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クロスロード凡説

2026.05.27 公開 ポスト

ホテルのスクランブルエッグは餌辻皓平(ニッポンの社長)(お笑い芸人)

僕はホテルの朝食は基本的に食べない。

 

 

 

旅館や観光用のホテルの、ご当地グルメが並ぶビュッフェ等は喜んで食べるが、それ以外の、いわゆるどこでも食べられそうなパンやスクランブルエッグ等が並ぶホテルの朝食は100%食べない。

 

 

ビジネスホテルの朝食なんてもってのほかだ。無料であっても食べない。

 

 

 

何故か。

 

 

 

まず、普段朝食を食べない。

 

 

 

普段朝食を食べないのに、無料だからといって早起きして食べる、ということはできない。

 

 

 

食べる意味がないからだ。

 

 

 

朝食は食べなくても生きていける。

 

 

ここで勘違いしないでいただきたいのは、食に興味がないわけでは決してない、ということだ。

 

 

むしろ、食べることは好きだ。

 

 

かなり好きだ。

 

 

人生の中でも、食を上位の楽しみにしている。

 

 

食を愛するが故に、朝食を食べないと言っても過言ではない。

 

 

可愛い子には旅をさせよ、的なことを言ってしまったが(あまり言っていない)、

 

 

個人的に、朝食を食べていない方が、

 

 

昼食が美味しい。

 

 

お腹が空いて。

 

 

朝食を食べてない方が、

 

 

昼食が楽しみになる。

 

 

 

昼食でご当地の物を腹一杯に食べたい。

 

 

 

その為の容量を、朝食のスクランブルエッグで満たすことはしない。

 

 

 

いや、ここで大事なのは、

 

 

 

僕はけっしてスクランブルエッグが嫌いなわけではない。

 

 

 

例えばスクランブルエッグが有名な場所に旅行に行き、泊まれば、喜んで食べる。

 

 

 

せっかく北海道や沖縄に行って、スクランブルエッグは食べない。

 

 

 

それは昼食であろうが晩御飯であろうが、食べない。

 

 

 

それは、

 

 

 

 

餌だからだ。

 

 

 

 

お腹を満たす為だけの食。

 

 

 

 

旅行先のそのスクランブルエッグは、餌なのだ。

 

 

 

 

早起きして餌を食べることはない。

 

 

 

 

豚じゃないのだ。

 

 

 

 

そう、もう一つの理由として、朝食を食べるには早起きしないといけない、というのがある。

 

 

 

 

チェックアウトが10時だとして、朝食は7~9時ぐらいだろうか。

 

 

 

 

馬鹿げている。

 

 

 

 

スクランブルエッグを食べる為の早起き。

 

 

 

 

その後を存分に楽しむ為に、体力を温存した方が良いし、

 

 

なんならその分夜更かしをするべきなのだ。

 

 

なんなら深夜にたらふく酒を飲み、

 

 

お腹タプタプで何も入らない、

 

 

朝食なんてコーヒーだけで良い、

 

 

くらいの状態にするべきだ。

 

 

 

 

普段から朝食を食べないのと、家を出る時間ギリギリまで寝ているのも要因だろう。

 

 

 

 

わざわざ早起きしてまで餌を食うのは、どうしてもできない。

 

 

 

 

早起きして温泉に入るのは分かる。

 

 

 

 

普段できないことだから。

 

 

 

 

ただ、「早起きスクランブルエッグ」は、やろうと思えば毎日できる。

 

 

 

 

やらないだけ。

 

 

 

 

それを「美味しい」とかの感情もなく食べるのは、滑稽に思えてしまう。

 

 

 

 

ホテルでスクランブルエッグを食べている時の人間の思考は止まっている。

 

 

 

 

あの瞬間、人は何も考えていない。

 

 

 

 

あれは、食への冒涜なのではないか。

 

 

 

 

そして、旅行への冒涜なのかもしれない。

 

 

 

 

僕は旅行が好きだ。

 

 

 

 

一年に何回も行く。

 

 

 

 

旅行というのは、その場所への敬意が必要である。

 

 

 

 

なので僕は沖縄に行けばアロハを着るし、ベトナムに行ったら「グッドモーニング、ベトナム」のTシャツで過ごした。

 

 

 

 

その間は沖縄料理、ベトナム料理しか食べない。

 

 

 

 

スクランブルエッグなんてもってのほかだ。

 

 

 

 

北海道に行って、朝食に海鮮丼が出るなら食べる。

 

 

 

 

なんならジンギスカンでも朝からがっつく。

 

 

 

 

北海道でスクランブルエッグが出てきたら、金を払ってでも食べたくない。

 

 

 

 

そして、もう一つダメ押しの理由がある。

 

 

 

僕はビジネスホテルで2~3年ほどアルバイトをしていた。

 

 

 

朝食の準備や片付けも担当していたのだ。

 

 

 

だから知っている。

 

 

 

朝食のスクランブルエッグのクオリティを。

 

 

 

それにがっつく外国人観光客。

 

 

 

大阪なんだから、朝からやってるたこ焼き屋でも探して食べろよ。

 

 

 

と思いながら提供していた。

 

 

 

なんなら、あなた達の国の方がスクランブルエッグの本場だろ、という人も早起きして食べていた。

 

 

 

思考が止まっているから気付かない。

 

 

 

僕には、『千と千尋の神隠し』で両親が豚になりながら飯を食べているシーンに見えていた。

 

 

 

ホテルのスクランブルエッグは危険だ。

 

 

 

思考が止まって豚になる。

 

 

 

気をつけてほしい。

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クロスロード凡説

「ネタにはしてこなかった。でも、なぜか心に引っかかっていた。」
そんな出来事を、リアルとフィクションの間で、書き起こす。

始まりはリアル、着地はフィクションの新感覚エッセイ。
“日常のひっかかり”から、縦横無尽にフィクションがクロスしていく。

「コント」や「漫才」では収まらない深掘りと、妄想・言い訳・勝手な解釈が加わった「凡」説は、二転三転の末、伝説のストーリーへ……!?

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辻皓平(ニッポンの社長) お笑い芸人

1986年、京都府生まれ。

お笑いコンビ「ニッポンの社長」として、コントと漫才の“二刀流”で独自の笑いを追求。
漫才&コント二刀流No.1決定戦「ダブルインパクト」初代王者。
コント日本一を決める「キングオブコント」では、2020年から5年連続で決勝進出を果たす。

本コラムでは、日常の出来事に自由な解釈や言い訳、妄想を重ねながら、舞台とはまた違った角度で物語を綴る。
コントと漫才、どちらのネタも手がける著者が、言葉を操る“三刀流”として、文章の世界に挑む。

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