心は鍛えるものではなく、「整える」もの。
着実に成長するサッカー日本代表をコーチとして支える長谷部誠が編み出した不朽のメンタル論『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』。
累計160万部を突破したこの書籍から、一部を抜粋してお届けします。
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フライパンでお湯を沸かしていた、ドイツ移籍直後の話
浦和レッズ時代、僕はほとんど自炊をしたことがなかった。ひとり暮らしを始めてからも、寮の食堂に食べに行っていた。だから、ドイツに移籍した当初は食事で苦労した。
料理本を送ってもらって、見様見真似で野菜炒めを作ったり、カレーを作ったり。最初はキッチン用品がそろっていなくて、フライパンに水を張ってお湯を沸かしていた。今じゃ笑い話だけれど、電気ケトルを買ったときは、「こんな便利なものがあるのか!」と心底感動した。

ただ、あまりにマガト監督の練習がハードすぎて、家に帰ったら身体がまったく言うことを聞かず、とても自炊する余力が残っていないことが多かった。
そこで僕は練習帰りにひとりでレストランに通うことになる。
「寂しいなあ」と思うときもあったけれど、意外にこれはこれで楽しい。見知らぬ街でレストランを探し、辞書を引きながら注文していることが、自分を逞しくしてくれるような気がしたからだ。
猛烈にエビが食べたくなった夜から、僕のドイツ生活が変わった
ヴォルフスブルクは自動車メーカー、フォルクスワーゲンの工場がある、いわゆる「企業城下町」。人口約12万人のとても小さな街だ。僕の感覚では街で走っている車の9割はフォルクスワーゲン。僕もずっとフォルクスワーゲンの四輪駆動SUV、「トゥアレグ」に乗っている。これはチームが無料で提供してくれるのだ。それに選手には常に最新モデルに乗ってもらおうという配慮から、半年に1回の割合で新車に交換してくれる。サンルーフをつけたり、ホイールを替えたり、オプションをつけることができるので、「次はどんな仕様にしようかな」とカタログとにらめっこして、トゥアレグに関してはかなり詳しくなった。
車を走らせて、おいしそうな店はないかなぁとレストランを探す。
ドイツ料理はもちろん、ベトナム料理、ギリシア料理、ボスニア料理。日本食レストランも1軒だけある。今ではたくさんの行きつけの店ができた。なかでもイタリアンはおいしいお店が多い。かつてフォルクスワーゲンの工場では、イタリアからの出稼ぎ労働者がたくさん働いていた。今でもイタリア系の人たちがヴォルフスブルクに住んでおり、だからイタリアンが多いようなのだ。

一番よく行くのが『La Grotta』(ラ・グロッタ)という店だ。
ヴォルフスブルク市内では高級なイタリアンの部類に入り(と言ってもパスタは千円くらい)、食べに行くとたいていチームメイトの誰かに会う。お店の人ともすぐに顔見知りになって、「ボンジョルノ~、マコォト!」とイタリア語で迎えてくれる。僕が必ずサラダを頼むことも、ガスなしの水を頼むことも、コーヒーを飲まないことも覚えていてくれる。他にも行きつけのイタリアンが、2、3軒あって、その日の気分によってローテーションしている。
僕にはドイツでレストランに行ったときに、ひとつこだわっていることがある。それは裏メニューを作れないか聞いてみる、ということだ。
ある日、行きつけのイタリアンで食事をしているとき、猛烈にエビが食べたくなった。そこで「このクリームパスタにエビを加えることはできますか?」と聞いてみた。店員の女性は、「ちょっとシェフに確かめるわね」と言って厨房に行くと……。見事にOK。頼んでみたら何とかなるもんだなあと妙に嬉しかった。
それ以来、この店では僕は必ず、メニューにない「エビのクリームパスタ」を注文する。店の人も心得たもので、僕が顔を出すと「いつものやつでしょ?」と言ってくれる。ちなみに『La Grotta』では、若鶏のグリルにサイドメニューとしてペペロンチーノを盛り合わせてもらったものが定番だ。
未知なる街で楽しく、少しでも居心地よく生活できるようにアレンジする。これも僕の日常のなかの、ちょっとした工夫であり、心を整える方法のひとつなのかもしれない。
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この続きは幻冬舎文庫『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』でお楽しみください。
心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣

心は鍛えるものではなく、「整える」もの。
着実に成長するサッカー日本代表をコーチとして支える長谷部誠が編み出した不朽のメンタル論『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』。
累計160万部を突破したこの書籍から、一部を抜粋してお届けします。












