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結婚はつらいよ!刊行記念対談

2015.12.16 公開 ポスト

『結婚はつらいよ!』刊行記念対談

第2回 裸族の夫に、村八分にしようとする舅。嫁は大変です……。今村三菜(エッセイスト)/辛酸なめ子

妻は見た! 嫁ぎ先に残る驚きの風習

今村 私はもう、今の夫とも、結婚に失敗したと思っていましたので、「ああ、もう人生の第四コーナーを回って、最後の直線だな」と思っていたんですよ。ですからもう、惰性でこのまま最後まで行こうと思っていました。

辛酸 ご主人の地元のお葬式の風習とか、すごかったですよね。

今村 はい。もう、柳田國男の世界でした。

辛酸 表面的には田舎暮らしに憧れたりしますけど、ああいう風習とかを見ちゃうと、ちょっと引いちゃいますよね。

今村 はい。夜になると順番で「火の用心、カチンカチン」ってやるんですよ。当番もあるので。ほかにも、位牌がセンターにくるから、お寺に100万円寄付してって言われたりもしました。AKBみたいでしたよね。「位牌選手権」みたいな。

辛酸 センターに置いてもらえるか。

今村 真ん中に来るらしいんですよ、位牌が。

辛酸 あとは、念仏の練習に来ない人が責められるとか。

今村 そうそう、「村八分にされたら堪らん」とか。村八分っていうのは、八分にされると……

辛酸 稲作の手伝いをしてもらえなくなるってことですね。

今村 そうなんです。手伝いもしてくれないし、道具も貸してくれないとか、本当に村八分になるらしいんです。でも、私、お義父さんが体制派だっていうのを、話していてわかったんです。「あの人は念仏を読みに来んかった」って。念仏の練習に来なかったから(付き合いをやめる)と。

辛酸 たぶん、そのわだかまりとかを一生引きずる。

今村 そうそう、一生のわだかまりです。ものすごい、悪魔みたいな扱いだったから。「あの奥さんは念仏の練習に先週、来んかった。2週連続、休んだ」と。

辛酸 へえー、夫のほうは、その辺ドライというか、あんまり気にしないから、そういうしがらみがないのかもしれないですね。

今村 そうですね。静岡も同じようなもので、うちなんか、隣りの息子さんが亡くなったっていう報せを聞いて初めて、隣りに息子さんがいたって知ったんです。そんな状態だったので、夫の地元の風習にはびっくりしましたね。

 婚家の風習と言えば、妹のお嫁入り先にも驚きました。妹は、今は名古屋に住んでいるんですけど、ご主人が中津川の人なんです。その結婚のときの結納の品──うちの八畳の畳に、赤い毛氈(もうせん)みたいなものを敷いて、そこに宝船が出来て。その宝船を全部崩すと、長襦袢(ながじゅばん)になったり帯になったり、すごい細工が施してあるんです。昆布はのたうち回るし、いろんな物を置いて、部屋の2/3ぐらい埋まっちゃう。「そういう珍しいものを見せて欲しい」って、近所の人が見学に来たりしました。「すごいねえ、中津川って」って言って。嫁ぐときも、うちの母が先方のお義母さんに「お道具はトラック何台になりますか」って言われて、「ええ!」って。多ければ多いほどいいらしくて、「うちは大したものを持たせられませんが」って。嫁ぎ先では近所の人が、お道具の引き出しとかを開けて、何を持ってきたか見るんだそうです。

辛酸 ええっ! そういうチェックされるんですか?

今村 うちの母が、「本当に大したものを持たせられないので、それだけは勘弁してください」って言ってやめてもらったんですけど。妹が、母のお下がりの車を持って行くって言ったら、「それもトラックに乗せてくれ」って言われて。妹が「車、車輪が付いているのにバカじゃない」って。それで、父が運転して持って行ったんですけど。車をトラックに乗せるって、おかしいですよねえ。そのことがあってうちの母が、初めてその文化の違いに気がついて、静岡の引っ越し屋さんに聞いたら、「うちではそういうものはないですけど、(名古屋圏では)シースルーのトラックがあるんだそうです」と。

辛酸 中のお道具を見せるための。

今村 そう。その中にお道具を入れる順番も決まっていて、まずは扉を開いたところにドレッサーが来る。そのドレッサーもリボンとかお花、造花とかで飾っていくんだそうです。「お道具が着く日はいつですか」って言われて、「そんなにそれが重要なんだ」と。うちの母はただの引っ越しとしか考えていなかったので。でも、そのお道具を持っていったら、家の前に赤い毛氈を敷いて、そこに全部お道具を並べて記念写真を撮るとかって言われて。そういうことは、全部やらないでもらったんですけど、エキストラの着物とかはいっぱい入れました。私のとか、お祖母ちゃんのとか、「あとで返してくれる?」「あとで返す」って、持って行くときだけ入れて。

辛酸 それを人に見られる──チェックされるんですね。

今村 というか、先方のお義母さんを喜ばせるために、ですね。その引っ越し屋さんが言うには──違う、お義母さんが言ったのかな。近くまで来たら、公園で一旦、止まってもらって、そこからは「寿」ってのぼりをトラックにいっぱい挿して、それで「金襴緞子(きんらんどんす)の帯しめながら……」って、あの音楽をガーガー流しながら家まで来て欲しいって言われて。

辛酸 今も行われているんですよね、それ。

今村 わかんないです、それは妹が──そうですね、姪が20歳なので、21~22年前の話ですけど、そのとき、母は本当に、結納から結婚式の間までで、げっそり痩せちゃって。心労で。

辛酸 天皇家とかでも、なかなかやらなそうですよね。


※第3回へ続く。12月20日(日)更新予定です。

関連書籍

今村三菜『結婚はつらいよ!』

ひと組の布団で腕枕をして眠る元舅・姑、こじらせ女子だった友人が成し遂げた“やっちゃった婚”、連れ合いをなくし短歌を詠みまくる祖母、夫婦ゲンカの果て過呼吸を起こす母、イボ痔の写真を撮ってと懇願する夫……。「ウンコをする男の人とは絶対に結婚できない」と悩み、「真っ白でバラの香りがする人とならできるかも」と真剣に考えていた思春期から20年余り、夫のお尻に素手で坐薬を入れられるまでに成長した“元・お嬢さん”の、結婚生活悲喜こもごも。

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結婚はつらいよ!刊行記念対談

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今村三菜 エッセイスト

1966年静岡市生まれ。エッセイスト。仏文学者・詩人でもある祖父・平野威馬雄を筆頭に、平野レミ、和田誠など芸術方面にたずさわる親戚多数。著書に『お嬢さんはつらいよ!』『結婚はつらいよ!』(ともに幻冬舎)がある。

辛酸なめ子

近著に「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「無心セラピー」(双葉社)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)、「女子校礼讃」「辛酸なめ子の独断! 流行大全」(中公新書ラクレ)など。

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