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ブルーカラービリオネア

2026.10.14 公開 ポスト

熊本にTSMC、北海道にラピダス――日本で「工場」が続々と復活している理由坂口孝則

電気工事や配管といった現場仕事で富を築いた人々を指す、「ブルーカラービリオネア」。その誕生の背景に迫った、坂口孝則さんによる『ブルーカラービリオネア エリートより稼ぐ「奴ら」の正体』が9月28日に発売されました。富をめぐって世界ではどのような地殻変動が進んでいるのでしょうか? 本書の「第一章 地政学が強制する『3K仕事』の国内回帰」から一部をご紹介します。

日本への生産回帰実例──TSMCの衝撃と半導体立国の再来

日本への生産回帰の象徴といえるのはTSMCだろう。台湾を本社にするTSMCは微細化ロジック半導体の受注生産企業ファウンドリーとして有名だ。ファウンドリーとは自社では設計せず、他社が設計した半導体を受託製造する企業だ。日本には約86%を出資する製造会社のJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)として進出している。その他はソニーセミコンダクタソリューションズや、トヨタ、デンソー等が出資している。

第一工場は熊本県菊陽町に2022年4月に着工。2024年には車載用のCMOSセンサー用半導体の生産を開始している。投資額は約1兆2700億円にいたっている。さらに第二工場は近接地に約2兆1000億円だ。第一、第二工場の合計で日本は約1兆2000億円を補助している。これによる九州への経済波及効果は20兆円と試算する向きもある。とくに2026年2月に3ナノの生産を発表した第二工場は注目するべきだろう。この3ナノプロセスのロジック半導体は世界先端だ。2028年を予定しているようだが、次世代のロジック半導体を日本国内で生産できれば、先端の付帯技術も呼び込むだろう。

北海道千歳市ではラピダスが2027年に2ナノの生産を予定している。このラピダスはTSMCとおなじくトヨタやデンソー、ソニーらが出資している。ここへの政府支援総額は2兆9000億円に達する。

日本はいつのまにかふたたび半導体立国になりつつある。これはすべての産業に必要になる半導体を自国生産できなければ経済安全保障上の問題だとする日本政府の意図を受けたものだ。

米国の説明時にあげたマイクロンも広島県で先端メモリーの製造工場に着工している。また、スマートフォン関連ではソニーセミコンダクタソリューションズが、やはり熊本県合志市にイメージセンサーの新工場を建てているし、キオクシアは岩手県北上市の北上工場で最先端のメモリーを量産開始した。

その他、経済産業省は経済安全保障を理由に、電気自動車向け電池についても国内での生産能力を高めている。トヨタはPPES姫路工場等に約4000億円を投資した。またパナソニックエナジーもSUBARUと群馬県に4630億円の工場を新設する。

なお、これまでは工場誘致というと、補助金で訴求して法人税等の税収をねらうこと、そして経済を活性化することが目的だった。もちろん日本は補助金を撤廃してはいないものの、ここ最近は、サプライチェーンの重要ポイントを経済安全保障の観点から囲い込むねらいになっている。

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続きは、『ブルーカラービリオネア エリートより稼ぐ「奴ら」の正体』をご覧ください。

関連書籍

坂口孝則『ブルーカラービリオネア エリートより稼ぐ「奴ら」の正体』

大工、電気工事士、配管工……。 新しい億万長者が続々誕生! 戦争×AI×人材不足で富のルールが変わった アメリカで始まり、日本にも迫る! 「ブルーカラービリオネア」とは、アメリカで生まれた、電気工事や配管といった現場仕事で富を築いた人々を指す言葉だ。地政学リスクを回避するための製造業の国内回帰とAIの発展による肉体労働の再評価が熟練工の争奪戦へつながり、その収益性に目をつけた投資マネーがブルーカラーの資産を倍増させる。政治、技術、資本が交差するなかで生まれた新しい富裕層は、日本にも現れるのか。そこにホワイトカラーが生き残る道はあるのか。世界と日本の労働市場の激変を見据え、その構造を徹底的に読み解く。 ・テスラは「汚れ仕事」を国内に引き戻し、熟練工の価値を引き上げた ・ブルーカラーは国益を生む人材、政治の権力者たちが奪い合う最強の主役 ・AIがホワイトカラーを無価値化する一方、データセンター建設、冷却装置の保守でブルーカラー需要をますます高める ・巨大マネーが町工場や設備会社を買収し、労働者をビリオネアへ押し上げる ・日本の排外主義と制度の壁が世界の人材争奪戦から後れをとる原因に ・日本の職人からビリオネアは生まれるか? 実現のための提案

坂口孝則『買い負ける日本』

かつては水産物の争奪戦で中国に敗れ問題になった「買い負け」。しかしいまや、半導体、LNG(液化天然ガス)、牛肉、人材といったあらゆる分野で日本の買い負けが顕著になっている。日本企業は、買価が安く、購買量が少なく、スピードも遅いのに、過剰に高品質を要求するのが原因。過去の成功体験を引きずるうちに、日本企業は客にするメリットのない存在になったのだ。調達のスペシャリストが目撃した絶望的なモノ不足と現場の悲鳴。生々しい事例とともに、機能不全に陥った日本企業の惨状を暴く。

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ブルーカラービリオネア

2026年9月28日発売『ブルーカラービリオネア エリートより稼ぐ「奴ら」の正体』について

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坂口孝則

1978年生まれ。調達・購買コンサルタント、未来調達研究所株式会社所属、講演家。大阪大学経済学部卒業後、電機メーカー、自動車メーカーに勤務。原価企画、調達・購買に従業。現在は、製造業を中心としたコンサルティングを行う。著書に『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『1円家電のカラクリ 0円iPhoneの正体』『仕事の速い人は150字で資料を作り3分でプレゼンする。』『稼ぐ人は思い込みを捨てる。』(小社刊)、『製造業の現場バイヤーが教える調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買の教科書』(日刊工業新聞社)など多数の著書がある。

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