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クロスロード凡説

2026.05.13 公開 ポスト

雑魚に雑魚扱いされた夜辻皓平(ニッポンの社長)(お笑い芸人)

長崎のBARに行った。

 

 

 

長崎で仕事があり、お互い前乗りだった後輩に飯に誘われた時の話だ。

 

 

 

後輩から前もって連絡があったので、ここだけは行きたいというラーメン屋の場所を調べた。

 

 

 

そこは5年前くらいに仕事で行ったことがあり、凄くそこのちゃんぽんが美味しかったのを覚えていたからだ。

 

 

 

すると宿泊するホテルの飲み屋街の近くにあり、久しぶりに来訪できそうだった。

 

 

 

後輩も3〜4軒調べてくれており、それらの店と場所も近かったので何軒目かでそのラーメン屋に行こうという話になった。

 

 

 

 

 

1軒目、美味しいお寿司屋さんに行き、楽しく話していたので機嫌が良かった。

 

 

 

 

 

そして、僕の行きたいラーメン屋は人気店なので、次入るか入らないかは別として前を通ってみよう。どうせ近いから。
ということになり、そのラーメン屋に向かった。

 

 

 

 

 

するとさすが人気店、23時を超えていたが並んでおり、じゃあ3軒目にするか。と別の店に行こうとしたところ、そのラーメン屋の上にある店の看板が目に入った。店名の横に「ミュージックBAR」と書いてあった。

 

 

僕は音楽が好きでこういう音楽をコンセプトにしている店も好きなので、ここで1〜2杯飲めばラーメン屋の行列もなくなるのではないかと思い、そのミュージックBARへの階段を上がった。

 

ドアを開けるとお洒落でやはり音楽が好きそうな髭面の50代くらいのおそらくマスター、10人くらい座れそうなカウンターの真ん中くらいに40代男性と20代女性のカップル、奥に1人でしっぽりやっているマダム、といった顔ぶれだった。

 

 

 

僕らは真ん中にいるカップルから2つくらい離れた、長居する気もないので入り口に近い席に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

良い店なことはすぐに分かった。

 

 

 

 

 

泉谷しげるさんの歌声が聴こえていたし、カウンターの中央辺りにあるテレビから映像が流れていて、そこに忌野清志郎さんが映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

僕はこの映像を見たことがあった。

 

 

 

 

 

 

 

音楽が好きな目上の方に見せてもらったことがあったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

泉谷しげるさんが春夏秋冬を歌う後ろで、なんと忌野清志郎さんがギターを弾きながらハモり、他にも桑田佳祐さん、小田和正さんもいたと思う。

 

 

 

錚々(そうそう)たるメンツがまさにドリームバンドを組んでいる。かなり貴重な映像だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

僕はその中でも特に清志郎さんが好きなので、

 

 

 

 

 

 

 

『うわ、これ清志郎がおるやつや』

 

 

 

 

 

 

 

とテンションが上がって言ったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると僕の3つ隣のカップルのうちの男の方が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いや泉谷しげるだよこれ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とボソッと僕に聴こえるか聴こえないかで言ったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お分かりいただけただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心霊写真を見る番組みたいな台詞を言ってしまったが、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さんの生活の中でも、こういうことはすくなからずあるはずである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕はこのコラムも然り、表現したり作品や何かを発表する仕事をしているので、こういうことが、多々ある。

 

いや、

 

 

 

多々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々々、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は泉谷しげるさんだということは分かっているし、その後ろで清志郎さんがギターを弾いていること、それ以外も分かっている。

 

 

 

だから一番テンションの上がる要因となった、

 

 

 

 

 

 

 

『清志郎』

 

 

 

 

 

 

 

というワードを言った、というか、自然と口から出たのだ、

 

 

 

 

 

それを、

 

 

 

 

 

 

僕が「泉谷しげる」のことを「忌野清志郎」と間違えたと勘違いして、

 

泉谷しげるのことしか分かっていない40代の男が、女に良い格好をする為に、わざわざ他人の僕に向かって

 

『いや泉谷しげるだよこれ』

 

 

 

 

 

 

という稚拙な言葉を言い放ったのだ。

 

 

 

 

 

実際には僕に聞こえる聞こえないはたいした問題ではなかったんだと思う。

 

 

 

 

 

女に良い格好をしたかったのだ。

 

 

 

 

 

女性の方は20代くらいだったろうからもしかするとキャバクラのアフターみたいなことの可能性もあったかもしれない。

 

 

 

 

 

その為に僕は間違った情報を言う間抜けな奴、にされたのだ。

 

 

 

 

 

機嫌が良かったから少しだけイラッとするで終わったが、

 

 

 

 

 

機嫌が悪かったら結構大きな声で、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやーマスターこれ泉谷さんの後ろで清志郎さんがギター弾いてるやつっすよねー!ほんで桑田佳祐さんも小田和正さんもいて、めっちゃエグいっすねー!てかこの映像流してる時点でええ店ですわー!シャンパンありまっか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とシャンパンをおろしてしまう事態になりかねなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言葉を選ばずに言うと、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雑魚(ざこ)に雑魚(ざこ)扱いされたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆さんも気をつけてほしい。

 

 

 

 

 

と言ってもこの文章が伝わる人に言っても意味がないというジレンマがあるので、これはただの愚痴である。

 

 

 

 

 

その後に食ったちゃんぽんはすこぶる美味かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果、圧倒的に良い夜だった。

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クロスロード凡説

「ネタにはしてこなかった。でも、なぜか心に引っかかっていた。」
そんな出来事を、リアルとフィクションの間で、書き起こす。

始まりはリアル、着地はフィクションの新感覚エッセイ。
“日常のひっかかり”から、縦横無尽にフィクションがクロスしていく。

「コント」や「漫才」では収まらない深掘りと、妄想・言い訳・勝手な解釈が加わった「凡」説は、二転三転の末、伝説のストーリーへ……!?

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辻皓平(ニッポンの社長) お笑い芸人

1986年、京都府生まれ。

お笑いコンビ「ニッポンの社長」として、コントと漫才の“二刀流”で独自の笑いを追求。
漫才&コント二刀流No.1決定戦「ダブルインパクト」初代王者。
コント日本一を決める「キングオブコント」では、2020年から5年連続で決勝進出を果たす。

本コラムでは、日常の出来事に自由な解釈や言い訳、妄想を重ねながら、舞台とはまた違った角度で物語を綴る。
コントと漫才、どちらのネタも手がける著者が、言葉を操る“三刀流”として、文章の世界に挑む。

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