現在、来年に本番を迎える舞台作品の脚本を書いている。
来年6月に本番を迎える作品なので、まだまだ先の話だと思っていた。
大まかな物語の筋道や登場人物の紹介を示したプロットはすでに提出しているし、出演キャストもほぼ決まっているので、年が明けてから書き始めれば大丈夫だろうと悠長に考えていた。
が、先日プロデューサーと打ち合わせをした際に「年内中には、どういったことをしたいかを見せてくれ」と言われた。
どういったことをしたいのか…。伝えるのがとんでもなく難しいことを言われてしまった。
その公演は、私が脚本と演出をするオリジナル作品である。
大掛かりな演出をするなら使用したい装置の話をできるが、私はド派手な演出をするタイプの演出家ではない。
さらに、壮大な世界観を書く脚本家でもないので、抽象的な世界観を共有して新たに理解と了承を得る工程も必要ない。すでにプロットで現代的な日常の世界観であることは共有して了承を得ている。
つまり、プロデューサーがいう「どういったことがしたいのか」というのは、プロットに書ききれていない部分をもっとしっかり理解させてくれということである。
難しい。プロットをより深くする作業は脚本業をしていて一番苦手な作業だ。
私はプロットで説明をするのがとても下手である。
これまで何度も映像作品の企画でプロットを提出したが9割9分通らない。
舞台を観劇してくれた関係者の方が一緒に何かやろうと声を掛けてくれても、プロットを出した後に話が無くなることが多々ある。
映像作品は舞台作品よりもプロットでしっかり納得してもらわなければ、脚本の執筆に進めないことが多い。なので、とりあえず1話書いて納得させるという手法を使えない。
あ。1話書いて話が無くなったこともあったわ。とりあえず1話書いて納得させるなんて、カッコつけてごめんなさい。
とにかく、作品の奥深くまで伝わるプロットを書く力を身につけることがここ最近の私の課題である。
話を、来年6月に上演する舞台作品に戻す。
「どういったことがしたいのか示せ」というオーダーはつまり、会話から見えてくる空気感や作品の笑いどころや泣きどころ、観客にどの部分をどう楽しませるのかということ。
そんなものは、今の私の能力ではプロットで示せない。
だから私は丸々1本書き切ることにした。まだ、作品の奥深くまで伝わるプロットを書く力を身につけていない私にはこの方法しかない。
だから私は夏が終わる今、夏が始まる頃のことを考えている。
全くダメで、すべて書き直しかもしれない。
仕方がない。自分の力不足のせいだ。
1本書き切ったものが面白かったら「早いね」と喜ばれるだろうし、面白くなかったらボツという簡単な話だ。そういう分かりやすいこの世界が私は好きだ。
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私は演劇に沼っている

脚本家、演出家として活動中の私オム(わたしおむ)。昨年末に行われた「演劇ドラフトグランプリ2023」では、脚本・演出を担当した「こいの壕」が優勝し、いま注目を集めている演劇人の一人である。
21歳で大阪から上京し、ふとしたきっかけで足を踏み入れた演劇の世界にどっぷりハマってしまった私オムが、執筆と舞台稽古漬けの日々を綴る新連載スタート!
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