楽しめる新しいブックガイド。贅沢なオールカラー。

 

 ◯辻山良雄『365日のほん』河出書房新社

春、夏、秋、冬……日々に1冊の本を。書店「Title」の店主が紹介する、暮らしを彩るこれからのスタンダードな本365冊。

 

 ◯辻山良雄『本屋、はじめました―新刊書店Title開業の記録』苦楽堂 ※5刷、ロングセラー!! 単行本

「自分の店」をはじめるときに、大切なことはなんだろう?物件探し、店舗デザイン、カフェのメニュー、イベント、ウェブ、そして「棚づくり」の実際。

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本屋の時間

東京・荻窪にある新刊書店「Title(タイトル)」店主の日々。好きな本のこと、本屋について、お店で起こった様々な出来事などを綴ります。「本屋」という、国境も時空も自由に超えられるものたちが集まる空間から見えるものとは。

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辻山良雄

Title店主。神戸生まれ。書店勤務ののち独立し、2016年1月荻窪に本屋とカフェとギャラリーの店 「Title」を開く。書評やブックセレクションの仕事も行う。著作に『本屋、はじめました』(苦楽堂)、『365日のほん』(河出書房新社)がある。

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