先日、妻の姉に子供が産まれたので会いに行ってきた。
到着するのが遅くなってしまったせいで会える時間が非常に短かったが、抱っこをさせてもらい赤ちゃんからしか得られない養分をいただいた。
名前もまだ命名されていない小さな生命体は終始眠っていて、何の意思疎通もできなかったがとても可愛かった。
妻と交互に抱っこをして、写真を撮り、あっという間に面会終了時間になりバタバタと帰ろうとした時にふと大切なことを伝えていないことに気がついた。
「出産お疲れ様でした」という義姉に対しての労いの言葉を伝えていなかったのだ。
もちろん義姉を無視して赤子にだけ夢中になっていたというわけではない。義姉ともいろいろと話をした。しかし、肝心なことをちゃんと言葉にして伝えることを忘れてしまっていたのだ。
帰り際、エレベーターまで見送りに来てくれる義姉にエレベーターに乗り込んでから「あ、そういえば。出産お疲れ様でした」と扉が閉まるギリギリで伝えた。
「あ、そういえば」なんて言葉を使って言うことじゃない。
何と失礼な義弟なのかと、自分に憤った。
私はよく大切なことを伝えるのを忘れてしまう。
先日に終演した舞台の主演俳優にも伝え忘れていることが多々ある。
お芝居に対しての要望や修正は全て伝えてきたが、彼に対する想いや共に見たい未来の展望や日々の感謝を明確にはっきりと伝えていない。
稽古または本番を終えて一緒に酒を飲み、家に帰ってから思う。ああ、今日も伝えられなかったなと。
そして翌日に全く同じ後悔を繰り返す。
真摯で素敵だと思ったが没頭しているので伝えられない)
たまに稽古中や酒を飲んでいるとき、本番の芝居を観ているときにふと伝えなければと思い出すことがある。
しかしそのタイミングは自分の想いよりも重要なお芝居に関しての話をしなければならなかったり、目の前に当人がおらず伝えられなかったりするので、結果言わずに帰宅する。
翌日も顔を合わせるのに、わざわざメッセージを送って伝えるのもむず痒い。
はて。ではむず痒くならずに直接伝えられるだろうか。いつもの面持ちでいられるのだろうか。
うん、それは無理だ。
少し近寄ってみたが、全くこちらに気づかないので伝えられない)
今この原稿を書いていて思った。
想像してみて、私は彼に想いを伝えることはできない。
兄のように慕っている彼に、これからも共に挑戦をし続けていこうという気持ちや、わがままな私を受け入れフォローしてくれることの感謝を伝えられない。
伝えることを忘れているのではなく、意図的に伝えない。でも、義姉に対して言ったように、ふと口にするかもしれない。
何と失礼な弟か。けしからん。
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私は演劇に沼っている

脚本家、演出家として活動中の私オム(わたしおむ)。昨年末に行われた「演劇ドラフトグランプリ2023」では、脚本・演出を担当した「こいの壕」が優勝し、いま注目を集めている演劇人の一人である。
21歳で大阪から上京し、ふとしたきっかけで足を踏み入れた演劇の世界にどっぷりハマってしまった私オムが、執筆と舞台稽古漬けの日々を綴る新連載スタート!
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