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日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない

2016.05.27 更新 ツイート

変態になれない人は生きづらい二村ヒトシ

日本に蔓延するセックスへの絶望について、湯山玲子さんと二村ヒトシさんが真摯に大胆に語り合った『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』序章の試し読みも好評でした。最後に、お二人のあとがきをそれぞれお届けします。「性」への思いが正直に吐露されています。

湯山さんに突きつけられた自分の都合のよさ

 本書のために、湯山さんと話し、構成された原稿を読み、言葉を足したり直したりしていくのは非常に時間がかかった。最初にお話しさせてもらったのが2013年の4月だから、本になるまで丸3年以上かかっている。

 それは湯山さんがこのあとのあとがきで書かれているように「大きく方向性を変えた」ためというのもあるが、僕のほうで時間がかかったのはもうひとつ理由があった。怖かったからだ。

 というのを、「怖い」と書くべきか、「恐い」と書くべきか考えた。「恐」という字は、恐竜みたいな、知恵を使ってうまく逃げれば命は助かる、やりすごすこともできなくはないものへの感情を表しているように思えたのだが、どうだろうか(恐妻家というのは、妻のことをそういう存在だと感じているのだろうか。だとすると、その認識はヤバいのではないだろうか)。湯山さんは恐竜ではない。敏感でシビアで、重要なことを見逃さない人だ。「怖」という字が示すのは、恐よりこわいことで、当人自身の問題というか、今は逃げ切れたとしても、結局は逃げることができないものへのおそれだと、なんとなく思えた。

 僕は、女性と対話をしていて怒られることがよくある。僕の発言が、「じつは自分にとって都合のいいこと」だったとき、それを見逃さない女性から突きつけられて、僕はそのたびに謝る。それがだんだん芸風になってきているような気もするが、今回は「都合がいい」どころか、湯山さんからは「二村は自分でキモい状況を作りだしているのではないか」と指摘されていた。それを本にするのがさすがにいろいろ怖かった。いちいち謝っている場合じゃなく、かろうじて謝れたのは「かつてはクンニをしなかった」という過去くらいだ。

 だが突きつけられて、怖がりながら考えているうちに、そこからは、僕一人のことにとどまらない日本の多くの男女の根深い問題が浮かび上がってきて、こういう予定調和的でない本になった。時間をかけただけのことはあったように思う。

 できあがった最終ゲラを読んでもうひとつ思ったのは、「湯山さんは過剰な人ではあるけれど、変態ではない」ということだ。

 過剰でも変態でもどっちでもない人にとって、これからはきつい世の中になっていくだろう。インターネットや女性誌でかまびすしい恋愛論、中高年男性誌でのセックス特集、変態性のないまるでファストフードのようなアダルトビデオの粗製濫造、少子化を止めたいんだか進めたいんだかよくわからないとんちんかんな政治家、ツイッター上でフェミニストと男性オタクが叩きあっている構図もそうだが、ますます断絶が深まって、過剰でもなく変態でもない「普通の人」同士で傷つけあって疲弊して、みんな困惑している印象を受ける。

 過剰になれない人でも、こっそりと変態になることはできる。承認欲求が強すぎると不健康な変態になってしまう危険があることは本書でも述べたが、地道に楽しく健康な変態を目指せばいいのであって、とくに女性でそういう人が増えればさまざまな困惑が解決するんじゃないかと、僕は真面目に考えている。村田沙耶香さんの『消滅世界』(河出書房新社)という小説を読んだら、めちゃめちゃ面白かった。まさにセックスが消滅していく世界を描いておりグロテスクではあるのだが、こういう過剰な文学に親しむことで、思いやりのある優しい変態の視点を得られるように思う。

 だが、湯山さんがおっしゃるように、僕は「性に人間性の回復を期待しすぎ」であり、そもそも、ほとんどの人間は変態ではないし、変態になることを望んでいないのかもしれない。湯山さんのようなリアリストにそう言われると、そんな気もしてくる。

 30年後くらいの普通の日本人は、どういうふうに恋をしたり愛しあったりしているのだろうか。心配というより(心配しても仕方がない)、超興味がある。

 湯山さん、構成を担当してくださった安楽さん、幻冬舎の竹村さん、本書をご購入くださったみなさん、どうもありがとうございました。 

***

『日本人はもうセックスしなくなるのかもしれない』目次

序章 なぜ、私たちは恋愛も結婚もセックスも楽しめなくなったのだろう
◆日本に蔓延するセックスへの絶望
◆自分の中の暴力性を嫌悪する男たち
◆「首を絞めて」と言う女性が増えている
◆脳化するとセックスができなくなる
◆快楽で自分を異界へ連れていく

第一章 自分の中の快感回路を探しに
◆AV男優とAV女優では「セックス」にならない
◆なぜ女優にペニスを生やすのか
◆気持ちいいことに誠意を尽くす、二村式AVの秘訣
◆セックスの才能がある男・ない男
◆必ず来る「勃たなくなる時代」への準備

第二章 ひからびた感情を取り戻せ!
◆メンヘラ女子のセックスはエロい?
◆女への憎しみ、恐怖から、女を支配しようとする男
◆セックスに不自由しない男はなぜ嫌われるのか
◆母と息子の癒着が根源的問題
◆親が自分の人生をまっとうすると子どもはグレない
◆50歳をすぎたら男はつまらなくなる
◆感情を出すことを恐れるな

第三章 侮辱でもない、自虐でもない、大人の性愛のたしなみ
◆前戯はレストランから始まっている
◆エロ話で日本の男女の縛りを外す
◆オヤジの性文化にも学ぶところがあった
◆男は射精以外のオーガズムを知ったほうがいい
◆日本人のセックスは遊び的
◆なぜ男は現役をアピールするのか
◆50歳をすぎて突如、愛妻家になる男の心理

第四章 エロティックでロマンティックな人生のために
◆いつまでも褒めてほしがる男たち
◆男と男の面倒くさい関係
◆Mを自称する女のつまらなさ
◆病む不倫をしないで済む方法
◆侮辱してくるパートナーとは距離を取る
◆オーガズムは自分で得るもの
◆老いていく身体と向き合う
◆母親ベタベタとセックスの間のスキンシップを!
◆自立した女性が男を欲情させる方法
◆きれいな男女しかセックスしてはいけないという幻想
◆セックスは贅沢品になりつつある
◆されどもセックスを過大評価しない

◆あとがき 二村ヒトシ
◆あとがき 湯山玲子

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二村ヒトシ アダルトビデオ監督

アダルトビデオ監督。1964年六本木生まれ。慶應義塾幼稚舎卒、慶應義塾大学文学部中退。監督作品として『美しい痴女の接吻とセックス』『ふたなりレズビアン』『女装美少年』など、ジェンダーを超える演出を数多く創案。現在は、複数のAVレーベルを主宰するほか、ソフト・オン・デマンド若手監督のエロ教育顧問も務める。 著書に『すべてはモテるためである』、『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(ともにイースト・プレス)、『淑女のはらわた 二村ヒトシ恋愛対談集』(洋泉社)『オトコのカラダはキモチいい』(共著/KADOKAWA)などがある。
公式サイト:http://nimurahitoshi.net/
twitter:@nimurahitoshi / @love_sex_bot

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