診察で担当の先生に何を伝えるか。そして、処方された薬とどう付き合っていくか。
長く続くうつ状態のなか、薬の増量をきっかけに「人並みに面倒くさい毎日」を取り戻したGASHIMAさん。
自身の経験から、精神疾患の薬との付き合い方について綴ります。

精神科で処方されている薬の量が増えた。
精神科の薬というとあまり良いイメージを
持たない人も多いと思う。
でも、俺はこの薬を作ってくれた人に
土下座したいぐらいに救われた。
春頃のコラムで最悪のうつ状態からは
少し抜け出せた、とは書いたものの、
それ以降の体調はずっと横ばいなままで
何をするにも憂鬱な日々だった。
とにかく毎日、体調不良が続いた。
朝は辛くてベッドから起き上がれないし、
そこに低気圧がぶつかると仕事もままならない。
めちゃくちゃに体調が悪いから、
何を考えても悲観的になってしまう。
怖かったのは悲観的な思考が
何ヶ月も続くから、
うつのせいでネガティブなのか
本当にそれが自分の本音なのか
わからなくなっていったことだ。
ぶっちゃけると、
今年に入って「死にたい」と
思わない日なんて1日もなかった。
さっさとその状況を担当医に
伝えれば良かったのだが、
精神科の先生はあくまで医者であって、
カウンセラーではない。
弱音っぽいこと言っても
仕方ないだろうと勝手に決めつけて、
「睡眠時間が伸びたまま戻らない」
「低気圧の時に体調が悪化する」
とか身体的な症状ばかり伝えて、
あまり自分の精神状態の辛さを
検診では伝えて来なかった。
でも、さすがに1年近くうつ状態から
抜けられていないので、
「何を考えても、悲観的なんですよね…」
とボソッと一言、弱音を吐いてみた。
それを受けて、提案されたのが
ラツーダという薬の増量。
この薬はうつの落ち込みを
持ち上げる効果があると言われている。
これを毎日、1錠飲んでいたところから、
1錠半の服用に増量された。
飲んで急に効果が現れる薬ではないので、
変化を感じるには1週間ほど時間がかかったが、
効果が出てからは世界が変わった。
ちゃんと7時間半ぐらいで目が覚める。
「朝」と呼べる時間にベッドから出られる。
全然、手がつかなかった仕事も
人並みに進めることが出来る。
増薬したことを知らない友達に
くだらない冗談を言って
「ちょっと調子良くなってない?
お前、こないだまで
そんな冗談も言わなかったよ。」
と言われた時に、
自分が戻ってきている
気がして少し安心を覚えた。
でも、精神科の薬はただの薬。
別に違法薬物ではないから、
ハチャメチャに元気なわけでもない。
手間のかかる作業は
普通にめんどくさいし、
朝から仕事が続いた日の夜は
普通に疲れている。
相変わらず雨の降る日は
身体がダルいし、片頭痛にやられる。
でも、やっと人並みに
面倒くさい毎日が
今はとても幸せだ。
これは俺が薬を飲むことを拒んだり、
担当医を信頼せずにコロコロ変えていたら、
きっと得られなかった平凡だと思う。
精神疾患は目に見えないから、
医師や薬を疑いたくなる気持ちも分かる。
でも、双極症は心の病気というよりも
脳のバグという側面がデカい気がする。
糖尿病を気合いと療養だけで
治さないのと同じように、
身体の病気だからこそ、
ある程度、薬には頼らないと
コントロールが難しい病気だと
個人的には感じている。
俺も双極症と診断される前は
「精神科なんて人のこと
ヤク漬けにしてるだけだろ。」
とか言っていたから、
薬に対して不信感を覚える人の
気持ちもメチャクチャ分かる。
ただ、もしこのコラムを読んでいる
あなた、もしくは、あなたの
友人や家族が精神疾患で
苦しんでいるなら、
一度、医療にチャンスを
与えてみることをおすすめしたい。
恋人、家族、仕事、酒、金、友達。
健康な人だって、人間はみんな
何かにすがりつきながら生きている。
そのすがりつく先が
精神科の薬だったとしても
恥じることなんて何もないはずだ。
先生、俺またバグってます。の記事をもっと読む
先生、俺またバグってます。

3人組シンガーソングライター・グループ WHITE JAMのラッパーとして活躍するGASHIMA。
そんな彼はある日、「双極性障害」であると診断される。
思い返してみれば、昔から自分はちょっとバグってた。
日本とアメリカで経験した過去、生い立ちと音楽、メンタルヘルスの狭間で感じた「生きづらさ」をパーソナルかつリアルに綴るセルフドキュメンタリー連載。
目まぐるしく変わる環境に対するやり場のない怒り。
振り返ってみれば「若気の至り」だと思っていた破壊的衝動。
あれも、これも、もしかしたら躁状態だったのかも?
“ただの勢い”の裏にはちゃんと病理があった。
そう思えると、あの時の俺も少しだけ愛せるようになった。










